劇場公開日 2010年1月30日

「新年早々、2010年私的ワースト候補作」ゴールデンスランバー(2010) 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5新年早々、2010年私的ワースト候補作

2010年2月3日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

原作未読者の意見である。

冒頭の、緊張感に乏しい首相暗殺のシークエンスからイヤな予感はしていた。
この映画は巻き込まれ型サスペンスがやりたいのか、友情物語がやりたいのか。
たぶん両方をやろうとしたんだろうが、結果的にはどちらも中途半端で薄っぺらい。それどころか両者が互いの邪魔をしているようにさえ見える。

この映画では、主人公が困った時に必ず適材適所の人物が現れる。
それが一度や二度ならまだ許せるが、この映画の場合はあまりに都合が良すぎて白けてしまう。
特に「びっくりした?」が決め台詞のあのキャラは……主人公を助ける動機も不明なら存在理由も不明。御都合主義もここまで来るとギャグだ。
そもそもこんな辻褄合わせに終始したようなヒドい脚本をよくそのまま撮る気になったもんだ。

主人公自身も常に受け身の行動しか取らない。自発的に窮地を脱するシーンはほぼ皆無。
かつての友情と元来の人間的な魅力が彼を救う、という物語なのだからそれも仕方ないかも知れないが、『人の良さ』以外の魅力はひとつも伝わらないし、唐突に挿入される回想シーンを見たところで大学時代の友人達との固い信頼みたいなものは見えない。

薄っぺらな登場人物たちを、力のある役者陣の演技が辛うじて救っている印象。
特に、短い出番ながら味のある伊東四朗や笑顔の不気味な永田敏行とかは悪くない。
あと、斉藤和義の音楽も良いし、一万歩譲ってメチャクチャな展開に目をつぶれば、後味も悪くない。

という訳で、辛うじてのC。
邦画のメジャー大作で出来の良いサスペンスなんてもう観られないんだろうなと寂しくなった。

浮遊きびなご