「つかみどころのない世界を描いた上質なエンターテイメント。」インセプション とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
つかみどころのない世界を描いた上質なエンターテイメント。
創造される建造物・街…。
崩れ落ちる建造物・街…。
滅びの美学。
天地創造への高揚。
創造主になったようなエモーショナルな映像をベースにして、
緊迫感煽る展開、音楽。
一瞬とも目が離せない。
そんな冒険譚に並走する、親子のテーマ、夫婦のテーマ。
冒険譚と親子・夫婦のテーマ、どちらが隠し味なのか、本道なのか。
突っ込みどころは満載。否、この映画を理解するためのトリガーなのか?
今、誰の夢をベースにして話が進んでいるのか?
なぜ、コブの投影だけが侵入してくるのか? 潜在意識はすべての人間にあるのに。 メンバーは訓練されていると仮定しても、サイトーとアリアドネは訓練されていないのに…。
モルにとっての子どもの意味は? 「母なら」という私の固定観念?
親子・夫婦のテーマは掘り下げ方が足りないのは、構成の都合? それともコブの想いにだけ焦点を当てているから?
なぜ、隠れ家に電話?
なぜ、サイトーは参戦する? 単なる好奇心にしてはリスクが…。猜疑心なら、なぜ夢に悪影響がでてこない? インタビュー記事では、あえて無国籍的な得体の知れない人物っぽくとあったけれど、それはなぜ?
そして、あのコマ…。
考え出すと、迷宮に入り込む。
夢…。
フロイトやユングをはじめとする臨床心理学の夢分析等からみると、この映画の夢は整然としすぎている。
”設計”されているとはいえ、こんな単純なものではない。
意図せず”夢”に表現されるもの。すべて表現されているようにみせかけて、巧みに隠蔽されているもの。前意識と無意識、集合的無意識。さりげなく転がっている石にすら、そこになんらかの夢主にとっての意味があり、その意味付けは1つではないのだが。
「”潜在意識”に働きかけて行動変容を」って、催眠術・サブリミナル効果でも取り上げられるテーマで、古くから取りざたされたテーマ。
でも、直接頭の中をジャックするって発想が、怖くも面白い。
俳優陣の声でその演技を堪能したいのだが、
字幕だけでは物語の設定を理解しきれない。
吹き替え版を見てやっとわかったところもある。
予告の字幕と、本編の字幕と違うところもあるし。
マイルズが「Please」と懇願しているように言っているのに、字幕は命令調だったり。
英語が判ればもっと楽しめるのにとジレンマ。