「ただの救出劇でもいくつかのメッセージが詰まってる」96時間 yum1さんの映画レビュー(感想・評価)
ただの救出劇でもいくつかのメッセージが詰まってる
人身売買の実態や若い旅行者を誘拐する手口などが生々しく描かれており、メッセージ性があった。
旅行や働きに来た健全な人間を誘拐する姑息さ、麻薬で抵抗できなくさせて、競売にかける様、そして麻薬漬けで売春をする悲惨な姿。
見ていて怒りが込み上げてくる。
たまたま誘拐した若い旅行者の父親が、元諜報員の凄腕で、対組織犯罪の第一線で活躍していたというのが人身売買組織の運の尽き。
アメリカから犯罪組織の温床フランスへ乗り込み、あらゆる断片的な情報を頼りに、娘の居場所を突き止めて行く様は実に見事。
ほとんどゼロに近い情報源を頼りに、娘のさらわれた場所、さらった組織を突き止める。
古い縁の諜報員の知り合いが何人か出て来るが、やはり縁は大切だ。
路上売春現場の情報を得て、さらに組織の売春婦収容所、下位組織のアジト、裏切り者の旧友、上流階級のみが入れる売春競売場、組織の幹部にまで次々とその場で得た情報をもとに、娘へ近づいて行く。
それぞれの場所で登場する、人身売買に手を貸すことを厭わないくせに娘を奪われたことに無駄に同情するクズたち、チンピラから幹部まで、娘を誘拐した輩には憎しみの鉄槌が下される。
倫理的にアウトなことをやらかしてる犯罪組織の人間を殴る、殺す、拷問するというのは実に痛快である。
最後に出て来る娘を落札した処女厨の変態ジジイを交渉の余地なくあっけなく撃ち殺すところなんか特に素晴らしい。
娘の友人など、娘以外の人間が全員助けることができなかったのは少し悲しいが、現実的ではある。
そもそも無知=バカな友人が安直にとった行動が誘拐売春を招いたという説もあり、貞操観の大切さを実感できただろう。ヤリマンビ○チは痛い目を見る可能性が高まるのだ。
ただどれだけバカなビ○チでも人身売買に巻き込まれたら被害者であり、ましてや貞操観もしっかりしているのに犯罪に巻き込まれた人間もいる。
人身売買は極悪であることに変わりはない。
最後に娘が父親の仕事で偶然得たコネで歌手の道に踏み出していくところなどからも、「縁って大切だね」と思わせられた。
私はすべての誘拐、強○殺人、人身売買に対して怒りを覚える。この映画が少しでもそのアンチテーゼとしての役割を果たしてくれたらいいと思う。
いつか人身売買がなくなる世の中が来てほしい。若い人間単身での渡航が怖い世の中というのも困ったものである。
この話はシンプルな「父親の力ずくの娘誘拐救出劇」である。現実では不可能なありえないような救出劇だが痛快。でもそのシンプルストーリーの中にもたくさんのメッセージが詰まっており、そこを評価したい。
メキシコの誘拐問題を題材にした「マイ・ボディーガード」という映画に感情の推移は似ている気がしたが、実の娘を奪われた憎しみというのがリアルで尚よかった。