「ドラマを見ていなくても楽しめるハイテンションな傑作です。」ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマを見ていなくても楽しめるハイテンションな傑作です。
深夜で再放送されていた「ライアーゲーム」を見て、思わずはまってしまったあげく、本作にたどり着いてしまった次第。軽薄なトレンディドラマを量産してきたフジテレビにしては、見応えある心理描写と痛快なリズム感をもった作品でした。
そのテンションのまま、最終決戦となる「エデンの園ゲーム」なる戦いを描いたのが本作です。ドラマ版以上にシナリオが錬られていて、2時間で30回は騙し合うというストーリーに、スリリングな登場人物同志の駆け引きを堪能できました。
またラストでは、なんでこんな浮世離れしたゲームに何十億円もの大金が投入されるのかネタバレもあり、なるほどと納得できました。
まずドラマ版を見ていなくても、違和感なく楽しめることでしょう。導入部の手際がいいのです。饒舌にならずにポイントをついて前振りしているので、すぐにライアーゲームの世界に入り込むことができるでしょう。
このゲームは「カイジ」と違って、ルールはシンプルな分、いかに手段を選ばず大金を奪い合うかが勝敗を分けます。それはバックヤードで、どれだけゲーム参加者を嘘八百並べて自分のいいなりにするか、はたまたズルをして勝負する前に、勝ち目を仕込んでおくかがポイントとなります。またチームプレイがある分、余計に集団での駆け引きが盛り上がっているのだと思います。
そんな騙し合いゲームを描く本作なのに、テーマは一貫して人を信じることの大切さを掲げているのです。そんなところに本作の人間ドラマとして深さを感じさせます。
主人公神崎直のお人好しさは、ドラマ版から嘘くさく見えてきました。本作冒頭でも、お金を落として帰れなくなったという浮浪者風の男に、喜々として1000円を貸してしまうのです。そんな人を疑わない人っているものかと思いましたよ。(そのお金がどうなったか?ご安心ください、ちゃんとエンドロール後に明かされます。)
ところが、「エデンの園ゲーム」での彼女の活躍を見ていくなかで、すっかり説得させられてしまいました。ファイナルゲームは、その必勝法が「みんなが正直である事」だと考えていた神崎直の為にあるようなゲームだったのです。
これまでのライアーゲームは、いかなる手段でも、対戦相手からマネーを奪い合うというものでした。ところが全員が赤いりんごを選択し続ければ、全員が勝ちとなり主催者から賞金を貰えるというルールだったのです。まさに直が、望んでいた誰も負けないゲームとなるはずでした。ところがそこはライアーゲーム。タダでは、そんな必勝法を使わせません。
独りでも抜け駆けして、金や銀の禁断のりんごを選択した方が、莫大な賞金が得られて、その場合残された赤いりんごを選択して者は、重いペナルティが課せられることになっていたのです。
仮に全てのプレイヤーが結託すれば、誰も得しないかわりに誰も損しないという状況を達成できるが、実際には囚人のジレンマに陥りやすいものです。このジレンマにどのように対処するかが、本作の主題の一つであったのですが、本作ではそのテーマを強調したようなゲーム設定でした。
そして早速直は、第一戦からフクナガユウジのカモにされて、お決まりの「バーカ、バーカ」と罵られる事態に。それにしてもフクナガは主役より目立つくらいの人気キャラになりましたね。
ゲーム事務局もそう易々と赤いりんごを揃わせようとさせません。必殺の刺客Xを極秘に送り込んで、独り勝ちさせようと画策していました。
中盤のネタバレまで、誰がこのXであるのか推理してみるのも一興でしょう。ただ秋山と直がコンビを組んだら、Xも敵ではありませんでした。鮮やかに騙して、Xの正体を暴き、轟沈させます。このとき人を騙すことを知らなかった直が、なんと見事にXを騙してしまうところが、直の進化してところであり、本作最大の見所と言えそうです。本作で直は、ゲームが進むにつれ、泣く事が減っていき、秋山の力を借りず自発的になるほど精神的に強くなっていきました。
ぶりっ子だった直が変わっていく姿を、今回は特に戸田恵梨香が好演しています。もちろん不適に笑いながら決めぜりふを語る秋山深一を演じる松田翔太も健在。本作ではゲスト出演に当たる田辺誠一が普段見せないテンション高めの芝居を披露しているところも注目ですね。
ライアーゲームはいわば、一見きてれつな内容だけれど、よく見るとそれは自分たちの現実世界を映す鏡というほど、えげつなく欲望と裏切りの世界をえぐり出していきます。 だからこそ、神崎直の正直さとそれをストレートに演じきる戸田恵梨香の魅力が引き立つ作品なのです。