「いいあんばいの手堅いコメディ」ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
いいあんばいの手堅いコメディ
自ブログより抜粋で。
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“2ちゃんねる”に立ったスレッドが原作ということくらいしか予備知識もないまま、それほど期待せずに観たんだが、これがなかなか侮れない“アタリ”だった。
シーンの大部分はオフィス内だし、登場人物も最小限。そのキャスティングにしても比較的地味で、いわゆる低予算なお気楽コメディ映画だとは思うんだけど、作りはけっこう真面目。
時間経過を示す、ありがちなオフィス街の夕方の実景に、超望遠で撮影した、ばかでっかい夕陽を持ってくるなど、きっちり絵づくりしてるなぁと感心させられる。
なによりマ男の背景を丁寧に描いた脚本に手抜かりがないことに好感が持てる。
笑いを誘いながらも社会や人生の一面を切り取っていく手際の良さ。
硬派な社会派映画ではないし、リアリティという意味ではマンガっぽい内容だとは思うが、デフォルメされた憎めない曲者上司たちの振る舞いの中にも、どこか「あるある」とニンマリさせられる。
コメディ主体の前半から一転、マ男がいよいよ限界に追い詰められて放つ感情の爆発も、奇をてらわない王道。
こういう映画なら当然こういう落としどころだよね、と安心して観ていられる大詰めの感動的な展開も、意外性は乏しいものの、ちょうどいいあんばいの湯加減で心地いい。
単調な会社内のセット撮影の連続になりがちな内容を、CGをふんだんに使った妄想シーンを挟み込んだり、開放感のある屋上に場面を移したり、と、絵変わりさせる工夫も手慣れたもの。
陰で会社を支える、切れ者の藤田さん(田辺誠一)のミステリアスな存在感が牽引役となり、観客の興味を最後まで飽きさせないのも巧いと思った。
ただ、2ちゃんねるを模した匿名掲示板「Bちゃんねる」は必要なかったなぁ。
一世を風靡した『電車男』(2005年、村上正典監督)と違って、“名無しさん”たちはまったく登場しないし、物語の展開にもまったく影響を与えていなかったもの。