劇場公開日 2009年8月22日

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「ストーリー展開がわざとらしいところが要所にあるのが残念。でも感動もします。」ぼくとママの黄色い自転車 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ストーリー展開がわざとらしいところが要所にあるのが残念。でも感動もします。

2009年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 確かに感動する話で、若いママさんなら絶対泣いてしまう作品です。しかし、ストーリー展開がわざとらしいところが要所にあり、興ざめしてしまうのです。
 あっとチョットで感動するのにという点では、『子ぎつねヘレン』のテイストによく似ています。

 若年性アルツハイマー病を描いた作品では、やはり『明日の記憶』が秀逸。堤幸彦監督は夫婦愛を描かせばピカイチだけに、比べると本作のわざとらしさが目立ってしまいました。

 具体的な突っ込みどころとして、大志は横浜から自転車で、恋しい母を訪ねて小豆島を目指すのですが、割とヒッチハイクが多くて、あっさり岡山まで着いてしまった感じがしました。車で四国へ帰省したこともありますが自家用車でも大変なのに、自転車ならもつと大変なはずです。

 岡山でのヒッチハイクの途中、大志は3人の人から助けられます。
 一人目は、「岡山運送」というトラックの運転手かと思いきや、その運転手の婚約者が大志を西明石まで送ってくれました。
 大志はこのトラックを岡山行きと勘違いして、勝手に荷台に乗り込んでいたのです。そうしたら婚約者がトラックの前に急に現れて、通せんぼ。喧嘩の末トラックを奪って、トンズラしてしまいます。
 大志を見つけた婚約者は驚くものの、事情を聞いて、結果的に関西まで大志を乗せていったのでした。
 でもあまりに唐突な登場の仕方で、わざとらしかったです。

 二人目は、明石でお巡りさんに捕まりそうになったときも、機転を利かせて、大志を自宅へ引き取った由美という女の子。凄くおませでリアリストなところが笑わせてくれました。由美に言わせれば、大志のお母さんは再婚しているはずだから、会いに行っても迷惑だというのです。由美は母子家庭で、父親が幼い頃に出て行ったしまった経験からそう語ったのでした。
 二人は口論しつつ、お互いの寂しさを分かち合うのでした。
 ここでも由美の登場の仕方が、やはりわざとらしくて、うそ~と言いたくなるでしょう。
 三人目は、小豆島への船便が台風で欠航する中で、嵐に打たれて倒れていた大志を救う正五郎。正五郎は、家族に見捨てられて自殺しようとしたところ、大志を見つけて死ぬことを思いとどまります。
 正五郎からは、父の嘘を許すこと。そして母を信じる勇気をもらいました。
 ここでも正五郎がタイミング良く嵐の日に自殺しようと突如登場するところはわざとらしかったです。

 この3人の親切で、大志は無事小豆島にたどり着きました。けれども大志もまたこの3人の人を励まして、生きる希望を与えていたのです。大志という少年は、母琴美の深い愛情に包まれて、どんなことにも挫けない、強い心を育んでいたのでした。

 小豆島に渡った大志は、持ってきた写真をヒントに小豆島を巡ります。問題は、その巡り方。いかにも観光タイアップショットという感じの名所案内みたいな巡り方には苦笑しました。

 その後母との再開シーンでは、やはり圧巻です。
 母琴美役を演じる鈴木京香は、愛するわが子である大志への思いを、情感豊かに演じていました。特に記憶が残っていた時期に録音した声が、全ての真実を大志に告げるわけですが、どれだけ愛していたか、無念であったか切々と語る琴美のセリフには、涙を誘われます。
 その中で、6歳になったらこれをプレゼントしてあげて、一志と共に選んだのが黄色い自転車だったのです。琴美は、この自転車を漕ぐ大志の姿を見ることが出来たらどんなにいいだろうとかと涙ぐむのでした。

 その黄色い自転車のって、母の元へ大志がやってきます。
 でも現実は残酷です。アルツハイマー病のため琴美は、全く記憶も感情も失っていたのでした。ガッカリして、嘘つきと罵る大志。しかし、奇跡は起こったのです。

 肉体はどんなに朽ち果てようとも、精神は果てることもなく、壊れることもなく、正常に機能し続けます。大志が訪ねてきたとき、感情を表すことが出来なくなった琴美の無念さには、小地蔵的な見方として、涙が誘われますね。

 『いま会いに行きます』で名子役として注目された武井証くんの演技力は抜群ですね。来週試写会で見る『BALLAD 名もなき恋のうた』でも、主演の座を射止めているので、また彼の演技が楽しみです。

追伸
どうして愛犬アンをこんな長旅にお供させたのかなぁ~。おかげで新幹線に乗れなかったでしょ。まぁ乗っちゃったら、映画にはならんかったとは思いますけど。

流山の小地蔵