「やっぱり人を信じたい」ゾンビランド つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱり人を信じたい
「ゾンビランド」が面白い、とは聞いていたが、まさかこんなに面白いとは!ホラーは超絶苦手なので、全く選択肢に入らないが故の出遅れ感。
ホラーが超絶苦手なのは、臆病だからだ。特に暗闇から急に出てくる系が本当にダメ。幸せな時間を過ごしたいのに、何でわざわざ恐怖に震えなきゃならないのか。
そんな私だから、コロンバスの「ゾンビランドサバイバル術」は心の底から共感した。執拗に確認し、気を緩めず、人をむやみに信用せず、同情もせず、危険は侵さない。
人づきあいが苦手で神経質だから、ゾンビランドで生き残る事が出来た、とコロンバスは言う。周りが人間でも、ゾンビになっても、自分にとってはあまり変わらないのだと。1人の方が気楽で良い、と。
両親の住むオハイオを目指す途中、屈強なタラハシーと出会うが、その邂逅も面白い。
二人とも全くお互いを信用しない、一触即発の空気。からのヒッチハイク。やはり、ゾンビランドで生き残るためには、むやみに人を信じるようではいけないのだなぁ、としみじみ思う。
人を信じず、1人の方が気楽。名前は聞かない。
なのに、何故か人と関わりたいと思う。
コロンバスのナレーションでは、初対面のウィチタを「親に紹介したい子」と表現している。
「可愛い子」ではなく「イイ女」とかでもなく、「親に紹介したい」というのが興味深い。
付き合い始めて、親しくなって、お互いの事を深く知ろうとして、その先にある生活を想像する。そこまで意識しないと「親に紹介したい」はなかなか出てこない。まあ、単にコロンバスが恋愛経験ゼロなせいかもしれないが。
例え世界がゾンビだらけでも、人は人を想う。慕い、寄り添い、慰め、励まし、勇気づけようとする。ゾンビでコメディだけど、それよりもっとヒューマンドラマだった。
全編を通してコロンバスのナレーションにより、コロンバスの一人称的に物語が進むのも楽しい。何といってもコロンバス役のジェシー・アイゼンバーグのヘタレさが最高なのだ!
ヘタレ青年を演じたら、奴の右に出る者はいないだろうな。
ゾンビとの凄絶な戦いなんて望んでない。最悪の世界でも、ちょっと気のきいたことがあれば、それを楽しめばイイのさ。
そして、それすらも失ってしまいそうなら、その時始めて戦えば良い。
観た後こんなに爽やかな気分になれるゾンビ映画はなかなか無い。