「マトリクス越えか?」インセプション k.moriさんの映画レビュー(感想・評価)
マトリクス越えか?
夢を複数の人間によって共有することができるならば、恐らくその時点で、夢は単なる『夢』の範疇を超えて、現実の一部になるのではないでしょうか。
重層的で異なる時間軸で構成される夢と現実世界との交錯。設定としてはそうではなかったかもしれませんが、生者と死者の意識をも夢世界の中で意識が共有されるとするならば、夢と現実という枠組みのみならず、次元をも超えた多層重層的な世界が出現する。
主人公の亡き妻への愛情は、こんなにも、と思うほどに強いものがあるが、それも『夢』という二人だけの世界を長時間共有したならば、そうなるかもしれないと考えさせられる。
意識上の世界と現実とをテーマにしているという点で『マトリクス』に近いものがあるが、その構想、構成力の進化という観点から、それを超えた作品になったのかもしれない。
ラスト近く、参加者達の空港でのシックな解散シーンが、リアリティーを増幅させ、観終わった後、いくつもの人生を味わったかのような不思議な感覚にとらわれる
渡辺謙の存在感も大きく、ますます大物俳優への道を歩んでいるなという感慨もありました。
少なくとも、本年観た映画の中では、最も印象深く、インパクトの大きな作品であったと思います。
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