「「夢=潜在意識」の中での犯罪という「アイディア」が面白い」インセプション スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
「夢=潜在意識」の中での犯罪という「アイディア」が面白い
本作の主人公は対象者を眠らせ、夢(=潜在意識)の中に侵入。対象者の「アイディア」を盗むことを生業としている。そんな主人公のもとにある仕事の依頼がくる。その中身はその侵入と盗みのスキルを逆手にとって「インセプション」つまり「アイディア」を対象者に植え付けることで、現実世界の対象者の行動を操るいわゆる「洗脳」を試みるというもの。
本作はそんな禁断かつ高難度のミッションをチームで遂行していくSFアクションムービーだ。
正直、一回見ただけでは理解できなかったが、「発想」がとにかく面白い。
夢の中の世界は潜在意識を表しており、その世界では自分が想像した世界を自由に設計・創造できる。(おそらく訓練次第なのだろうが・・・)
また、「専用の装置」を使うことで夢の世界を他者と共有することができ、本作の主人公はその装置を使って他人の潜在意識の中へ侵入し、「盗み」を繰り返している犯罪者の設定。
また、夢の共有者が複数いる場合、夢の中の世界で睡眠状態に入ることで、また別の人間の夢の世界に入り込むことができ、その分体感時間=夢の世界にいる時間も伸ばすことができる。
つまり現実世界での5分のうたた寝が夢の中の世界では1時間くらいに、夢の中で見た夢の世界では1日というように、夢のまた夢へと深く「潜って」いけばいくほど認識できる空間は多層的となり、時間はどんどん間延びしていくといった感じだ。(この説明であっているか自信はないが・・・)
今回の「インプレッション」(アイディアの植え付け)というミッションでは、
チームを組むことが肝となる。まずは、対象者に夢の世界だと悟られないようにまた見つからないように夢の世界という仮想空間を設計する優秀な「設計師」、そして夢の中の対象者を欺く「偽装師」、そして睡眠の深さを操る「調合師」。
もともと二人でバディを組んで仕事をしていた主人公たちにこのスペシャリスト3名と仕事の依頼主を加えた全6名で対象者の夢に入り込みミッションを遂行していく。
併せて、主人公コブの欲望や葛藤、犯してしまった最も大きな罪とその罪悪感の克服も本作のもう一つの主題となっている。
本作は夢や人間の潜在意識つまり欲望についても考えさせられる作品だ。
起きたらまだ夢の中でまたさらに起きてやっと現実世界に戻り、朝を迎える。
こういう経験をしたことがある人は多いのではないか?
また、見ていた夢についてあれは何だったんだろうと考え込んでしまったり、
フロイトよろしく自分なりに夢診断による精神分析を試みたり・・・
また、今この認識したりしている世界は「胡蝶の夢」や「水槽の中の脳」のように現実世界ではなくまだ夢の世界なんじゃないのかと想像してみたり・・・
個人的には人間の不可思議と本能について考えさせる感慨深い作品だと感じ、とても楽しめた。