「おまえが消えても…」チェイサー(2008) マージョさんの映画レビュー(感想・評価)
おまえが消えても…
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インタビューで監督は、母国で起きた大量殺人事件に感じた‘なぜ’という自身の怒りを表現したかったと語る。
観賞後、この‘なぜ’は 犯人に向かってないように私には思えた。
むしろ自問自答。なぜ、これほど犠牲者が積み上がるまで、誰もアイツを止められなかったのか?
日本でも、出会い系や風俗が発端の凶悪犯罪は絶えない。必ず語られる 被害者側の自己責任。確かに事実だ。事実だけれども。
殺人鬼は知っていた。「おまえ(被害者)が消えても誰も探さない」自分と同じく、被害者の痛みを感じない社会の無関心が、発覚を遅らせていることを。
対極が、追跡する元刑事の叫びだ。「誰も(女達を)探さなかったのか」「(女は)生きている」
警察を追われ、今はちんけな小悪党。若さも美貌も金もなく、ついでにメタボ体型。事件の間接的な原因であり、関わりの最初は欲得ずく。そんな男だけがやがて被害者の苦痛に共鳴し、いてもたってもいられず迷路の街を駆け抜ける。
汗まみれ傷だらけの追撃の結末は、あまりに苦い。けれど、こうでなければならなかったろう。間近の怪物の存在に気づけなかった、そのあがないは、単純では済まないはずだから。
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