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人間幾つになったら、御隠居様になるのだろうか?
この映画のヒーロー&ヒロインはとっくに年金受給生活者だ・・・と言う事は、御隠居様?として、のんびりと余生を静かに過ごす予定のはずであった・・・
だがしかし、この2人は、年金のみの収入では生計を満足にたてる事が出来ない、そこで新しく、商売を始めるのだ、それも誰も思い付かない、銀行強盗と言う代物!
或る日、70歳の妻が彼女の只1つの誇りの品であり、全財産として肌身離さず着けていたダイヤモンドイヤリングを滞納していた家賃の代わりに、手放す事になる。
それを傍らで、見ているより他に成す術を持ち合わせていなかった80歳の夫は、妻のこの行動が耐えられず、新しい商売を計画しはじめる。それこそが、銀行強盗事件犯になると言う一風変わった、商売だったのだ。
勿論この映画は、フィクションで、しかも絶対にあり得ない、警察の連続追跡ミスと言う失態の繰り返し、そして逃走する2人とのやり取りを、面白おかしく描いていく一種のロードムービーなのだ。追跡劇なので、警察の、刑事物語と言えなくもないのだが?しかし
こんなタイプのコメディー映画観た事が無い!
普通に、銀行強盗をするギャングの話だとそれ程、観ていて私は感情移入する事が無いのだ、主役が悪人であると解った時点でその映画に対する興味が半減するのが私の常であるがしかし、この映画に限っては、80歳と70歳の老夫妻が強盗犯になる事と、警察がいつも取り逃がすと言う、有り得ないコメディ仕立てに出来ていて、バカバカしいを通り越して、ほのぼのとして、この2人がとってもチャーミングなキャラクターで憎めないのだ。本気で2人を憎む人間が現れない設定も良いのだ!次は何をどうするのかとスリルを感じるのだ!完全にヒロイン同様に、ヒーローに引きずり回されながら楽しむ事が出来た。
年寄りが年金収入の受給だけでは、たとえ年老いた2人だけの慎ましい生活すらままならないと言う現実を描いているのだから、本来は、その重い内容のシリアスな社会派映画になる所を、本作は痛烈な社会批判の現実を全く有り得ない様なコミック漫画のようなタッチだけで描いているところが、何処か私にはチャップリンの社会風刺映画をも想い起こさせてくれたのだ。
私はこの映画には、只のドタバタ喜劇として終わりに出来ない、良さがあると考えるのだ!
ハンガリー映画と言う我が国では観る事が少ない映画であるが、こんな楽しい映画も有ると知って益々嬉しい気分が満たされていく。世界には、まだまだ観た事もない様な素晴らしい作品が一杯ある事を改めて実感する。映画と言えば、邦画か、それともハリウッド映画かと、2者択一になりがちなところが多い普段の自分の映画選択に、また新しい冒険をさせてくれるきっかけを作ってくれた本作品に心から感謝している!!
映画の出来としては評価の分かれるB級作品の部類になるのかも知れないが、個人的にはこの映画たまらなく好きな映画の1本になった、私の映画人生にも乾杯したい!