つみきのいえのレビュー・感想・評価
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デザインとアートの軸で言ったら、日本の映画はデザインの軸に分類され...
デザインとアートの軸で言ったら、日本の映画はデザインの軸に分類されるものが多い。しかし、この作品に関しては完全に「アート」である。
この映画は何も語らない。長澤まさみのナレーションもあるらしいが、個人的には無い方をお勧めしたい。ビュワーの想像力に委ねられている作品であり、見る人に統一された感想を持たせない多義性のある素晴らしい映画であると思う。
ストーリーとしては、そこまで難解で複雑なものではないのだが、そこに先ずは「デザイン」としての断片を感取でき、好感度がある。音楽は栗コーダーカルテットの近藤研二を採用しているが、これ以上ないピッタリの音楽を映像にマッチさせてくれているし、1つ1つの環境音やそのタイミング、編集にも脱帽。絵的な観点からしても、場面ごとに黄色と青色の美しい色調を綺麗にまとめあげていて、効果的な演出へと繋げている。
「アート」でありつつも、「デザイン」を置いてけぼりにしていない、誰が見ても感想を言える多義性に富んだ素晴らしい作品だと思っています。
ナレーションがなくても、あたたかさと胸にこみ上げるものが伝わってく...
パイプと辿る人生
人生、家族の変化、暮らしが詰まったいえ。温暖化で海面が家に迫っては、家に石を積んで階上に新しい家を作り、住み替えて生活を積み上げてきたおじいさん。家の下には過去の家が積み上がって海の中。
そこに潜ってどんどん下に潜っていくと、家を遡るとともに過去も遡って蘇り思い出が溢れて来る。
1人が夫婦になり、夫婦が家族になり、娘が結婚してまた夫婦に戻り、一緒に過ごしてきた妻を看取ってまた1人のおじいさん。積んである家の大きさが、家族の頃は大きいけれど、新しく家を積むと元より小さい面積になるから、どんどん小さくなっているのがおじいさんの人生と重なる。
寂しそうに見えるけれど、最後に注いだワインはおばあさんの分と2人分。この人生一緒に色々あったねって事なのかな。若き日のおじいさんとおばあさんで一緒に積んだ事もあった家の上に、今のおじいさんの暮らしは成り立っている。
海面上昇のために、昔おばあさんと走り回った野原はもう深い海の底で、家の周りは全部海。人との交流にも船が必要。そういう世界にして良いものか、考えさせられる。一方、海面上昇の設定があるから、おじいさんの人生の変化が縦に詰まれてわかりやすい。
終始色鉛筆のタッチがおだやかな懐かしさと寂しさを表現していて、俯瞰で描かれた街の風景は海バージョンのスノーマンや、魔女の宅急便を彷彿とさせる。
積んできた
過去だって振り返って良い
積んできた幸せ。
まずはアカデミー賞短編アニメ賞受賞、おめでとうございます。
すごい!やりましたねぇ。
物語をぜんぜん知らなかった私は、受賞時のTV映像が初めてで、
あ~、これはあの「岸辺のふたり」によく似ているな~と思った。
今作を素晴らしいと感じた方は、是非観てほしい作品。
たった8分間で、こんな感動が作れるのか!?と思うほどの
完成度の高さ、2001年アカデミー賞を受賞した短編アニメの名作。
あちらは父と娘の長きにわたる物語だったが、
今作はおじいさんとおばあさんの想い出を綴る物語になっている。
温暖化で水面が上昇する町で、水没していく我が家を積み増し、
上へ上へと引っ越しを続けてきたおじいさんがある日、
大切なパイプを階下へ落してしまう。
意を決して潜ったおじいさんの目に飛び込んできた風景は…。
懐かしさと切なさが入り混じった物語が、ゆったりと感動を誘う。
誰しもが経験するであろう人生の喜哀を優しいタッチで描いている。
人生は上へ上へとつみきのように重なっていくが(歳もね^^;)
かけがえのないものは、その下へ下へ土台となって連なっていく。
ふと見つめ直した幸せに、孤独以上の感謝を捧げたくなる作品。
惜しむらくは…長澤まさみのナレーション。
彼女のまったりとした声と語りはこの作品を崩してはいないが、
本来の短編に語りは必要ない。映像そのものが物語なのだ。
補足するなら…子供の質問に両親が答えてあげるのがいちばん。
(大好きな人と添い遂げる幸せ。この先幾人が味わえるんだろう)
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