「何歳になってもあやふやな人生の物語」50歳の恋愛白書 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
何歳になってもあやふやな人生の物語
10数年ぶりに観返してみて、その間に自分も50歳になり、この映画が描いている人生の座りの悪さみたいなものが、よりしっかりした像として捉えられた気がした。レベッカ・ミラーの映画は基本的に、どのキャラクターにも倫理的なゆらぎがあって、この映画ではロビン・ライト演じる主人公と、キアヌ・リーヴス演じる35歳という設定のプータローのゆらぎが大きいのだけれど、どちらもあまり感情を爆発させたりはしない。そのふんわり感を、かつてはただふんわりとしか捉えられていなかったのだと思い知った。特に主人公は、ブレイク・ライヴリーが演じた若い頃の堕ちっぷりがわかりやすく描かれているだけに、初見のときは現代の姿をちゃんと理解できていなかった。と言っても、それが言葉にしづらいのがこの映画の長所であり、また、他人に伝えづらい弱点でもあるのだと思う。ハッキリいえるのは『50歳の恋愛白書』という邦題やラブコメという触れ込みは本作にとっては結構な邪魔であって、もっと人生そのものみたいな映画ですよコレは。そしてこれだけ人生のあやふやさを描きながら、ラストにちゃんと希望のようなものを提示してくれるレベッカ・ミラーは偉いなとも思いました。
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