「めまぐるしく繋がっていくアクションに見せられました。」プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
めまぐるしく繋がっていくアクションに見せられました。
ジェイク・ギレンホールの軽妙なアクションで、楽しませてくれました。冒頭のアラムト城攻城戦の描写が本格的な歴史スペクタル作品に迫る迫力で、一気に作品の世界に引き込まれてしまいます。
僅かな手勢だけで、主人公のダスタン王子がアラムト城に潜入し、あれよあれよと東門をこじ開けてしまう展開は、見応えたっぷりでした。
CGだけでなく、屋根から屋根へ飛び移る「パルクール」の飛び技を、軽々こなしていくギレンホールの身体能力の高さも見せつけられます。
ブラッカイマーのによるプロデュース作品だけに、テイストは『パイレーツ・オブ・カリビアン』に似ています。ただ主役の身体能力の違いから、アクションとしての見せ場は、本作が遙かに凌いでいると思います。
また、『時間の砂』という秘法により、時間をバックフューチャーできる設定についても、絶妙なタイミングで、過去に戻し、上手く辻褄をまとめています。
そして、反発しつつも惹かれあっていく、ダスタンと攻め落としたアラムト城の王女タミナとの関係も、なかなかロマンチックな演出でした。『時間の砂』の効果で、一端はふたりの関係も白紙に戻るのです。しかし、新たにやり直されていく状勢の変化のなかで、再び強い絆で結ばれます。そこにナレーションが「Its Destiny」の言葉が被ります。
その言葉通り、二人の出会いはとても運命的に見えました。冒頭では予想も出来ないくらい、敵味方に別れて、騙し騙され会う抜き差しならぬ関係であったのにも関わらすです。
「運命とは、何か」ということが冒頭で投げかけられ、時間の流れは果たして変えられないものかということがテーマとなっている作品ではないでしょうか。
運命とは決して決まったものではなく、変えられるものである。そうクロージングされるダスマンの活躍を見せつけられて、惰性に負けない勇気を持つことが大事なんだと感じた次第です。
あとアラムト城への侵攻への理由になった、武器商人への武器供与がでっち上げだったことが傑作。「グリーン・ゾーン」と一緒で、アメリカのイラク侵攻を皮肉った設定なんですね。その陰謀を謀ったシャラマン王の腹心の弟ニザムは、いかにも悪党という顔つき。王殺しの濡れ衣を負ったダスタンは、当初ニザムを頼ろうとしますが、案の定こいつがワルだったというお決まりの流れとなりました。
全編を通じて、中世ペルシャを舞台としたオリエンタルな設定が、『時間の砂』の秘法の雰囲気を盛り上げています。
ただストーリー的に、どんなに王女タミナがダスマンを騙してトンズラしても、易々と居場所を突き詰めたりとか、ふたりを金づると見て、拘束する盗賊団が、いとも簡単に協力者に変わっていったり、突っ込みたくなるところもありました。
それを割り引いても、楽しまさせてもらえた傑作でしたね。
ギレンホール以外にも、王女タミナの複雑な心境の変化を演じたジェマ・アータートンの演技もなかなか良かったです。