ゴールデンスランバー(2010)のレビュー・感想・評価
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2010年を代表する作品
公開は2010年1月30日。年明け早々に封切られたわけだが、この後、「ゴールデンスランバー」を超える作品が出てこないんじゃないかと思うほどに、映画として完成した素晴らしい出来栄えだった。堺雅人、故竹内結子さん、吉岡秀隆……、脂の乗った俳優陣の芝居を満喫できる。中村組といえば、常連の濱田岳も忘れてはならない。それにしても、武内さんの元気な姿を見るたびに、まだまだ心がざわついてしまう。それだけ素敵な女優さんでした。
【90.1】ゴールデンスランバー 映画レビュー
映画『ゴールデンスランバー』批評
作品の完成度
伊坂幸太郎の原作小説が持つ軽快なテンポと、逃亡劇というサスペンス要素、そして人々の温かい繋がりというヒューマンドラマを絶妙なバランスで融合させた完成度の高い作品。中村義洋監督は、原作の骨子を忠実に守りながらも、映像作品ならではのダイナミックな演出と、ユーモアを随所に散りばめることで、観客を飽きさせない巧みな語り口を披露。特に、主人公が次々と絶体絶命の危機に陥りながらも、旧友やかつて関わった人々からの思いがけない助けによって、その窮地を脱していく展開は、観客に深い感動と希望をもたらす。この映画の完成度は、単なるサスペンスに留まらず、人と人との繋がりや、記憶の美しさを描くことに成功した点にあると言えるだろう。原作の持つ多層的なテーマを、2時間強の尺に凝縮し、エンターテイメントとして昇華させた手腕は見事の一言に尽きる。
監督・演出・編集
中村義洋監督による、緻密な構成と演出が光る。物語は、主人公・青柳雅春の逃亡劇を軸に、過去の回想と現在の出来事が巧みに行き来することで、彼の人間像や周囲との関係性を深く掘り下げていく。編集も非常にテンポが良く、サスペンスフルな展開と、コミカルなシーンの緩急が絶妙。特に、主人公が逃亡中に様々な人々と出会うシーンは、短いながらもそれぞれのキャラクターの個性が際立つ演出がなされ、物語に奥行きを与えている。無駄なシーンが一切なく、観客は物語に引き込まれ、最後まで目が離せない。監督が意図的に使用した、原作の重要なキーワードを象徴するアイテムやシーンの描写も効果的で、原作ファンにとっても嬉しいサプライズが散りばめられている。
キャスティング・役者の演技
* 堺雅人(青柳雅春 役)
宅配便ドライバーの青柳雅春は、ごく普通の善良な市民。それがゆえに、首相暗殺事件の犯人として仕立て上げられ、戸惑い、恐怖し、必死に逃げ惑う姿は、観客の共感を呼ぶ。堺雅人は、この極限状態に置かれた青柳の心理を、繊細かつ巧みに表現。特に、警察に追われ、絶望に打ちひしがれながらも、友人や元恋人との記憶を胸に、何とか生き延びようとする姿は、観客の心を強く揺さぶる。ユーモラスな表情から、鬼気迫る表情まで、幅広い演技で青柳というキャラクターに深みを与え、この物語の核となる存在感を放った。彼の演技があったからこそ、この物語は単なるエンターテイメントに留まらず、人間ドラマとして成立したと言えるだろう。
* 竹内結子(樋口晴子 役)
青柳の大学時代の元恋人で、現在は結婚し、一児の母となった樋口晴子を演じる。青柳との再会を果たし、彼の窮地を察した晴子が、昔と変わらない優しさと、母親としての強さを見せ、彼を助けようとする姿は印象的。竹内結子は、過去の思い出と現在の生活の間で揺れ動く女性の複雑な感情を、抑えた演技で表現。彼女が青柳に語りかける言葉には、彼への信頼と、決して忘れていない思い出が滲み出ており、物語の重要なターニングポイントとなった。青柳の心の支えとなる存在として、確かな存在感を示している。
* 吉岡秀隆(森田森吾 役)
青柳の大学時代の友人。現在は、大学病院に勤務する真面目な医師として登場。青柳の窮地を知り、警察の目をかいくぐって彼を助けようとする。吉岡秀隆は、一見真面目そうに見えるが、実は仲間思いで、どこか不器用な森田のキャラクターを好演。彼の演技は、青柳との友情の深さを観客に強く印象付け、物語に温かみを与えた。特に、青柳との過去の思い出を語るシーンは、二人の間に流れる強い絆を感じさせる。
* 劇団ひとり(カズ 役)
青柳の大学時代の親友で、現在はラジコン屋を営んでいる。青柳の窮地を知り、持ち前のラジコン技術を駆使して彼を助けようとする。劇団ひとりは、飄々としたキャラクターの中に、友情を大切にする熱い心を持つカズをコミカルに演じ、観客に笑いと感動をもたらした。彼の登場シーンは、物語にユーモラスなアクセントを加え、重くなりがちな逃亡劇に軽やかさをもたらした。
* 香川照之(佐々木 役)
本作のクレジット最後を飾る有名俳優。青柳を追う公安警察官・佐々木を演じる。冷静沈着で、常に青柳の一歩先を読み、追い詰める存在。香川照之は、彼の持つ独特の存在感と演技力で、佐々木というキャラクターに冷酷さと人間味の両方を与え、物語に深い緊張感をもたらした。
脚本・ストーリー
伊坂幸太郎の原作が持つ、緻密なプロットと伏線の回収が見事に映像化された。ストーリーは、首相暗殺という巨大な陰謀に巻き込まれた男の逃亡劇を中心に展開し、その中で、過去の思い出や人々の温かい繋がりが描かれる。脚本は、原作のセリフやエピソードを効果的に取り入れつつも、映画ならではのテンポ感と構成で再構築されている。特に、主人公が逃亡中に様々な人物と再会し、その度に彼らの助けによって窮地を脱する展開は、観客に希望と感動を与える。伏線が次々と回収されていく様は、ミステリーとしても秀逸であり、観客は最後まで物語の結末から目が離せない。
映像・美術衣装
仙台を舞台にした、どこかノスタルジックで温かみのある映像が印象的。特に、青柳が逃亡中にさまよう街並みや、彼がかつて住んでいたアパートの部屋などは、観客に親近感を抱かせる。美術は、登場人物それぞれのキャラクターを反映した、細部までこだわった設定がなされている。例えば、青柳の部屋は、彼の質素で実直な人柄を表現しており、カズのラジコン屋は、彼の遊び心と技術力の高さを示している。衣装も、登場人物の職業や性格を的確に表現しており、リアリティを高めている。
音楽
劇中を彩る音楽も秀逸。サスペンスフルなシーンでは、緊迫感を高めるBGMが流れ、ヒューマンドラマのシーンでは、温かみのあるメロディが流れる。そして、特筆すべきは、ビートルズの楽曲「Golden Slumbers」が主題歌として使用されている点だ。
* 主題歌: 『Golden Slumbers』
* アーティスト名: ジョン・レノン
この曲は、主人公の心の拠り所となり、物語全体を象徴する重要な役割を果たしている。
受賞・ノミネート
* 第34回日本アカデミー賞優秀作品賞
* 第34回日本アカデミー賞優秀監督賞
* 第34回日本アカデミー賞優秀脚本賞
* 第34回日本アカデミー賞優秀主演男優賞(堺雅人)
作品
監督 中村義洋 126×0.715 90.1
編集
主演 堺雅人A9×3
助演 吉岡秀隆S10
脚本・ストーリー 原作
伊坂幸太郎
脚本
中村義洋
林民夫
鈴木謙一
A9×7
撮影・映像 小松高志 B8
美術・衣装 磯見俊裕
B8
音楽 音楽
斉藤和義
主題歌
斉藤和義 S10
逃げて、逃げて、生きろ!
WOWOWの伊坂幸太郎原作映画の特集にて。
突拍子もない陰謀に巻き込まれて逃げる主人公の青柳(堺雅人)。
その陰謀の真相はいったい何か…というミステリーはすぐにどこかに行ってしまい、青柳が次々と襲いかかる危機また危機をいかにして切り抜けるか、それをどのような人がどのようにほう助するのかを楽しむ逃亡人情劇。
元恋人(竹内結子)も、学生時代のサークルの後輩(劇団ひとり)も、その恋人(ソニン)も、以前暴漢から救ったアイドル(貫地谷しほり)も、勤務先宅配会社の先輩(渋川晴彦)も、学生時代のバイト先花火工場の社長(ベンガル)も、みんな青柳を信じていて全く疑わない。
一件落着後のシークェンスで、青柳からのメッセージを瞬時に理解してしまうほどに、彼らは以心伝心なのだ。
連続通り魔(濱田岳)と妙な老人(柄本明)が青柳を助ける。
追手の殺し屋?(永島敏行)を含めたこの3人が極めて特異なキャラクターで、彼らが何者なのかよく分からない。
伊坂幸太郎原作らしいところか。
警察庁の指揮官を演じた香川照之の悪役ぶりが良い。
伊東四朗、でんでんの二人が短いシーンで笑わせてくれる。
全体的に大味な印象だが、クライマックスの花火はダイナミックで感動的。
逃げろ生きろ生きのびろ
原作未読
原作は『陽気なギャングは地球を回す』『アヒルと鴨のコインロッカー』『重力ピエロ』『ポテチ』『グラスホッパー』『アイネクライネナハトムジーク』『ブレット・トレイン』の伊坂幸太郎
監督と脚本は『アヒルと鴨のコインロッカー』『ジャージの二人』『ジェネラル・ルージュの凱旋』『ポテチ』『奇跡のリンゴ』『ナゾトキネマ マダム・マーマレードの異常な謎 出題編解答編』『殿、利息でござる!』『決算!忠臣蔵』の中村義洋
2010年公開作品
鈴木福当時6歳くらい
舞台は仙台市
金田首相暗殺犯に仕立て上げられた青柳雅春の逃亡劇
サスペンスコメディーの傑作
なぜ作家伊坂幸太郎は仙台にこだわるのか
出身地は千葉県なのに
東北大学出身でそのまま仙台に在住している
仙台だと嘘が書きやすいらしい
映画館に足を運ぶためちょくちょく仙台にも行くが伊坂幸太郎も篠ひろ子も石巻市在住の森下千里も見かけたことがないがまあそんなもんだろう
生まれて初めて成城の住宅地に行ったときは生前の峰岸徹にバッタリ遭遇したことがあるんだけどなあ
「死んじゃう」セクシーボイスの貫地谷しほりは1番の笑いどころ
竹内結子はなぜか本当に死んじゃったけど
伊東四朗はまだ生きてる
それにしても豪華な顔ぶれ
これだけの傑作なんだから願わくば動画配信もしてほしいよU-NEXTさん
ただちょっと長めかな
面白んだけど
たきへんよくできました
あと青柳の突撃取材したマスコミ超ムカつく
俺は東京のマスコミが大大大嫌いだ!マジで嫌いだ!心底嫌いだ!
「なぜ名乗らなければいけないんですか!」
名乗れよブス!
配役
仙台在住の宅配ドライバーの青柳雅春に堺雅人
青柳の大学時代のサークル仲間の樋口晴子に竹内結子
青柳の大学時代のサークル仲間の森田森吾に吉岡秀隆
青柳の大学時代のサークル仲間の小野一夫に劇団ひとり
青柳を助けれてくれた連続通り魔のキルオに濱田岳
青柳の職場の同僚の岩崎英二郎に渋川清彦
入院患者の保土ヶ谷康志に柄本明
花火職人の轟静夫にベンガル
晴子の夫の樋口伸幸に大森南朋
仙台に帰省中強盗に襲われたが青柳に救われたアイドルの凛香に貫地谷しほり
マンガ喫茶で青柳と出会い交際を始めた井ノ原小梅に相武紗季
青柳を狙うスナイパーの小鳩沢に永島敏行
刑事の近藤守に石丸謙二郎
警視庁総合情報課警視正の佐々木一太郎に香川照之
小野一夫と交際中の鶴田亜美にソニン
刑事の鷲津にテイ龍進
巡査の児島安雄にでんでん
自由党幹事長の海老沢克夫に戸沢佑介
整形後の青柳雅春に滝藤賢一
地元仙台でパレード中に暗殺される日本の首相の金田貞義に伊藤ふみお
晴子の娘の樋口七美に北村燦來
亜美の息子の鶴田辰巳に鈴木福
合コンに行くためバス停でバスを待っていたカナエに松山愛里
爆弾テロ騒ぎを知らなかったカナエの彼氏のケンジに中林大樹
轟静夫の息子の轟一郎に少路勇介
カー用品の女店員に笠木泉
青柳にサインをねだるウェイトレスに麻衣
病院スタッフに汐見ゆかり
昌太の息子の鎌田昌夫に吉澤天純
病院警備員に池口十兵衛
英二郎の妻の岩崎美千代に安藤玉恵
入院患者の田中徹に波岡一喜
雑居ビルのオーナーの加藤に上田耕一
凛香のマネージャーの大串に芦川誠
地元テレビ局プロデューサーの矢島に木下隆行
謎の整形外科医に岩松了
アパートを貸す代わりにキルオにプレゼントされた大型バイクで日本一周の旅をしている鎌田昌太に山口良一
雅春の母の青柳照代に木内みどり
雅春の父の青柳平一に伊東四朗
宮城県警本部長の大杉憲司に竜雷太
懐かしい人になった竹内結子
彼が選ばれた理由ももう一押しあっても
首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公の逃避行を描く物語。
堺雅人主演のサスペンスアクション映画です。
伊坂幸太郎作品を原作とした映画のようですね。原作は未読ですが、流石に良く出来ていると感じられた映画でした。
徒手空拳。ただの宅配ドライバーの主人公が、旧友や行きずりの人たちの協力を得ながら真相を探る様子が、サスペンスフルに描かれています。
要所にインサートされる大学時代の風景が秀逸で、物語に良いアクセントを加えてくれています。
主人公とヒロイン竹内結子の関係も魅力的でしたし、主人公の両親の描き方も秀逸でした。
ただ、クライマックスが雑に感じたのが残念。もう少し抑えても作風にあっていたと思うだけに残念でなりません。
予算との兼ね合いもあるのでしょうが、残念に感じることが多い邦画のサスペンスアクションの中では、とても良く出来た作品だったと思います。
私的評価は4にしました。
首相暗殺の濡れ衣を着せられ、命まで狙われる青年。 国家権力が相手だ...
改めて、竹内結子が亡くなったのは本当に残念に思った。
予想以上の出来!
伊坂幸太郎の最高傑作
スクリーンで観たかった一作をスクリーンで観た
公開当時は観られなかったのだが 小説は読んでいて
大学の先輩にDVDを借りて観て超感動した作品
去年移転した地元のテレビ局が局内に劇場を造って
過去に制作に関わった作品を上映するのだと
事前にネットで席を購入自由席800円 4~5割くらいの入り
オラが伊坂幸太郎の最高傑作だと思う作品
映画化前提といっていいくらいのストーリー展開
で 映画になっても全くがっかりしない
サスペンス アクション ユーモア 青春 友情 恋愛 家族…
全部入り 韓国でリメイクされるのも頷ける
全然飽きずあっという間に時間が過ぎた
今回飽きなかった理由は多彩なキャストにも
若き堺雅人 吉岡秀隆 劇団ひとり 貫地谷しほり
もっと若い鈴木福もいた
竹内結子はもうこの世にいないのでほの悲しいが
この作品こそが代表作だと思うくらいの大活躍だ
あと あぁあの先輩は渋川清彦だったのか
そして妻が安藤玉恵かと 嬉しかった
で なんといっても滝藤賢一
改めてもう1回観たかった理由のひとつは
彼を確認することだったのだ 満足した
常連の濱田岳
他にも 香川照之 ベンガル 伊東四朗 木内みどり
大好きな役者揃い踏み 大森南朋 相武紗季 柄本明
いやぁ面白かった
大型連休終盤で幸せな時間を過ごした
エンドロール曲は違和感があったが
作品の素晴らしさからすると小さい問題だ
今年観た中でのベスト10にも間違いなく入るし
今回スクリーンで観たことで
なんとなく躊躇っていた生涯ベストにも入れられる
(おまけ)
上映前 ノートパソコンがスクリーンの横にあって
まさかそのなかに映画が入っているのか…
なんてことは当然なく上映前のイベント用だった
映画制作に携わった局のスタッフのひとが
裏話を披露するという趣向
上映は土曜日の13時
始まる前に局前の広場で缶ビールと軽目の昼食
ラーメンのイベントをやっていたが客は少な目だった
連休も終盤だからな
終わってからはショッピングモールで
信玄餅パイなる菓子とコーヒー
オラとしてはこの上なくいい休日だったのだが
実は上映中に天候が一転
突風と雨で大騒ぎだったとのことを帰宅後に知る
10年前に見た感想
地上波でやっていたのを見た。
まあ、家で飯食いながら見る程度の映画かな。
はじめはめっちゃサスペンスものかと思いきや
ところどころに笑いがある感じで、そこがなんか中途半端というか。
全国に指名手配している割には、仙台から一歩も出ていないし。
怪しい女役でいかにもこれから関わっていきそうな
相武紗季もはじめだけの出オチ程度の役柄だし
たぶん闇の組織の雇われだと思うけど。
キルオの出かたもなんかなー。キャラはよかったけど。
笑いは笑い、シリアスはシリアスとメリハリをつけた方が
見ていてもすんなり受け入れやすいように思えた。
ビートルズ、打ち上げ花火、よくできました等終始、
伏線回収の映画ってかんじ。全シリアスでもよかったのでは。
巻き込まれ型お人好し好青年を堺雅人が熱演!
伊坂作品に出会った小学時代を思い出した新たなオールタイムベスト級の1本
コロナ禍で火がついた映画鑑賞。かれこれ今年も40本以上観ているのだが、久々にビリビリきた。小学校の頃に読んで以来この作品に触れたのだが、まさかオールタイムベストのひとつになるとは。圧巻、お見事。
人生で初めて自分のお金で買った小説が『ゴールデンスランバー』だった。小学生高学年でも分かるテンポの良さと、伏線回収の気持ちよさ。さすがに小説の醍醐味とメッセージは分かっていなかっただろうが、伊坂作品を良く読んでいたあの頃を思い出した。
実のところ、読んだと言っても8年以上経っているので覚えていないところばかりで、かなり新鮮な気持ちで楽しめた。序盤から訪れる危機とサスペンスの様相。何一つ疑念を持たない青柳の顔色が次第に悪くなり、危険な事が身に降りかかっていることに気づく。それを追体験するようなスリル。樋口と視点が変わることによって浮かび上がる事実と過去。そして、伊坂幸太郎作品を象徴する怒濤の伏線回収と人間ドラマ。139分を飽きさせない圧倒的なスケールとテンポがたまらなく良かった。最後には涙で画面が滲んでしまうほど…。
堺雅人も竹内結子もそうなのだが、現実と地続きしているような世界観の体現が上手い。天変地異のような大事件に巻き込まれているのに、リアリティを感じてしまう演技はさすが。竹内結子はもういないと思うと胸が苦しくなる。香川照之も非道な正義を振りかざす警察官のヒールぶりも良い。
最後に触れたいのは、音楽。やっぱり斉藤和義だったのか。同じ伊坂幸太郎原作の『アイネクライネナハトムジーク』でも良い化学反応を魅せていたが、ここでも凄かった。スリルを音楽で扇動したかと思えば、ドラマにはハンカチを差し出すような暖かさを引き出す。そうしたバランスとサスペンスの重厚感が生んだからこそ、素晴らしい1本になったのだろう。
僕個人の青春が詰まっている記憶も溢れてきた本作。ただ、単に情が入ったスコアではないことをここで記しておく。間違いなく、サスペンスの良さを生かした究極の1本であることに間違いないからだ。
後味が良くない
竹内結子、中村義洋コンビを改めて評す
うーーーーん。。。
原作も映画もばつぐんにおもしろい
渋川清彦は、この映画やフィッシュストーリーで見せた演技でブレイクした、はずである。
その持ち味が理解されていない──と思う。
キャスティングされると、まず間違いなく、だらしない人間、ダメ男、チンピラとして使われる。
いったいこの紋切り型の発想はなんなのか、というくらい、一本調子のキャスティングを被る(こうむる)。
クレジットされていると、ほぼチンピラ役なのである。
この国の演出家は何を見ているんだろう。
青柳(堺雅人)に会ったときの岩崎先輩(渋川清彦)のセリフは「どうせおまえじゃねえんだろ」だった。
「どうせおまえじゃねえんだろ、ちげえだろ」
その無雑な性根に青柳はおもわず涙する。
有名人の青柳をだしにしたらキャバ嬢とヤレた。それを恩義にするほど小市民で、竹を割ったように単純な善人が渋川清彦の持ち味だった。
ロックだなが口癖で、僅かな登場回数と時間なのに、すがすがしい好感を残した。
国中を敵に回そうと、あなたを知っている人は、あなたを知っている、のである。これは伊坂幸太郎がもっとも言いたかったポイントだった。──と思う。中村義洋監督はそれをしっかり酌んで、爽やかさを渋川清彦に充てたわけである。ところが、他の演出家ときたら、渋川清彦をぜんぜん生かせていない。
余談だが、演出家としての素養が不確定な作家を、きょうびこの国では鬼才と呼ぶ。
反して(ざっくりで網羅性はないが)是枝裕和、中島哲也、李相日、原田眞人といった監督たちは、演出力をそなえた堅実な映画監督──と認識している。
なかでも中村義洋監督は、手堅さが秀でている。
演出力の裏付けがある映画を、日本映画では滅多に見なくなったのに相反して、国内マーケティングでは鬼才が、まるで天才のように、もてはやされている。
フィッシュストーリーやアヒルと鴨やこれのように、とうてい映画化できないはずの伊坂作品を、いったいだれが映画化できるというのだろうか。
優劣は主観である。
が、せめて凡百の鬼才とは区別してほしい。と思う。
最後に笑える
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