裏窓のレビュー・感想・評価
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主人公の目線は、観客のそれと絶妙に一致する
一言で表すと「裏窓から他人の暮らしを覗き見る」本作は、そう聞いただけでかなりアブノーマルで悪趣味な印象を受ける。が、何度か鑑賞していると、実はこれ、脚を怪我した主人公の目線は劇場観客のそれと完璧に一致し、向かい側に望むアパートはさながら劇場の舞台か、あるいは映画館のスクリーンのようにすら見えてくる。つまり、自分の気分や趣味嗜好に合わせて視点を自由に移動できる点も含めて、映画『裏窓』は、「映画鑑賞」という行為をメタ視点で見つめたような作品なのだ。
だが、いつまでも「こちら側」と「あちら側」と分離して守られているわけにはいかない。主人公はいつしか意を決して境界線を飛び出し、あちら側へとダイブ。客席から舞台やスクリーンへ飛び出していく(ような)常識破りの展開こそ、本作の最もダイナミックなところだと思うし、ヒッチコックの優れた発想力の賜物だ。世界をこれほどコンパクトにまとめあげた作品は他にない。
完璧な作品
限られた一室と窓という枠組みで人間心理の多面性を描き切った、映画の傑作だ。
窓という区画がもたらす制約が最大の魅力で、ジェフの視線を通じて断片的に見える隣人たちの生活は、それぞれが独立した人間性を映し出す短編のようだ。この制約があるからこそ、観客はジェフと同じく「つなぎ合わせる」行為に没入し、覗き見のスリルに引き込まれる。
特に秀逸なのは、殺人事件そのものが直接写されない点だ。
間接証拠のみで観客の想像を掻き立て、緊張感を極限まで高める。この「見えないこと」が、窓という制約と完璧に噛み合い、覗き見という行為の倫理的ジレンマを深化させる。
現代のSNS時代にも通じるテーマ性が際立つ。他人の人生を「一つの側面」だけで判断する危険性はもちろん、「見られている側面こそが評価される現実」という逆説も内包している。窓に映る隣人だけでなく、登場人物それぞれの「見える世界」もまた一区画に過ぎず、誰も全体像を把握できない多視点構造が深い。
最後のエンディングも完璧で、住民たちが日常に戻り、ジェフの寝顔、リサの顔のクローズアップが流れるカットチェンジは圧巻だ。サスペンスの緊張が解け、「覗き見は所詮一過性の娯楽」という醒めた余韻を残しつつ、リサの視線が雑誌に落ちる瞬間で「また覗きが始まる」暗示が残る。この日常回帰と人間性の永遠性を見事に重ね合わせた締めくくりが、作品の哲学を象徴している。
写し方としても、カメラがジェフの視線をトレースする長回し、窓ガラス反射、望遠レンズの歪み効果が作品に嚙み合っていてとても美しい。
欠点らしい欠点が見当たらない、映画史に燦然と輝く不朽の名作だ。
「ヒッチコック」は現代にも生きる
ヒッチコックと言えば「サイコのシャワーシーン」や「北北西に進路を取れ」のシンバル、室外からワンカットで室内に入るシーンなど、現代の手法にも通じ、実際時折オマージュと見える作品にも出会うところが映画史に残る作品を提示してくれた。
学生の時に二番館で見た「裏窓」を改めて見て、色んな記憶が蘇った。
今でも使われる、会話の中で登場人物やその背景、仕事を説明させる手法。世界を飛び回る写真家のジェフ、上流階級でモデルも兼ねる美しいリザなど無理なく入っていける。(とは言え、美しいリザに対し、子供のように夢を追いかけるジェフの言い争いは、よくリザが見切りをつけないと思う)
さて、登場するのは①ベランダで寝る老夫婦(子犬がいる)、②セクシーなダンサー、③売れない作曲家、④塑像が趣味の大家、⑤ミスロンリー、⑥新婚らしい新入居カップル、⑦仕事を辞めた旦那とその妻、そして⑧病気の妻を介護するセールスマン。それぞれには観察に足る魅力がある。これらをワンショットで見せるシーンは秀逸。
それぞれに起きる事件①子犬が花壇を掘り返す、②パトロンを取っかえ引っ変え、③ピアノで弾くメロディがそのまま劇伴になっている、④お節介を焼いたりするが人の良さそうな大家、⑤ひとりで2人分のディナー、男漁りをするが相手がその気になると×。⑥新婚だからか男は妻に何度も迫られて疲弊気味(笑)、⑦「どうして勝手に仕事辞めたのよ!」❽夫婦仲が良くないが、セールスマンは食事を用意したり、妻の悪口に耐えているが、ある夜一瞬の悲鳴が聞こえる。
こういうのが、互いに関連なく「スタート」一声で同時にそれぞれの生活を動いている。テレビ慣れしている現代人には珍しい手法だ。
❽の場面に遭遇したジェフは、その後のセールスマンの行動に不信を抱くが・・・。
足を骨折していて動けないジェフは、それらのシーンを見る(覗く)しかない。ついにリザとエルザ(ジェフ付きの看護師)によって、具体的な行動に出る。この当たりの緊迫感は、ここまでジェフと一体になっていた観客はハラハラしながら見ることになるんだねー。
しかしながら、このドラマの核は、犯人の行動を解き明かすことでも捕まえることでもない。裏窓というスクリーンから見える多重構造のドラマであると思う。まるでウエスト・サイド物語のtonightのシーンのようだった。
だからこそ、本当は犯人は何をしたのかということは軽く扱われているのかと思った。
犯罪は気配だけという実にヒッチコックらしい洒落た味わいである
【現代にも通じる、エッジの効いたサスペンス】
グレイス ケリーの美しさよ!
名作なんだろうとは思うけど…
やっぱり名作
NHKの4Kシネマを録画視聴。
若かりし頃、ヒッチコック映画が何日か連続でテレビ放送されていた時があって、毎晩妻と一緒に楽しみに観ていた頃を思い出した。
当時はちっちゃいテレビで観たのだが、今は大きな画面で、綺麗な色で観られることに感謝。
前半はウトウトしてしまいそうになるけれど、中盤から後半にかけての急加速はやっぱりお見事。
ヒッチコックらしく、直接的な表現は避けて、狭めた視界や、目に見えない出来事や気配を音で表すなどで観客の感情を手玉にとってくる。
特筆は、ソーワルドの眼。正直、怖かった。
直接、ストーリーには影響しないと言えばしないのだが、周囲の人々の生活がバラエティ豊かに、かつ時間の経過と共に変化していく様子が楽しい。そして、何よりもそれぞれの着地点がオシャレ。
シチュエーション・サスペンスの金字塔
名作‥か?
「主人公が部屋を一歩も出ない映画」というのがコマーシャルメッセージですが、それは別にどうということはなかった。足を骨折して動けないから、向かいのアパートをずっと見ているわけですが、向かいとの距離は20mくらいでしょうか、こんなに見てたらたちまちクレームきますよ。その向かいの住人たちがまるでお芝居のようにいっせいに動く。もしかしたら皆で示し合わせて主人公ジェフに見せてるんじゃないか、と思ってしまう。そのくらいわざとらしい。
巨大な窓に誰もカーテンを使わない。1954年当時のアメリカ人はこんなにあけっぴろげだったのか?
向かいの住人は一日の生活をほとんど窓際で行っている。そんなばかな。よほど奥行きのないアパートなんでしょうか。ジェフが殺人犯と疑った男もでっかい包丁やノコギリを窓際で、どうぞ見てくださいと言わんばかりに扱う。
ラスト、結局ジェフの想像は当たってたようですが、(わかりづらくて字幕を2回見直したけど)状況がよく理解できなかった。花壇には何か埋まってたの?ほんとにわずかなセリフで無理やり決着つけちゃった。
主人公が部屋から出ない!
ストーリーに難があります
ヒッチの人気投票ではめまいと並んで常に上位にランクされる名作、というのが一般的な評価です。
確かに、住人毎のショートストーリーの絡め方、単一視点によるスリラーの圧倒的な醸成などヒッチのヒッチらしさが炸裂した傑作と言えます。
ただし、ストーリーに致命的な欠陥があります。要は本当に彼は犯人だったのか?というそもそもの疑問です。あんなことされたら犯人じゃなくたって逆上するんじゃない?中盤での刑事の捜査経過の説明は十分に説得力あったし、ってことです。
ヒッチは他の作品の説明で、何で逃げないの?何で警察に知らせないの?そんなの変じゃない?的な素朴な疑いを観客に持たせないように映像技術でたたみかけることが大事、と語っていますが、この作品もその好例です。
(参考)
ケリー先輩は波止場か裏窓かの選択を迫られてこっちを選んだそうです。
冒頭の主人公紹介のシーンは、セリフなしで登場人物のプロフィールを説明するモンタージュ理論の典型だそうです。
ヒッチは必要な時以外は説明的な俯瞰ショットは使用しない、今回は犬のシーン以外でアパートの全景は映さなかったそうです。
登場人物の属性を利用してスリラーを作るように心掛けている、今回はカメラマンの主人公なのでフラッシュや望遠レンズを重要な小道具として使用したそうです。
安定した面白さ
ヒッチコックの裏窓を久々に視聴。相変わらず、ヒッチコック映画に出演するのは美男美女。ジェームズ・スチュアートとグレイス・ケリーの二人を見ているだけで、ゴージャスな気持ちになる。ジェフがツンデレで、リザみたいな美女に言い寄られるから羨ましい身分だなって。裏窓から対面するアパートの住人を覗くっていったって、普通は、あんなに開けっぴろげでないから。それぞれの部屋の住人のストーリーが見えるようだから、更に覗きたくなる心理を上手く利用していた。
犯人は、状況証拠から限りなく黒ってわかっているけれど、肝心の主人公のジェフが身動きが取れないのが利いている。女性二人に花壇を掘り起こさせ、リザは相手の部屋に忍び込む。覗いているのがばれて、身動きを取れない状態で、相手をどう撃退するかのあたり、もっといい方法がなかったのかなとも思った。フラッシュ連発だと、目をつぶられたらおしまい。松葉づえとかナイフとか、トイレに籠るとかの方がと思いつつ、ハラハラして見た。
裏窓から見える一つの視点で、全編を撮影しているのが、卓越した脚本とカメラワークだなあと思った。また、テクニカラーも今とは異なる明るい発色が良い色調で、このような映画ではよい効果上げている。
主人公が動かないサスペンス
ヒッチコック劇場を観ていた世代です(もちろん、再放送ですよ)が、監督の名前″だけ″で客を呼べるって、すごくないですか?
・怪我をして自宅アパートで療養中の主人公、
・主人公とアンバランスなくらい可憐な彼女、
・主人公の友人である刑事
を軸に物語が進んでいく。
自由に動けない主人公は、暇にあかせて一日中ずっと双眼鏡で向かいのアパート住人たちを観察している。
主人公が動けない、というシチュエーションが鍵で、主人公が司令塔、彼女や友人が手足となって推理ゲームが展開される。
ラストは、主人公が「動けない」ことが伏線となってハラハラドキドキが訪れる。
ヒッチコック作品の中でも大好きな一本。
他のレビューにもあるが、グレース・ケリーの可憐さが好奇心旺盛で危なっかしいヒロインのキャラ設定と相性抜群で、後半部分まで来ると主人公はどうでもよくなるくらい(笑)
アメリカのテレビドラマでリメイクされたようだが、誰か邦画で製作してくれないかな?
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