裏窓のレビュー・感想・評価
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主人公の目線は、観客のそれと絶妙に一致する
一言で表すと「裏窓から他人の暮らしを覗き見る」本作は、そう聞いただけでかなりアブノーマルで悪趣味な印象を受ける。が、何度か鑑賞していると、実はこれ、脚を怪我した主人公の目線は劇場観客のそれと完璧に一致し、向かい側に望むアパートはさながら劇場の舞台か、あるいは映画館のスクリーンのようにすら見えてくる。つまり、自分の気分や趣味嗜好に合わせて視点を自由に移動できる点も含めて、映画『裏窓』は、「映画鑑賞」という行為をメタ視点で見つめたような作品なのだ。 だが、いつまでも「こちら側」と「あちら側」と分離して守られているわけにはいかない。主人公はいつしか意を決して境界線を飛び出し、あちら側へとダイブ。客席から舞台やスクリーンへ飛び出していく(ような)常識破りの展開こそ、本作の最もダイナミックなところだと思うし、ヒッチコックの優れた発想力の賜物だ。世界をこれほどコンパクトにまとめあげた作品は他にない。
名作‥か?
「主人公が部屋を一歩も出ない映画」というのがコマーシャルメッセージですが、それは別にどうということはなかった。足を骨折して動けないから、向かいのアパートをずっと見ているわけですが、向かいとの距離は20mくらいでしょうか、こんなに見てたらたちまちクレームきますよ。その向かいの住人たちがまるでお芝居のようにいっせいに動く。もしかしたら皆で示し合わせて主人公ジェフに見せてるんじゃないか、と思ってしまう。そのくらいわざとらしい。
巨大な窓に誰もカーテンを使わない。1954年当時のアメリカ人はこんなにあけっぴろげだったのか?
向かいの住人は一日の生活をほとんど窓際で行っている。そんなばかな。よほど奥行きのないアパートなんでしょうか。ジェフが殺人犯と疑った男もでっかい包丁やノコギリを窓際で、どうぞ見てくださいと言わんばかりに扱う。
ラスト、結局ジェフの想像は当たってたようですが、(わかりづらくて字幕を2回見直したけど)状況がよく理解できなかった。花壇には何か埋まってたの?ほんとにわずかなセリフで無理やり決着つけちゃった。
主人公が部屋から出ない!
本映画は作られてから70年経過していますが、現在でも面白く見られる傑作です。 同じころに日本で作られた映画にゴジラ一作目があります。 本映画の一番の見どころは「主人公が部屋から出ない」ということに尽きるでしょう。 本作を元にして現代的の映画を作ればいくらでも面白い作品は作れるでしょう。 古典にして新しい一本。 ブラインドを閉めるような終わり方もシャレが効いていて素敵です。
ストーリーに難があります
ヒッチの人気投票ではめまいと並んで常に上位にランクされる名作、というのが一般的な評価です。 確かに、住人毎のショートストーリーの絡め方、単一視点によるスリラーの圧倒的な醸成などヒッチのヒッチらしさが炸裂した傑作と言えます。 ただし、ストーリーに致命的な欠陥があります。要は本当に彼は犯人だったのか?というそもそもの疑問です。あんなことされたら犯人じゃなくたって逆上するんじゃない?中盤での刑事の捜査経過の説明は十分に説得力あったし、ってことです。 ヒッチは他の作品の説明で、何で逃げないの?何で警察に知らせないの?そんなの変じゃない?的な素朴な疑いを観客に持たせないように映像技術でたたみかけることが大事、と語っていますが、この作品もその好例です。 (参考) ケリー先輩は波止場か裏窓かの選択を迫られてこっちを選んだそうです。 冒頭の主人公紹介のシーンは、セリフなしで登場人物のプロフィールを説明するモンタージュ理論の典型だそうです。 ヒッチは必要な時以外は説明的な俯瞰ショットは使用しない、今回は犬のシーン以外でアパートの全景は映さなかったそうです。 登場人物の属性を利用してスリラーを作るように心掛けている、今回はカメラマンの主人公なのでフラッシュや望遠レンズを重要な小道具として使用したそうです。
安定した面白さ
ヒッチコックの裏窓を久々に視聴。相変わらず、ヒッチコック映画に出演するのは美男美女。ジェームズ・スチュアートとグレイス・ケリーの二人を見ているだけで、ゴージャスな気持ちになる。ジェフがツンデレで、リザみたいな美女に言い寄られるから羨ましい身分だなって。裏窓から対面するアパートの住人を覗くっていったって、普通は、あんなに開けっぴろげでないから。それぞれの部屋の住人のストーリーが見えるようだから、更に覗きたくなる心理を上手く利用していた。 犯人は、状況証拠から限りなく黒ってわかっているけれど、肝心の主人公のジェフが身動きが取れないのが利いている。女性二人に花壇を掘り起こさせ、リザは相手の部屋に忍び込む。覗いているのがばれて、身動きを取れない状態で、相手をどう撃退するかのあたり、もっといい方法がなかったのかなとも思った。フラッシュ連発だと、目をつぶられたらおしまい。松葉づえとかナイフとか、トイレに籠るとかの方がと思いつつ、ハラハラして見た。 裏窓から見える一つの視点で、全編を撮影しているのが、卓越した脚本とカメラワークだなあと思った。また、テクニカラーも今とは異なる明るい発色が良い色調で、このような映画ではよい効果上げている。
主人公が動かないサスペンス
ヒッチコック劇場を観ていた世代です(もちろん、再放送ですよ)が、監督の名前″だけ″で客を呼べるって、すごくないですか? ・怪我をして自宅アパートで療養中の主人公、 ・主人公とアンバランスなくらい可憐な彼女、 ・主人公の友人である刑事 を軸に物語が進んでいく。 自由に動けない主人公は、暇にあかせて一日中ずっと双眼鏡で向かいのアパート住人たちを観察している。 主人公が動けない、というシチュエーションが鍵で、主人公が司令塔、彼女や友人が手足となって推理ゲームが展開される。 ラストは、主人公が「動けない」ことが伏線となってハラハラドキドキが訪れる。 ヒッチコック作品の中でも大好きな一本。 他のレビューにもあるが、グレース・ケリーの可憐さが好奇心旺盛で危なっかしいヒロインのキャラ設定と相性抜群で、後半部分まで来ると主人公はどうでもよくなるくらい(笑) アメリカのテレビドラマでリメイクされたようだが、誰か邦画で製作してくれないかな?
こんな映画は二度と作れないでしょう‼️
この作品はズバリ "のぞき" の映画です‼️足を骨折して車椅子から動けないカメラマンのジェフが、向かいのアパートを眺めるうちに犯罪の匂いを嗅ぎ付け、ある男が病弱で寝たきりの妻を殺したらしいと推測する・・・この作品は数あるヒッチコック作品の中でも完璧に計算されつくした作品ですよね‼️まず主人公が覗き見するご近所さん達の人間模様‼️いつも誰かしらに言い寄られている若い女性ダンサー、ペットの犬に入れあげる初老の夫婦、売れない作曲家の苦吟、恋人のいない淋しさを2人分のディナーを作ることでまぎらわせるミス・ロンリーハート、窓を閉めっぱなしの新婚夫婦などなど。ジェフの視線の動きに沿ってカメラが動き、これらのドラマが一望できる‼️ヒッチコック監督の「アクション!!」の声で、演技をカメラの動きに合わせてスタートさせなければ撮る事が出来ないわけで、70年前の製作であることを考えるとホントにスゴいですよ‼️またジェフがカメラで覗く光景が映画のスクリーンに映る光景なわけで、ジェフと同じ光景を我々観客も見ているというのも、この作品の臨場感が素晴らしい所以だと思います‼️グレース・ケリー扮する恋人のリサが容疑者の家に忍び込んでいる間に当人が帰ってきて、ジェフがそれをカメラで見ていながら知らせられないシーン、犯人が身体の自由が利かないジェフを襲うシーンなど、鳥肌が立つ緊迫感ですよね‼️特に真っ暗な部屋にタバコの火だけがポツンと見え、犯人が目覚めていることを示すショットは、背筋に冷たいものが走ります‼️ジェームズ・スチュアートはビリー・ワイルダー監督の「翼よ!あれが巴里の灯だ」もそうですが、上半身だけの演技が上手すぎる‼️グレース・ケリーは、初登場の大写しのキスシーンにドキッとさせられ忘れられません‼️でもおじさんカメラマンに何故こんな美しい恋人がいるのか、腑に落ちん‼️そしてグレース・ケリーと並んで魅力的なのが看護婦ステラ役のセルマ・リッターで、この作品のユーモラスな味わいは彼女の貢献度が大きいですね‼️初見当時、高校一年生だった私にのぞきの楽しさとスリルを教えてくれた作品であり、人間の覗き見心理をうまく利用したサスペンスドラマであり、のぞきにはお仕置きがあるぞと誰もが思い知らされる傑作です‼️世の中のすべてののぞき魔、盗撮犯に見せなければなりません‼️
サイコーのエンディング
サイコーなのはエンディングですね(笑)。骨折した足のギブスが取れるまで残り1週間から始まるこの密室劇が、あんな風に終わるなんて(汗;)。スリラー巨匠のユーモアセンスにグッときました。部屋から一歩も出られないのだから普通なら退屈なだけなのに、覗き見でこんなにも色とりどりの世相をみて楽しめるとは!しかも、絶世の美女(グレース・ケリー)から猛烈なアプローチ!ジェームズ・スチュアートは大好きな俳優さんですが、羨ましい限りです。音楽もよかったのですが、なんだか古き良き時代の「あそび」を感じてしまいました。
バックに流れる『モナ・リザ』
『私が偵察機をおずおず操縦していたら、君が写真で勲章を貰って、今日があり得たのか?全てを忘れて、戦争の良き日のボラ話でも聞こう』『あら、事件は終わりなの?』『初めから事件など無かったんだ』
さて、その背後に彼が撮った写真が飾ってある。その中に日本人なら直ぐに反応する写真が飾られている。
そして、バックに流れる『モナ・リザ』の曲。彼女の名は『リザ』
さて、ここに隠されし暗号は?
ドイル氏は話を作る人ですからね。
何故ドイル?ワトソンとかの方が。
若しくは、裏の窓なのだから『モルグ街の殺人』を連想して『エドガー・アラン・ポー』とか。
ガキの頃、『ウィリアム・アイリッシュ』のファンだった。『恐怖の黒いカーテン』だ!
アメリカは1958年迄に原爆実験を23回に渡って行っていた。一般的なリベラリストなら、それを反対する流れだったはずだ。勿論、僕は生まれていないので知らない。
カメオ分かった!
ウイットに富んだ会話。ヒッチ・コックの演出・映像に満足する。
足を怪我したプロカメラマン。 動けない彼は望遠レンズで窓の外を見る。 映像も観客も部屋の中、彼と同じ状態で進んでゆく。 窓の外の様々な人の生活、風景、その世界。 そこにある喜びや悲しみ、そして憎しみ。 彼が「ミス・ロンリー」と呼んでいた女性がいる。 (ひとり暮らしの孤独な女性) 彼女のパフォーマンスは滑稽で悲劇的、 同時に心痛むものがあった。しかし、、、 動けない彼にはどうすることもできない。 そんな時、窓の向こうの出来事に疑念を抱く。 彼は部屋から一歩も出られない展開。 協力するのは彼のフィアンセ(グレース・ケリー) 彼らが見た窓の外の事件は、真実は、、、。 窓の外の距離のあった人物の接近にドキドキ!! 「なんという効果のある演出なんだ」と驚いた。 しかしグレース・ケリーは素敵すぎて反則に近い。 ※ 何度も観たこの映画、ヒッチ・コックという監督は なんて巧みで面白い映画を作る人なんだ、と感心する。 ※
【”裏窓から見えた風景、そして起こった疑念・・。”今までにない撮影技法と、設定が斬新な作品。リザを演じたグレイス・ケリーの美しさが際立つ作品でもある】
■事故で足を怪我したカメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュワート)は、車椅子に座ったままの退屈な毎日を送っていた。 ある日、望遠鏡で向かいの住人を眺めていた彼は、セールスマンの口うるさい妻が姿を消したことに気づく。 夫の動向を観察したジェフは殺人事件だと確信して…。 だが、恋人のリザ(グレイス・ケリー)はやり過ぎだと言うが・・。 ◆感想 ・作品着想が秀逸である。 眼が見える”安楽椅子探偵”のようなジェフの姿。 ー やや、個人情報侵害ではないかとも思ったが・・。- ・彼が推測した向かいのアパートに住む男の、妻殺しの過程が淡々と暴かれている過程が面白い。 ・個人的な意見だが、リザを演じたグレイス・ケリーの美しさが際立つ作品である。 ー モナコ国王が求愛したのも納得である。あのような気品ある女優さんって、今いるのかな・・。”あ、居た!クリスティン・スチュワートだ!”ー <面白き、安楽椅子覗き見探偵の、一品である。倫理的にはどうかなあ・・、と思ったけれど、ジェフの直感は当たっていたんだね!>
骨折で家での療養中の退屈を、 自宅から見える近所の方々の生活を覗き...
骨折で家での療養中の退屈を、 自宅から見える近所の方々の生活を覗き見しながら、 殺人事件を解決していく。 コミカルな要素も入れつつ、 覗きという背徳感もありながら、 他人の生活にどんどん入り込んでいく主人公と、 恋人と、看護師?さんの姿面白かった。 覗きという行為はいけない行為だが、 覗いてみたいという人間心理わかる気がします f(^ ^;) 過去には舞台化したこともあるみたいだね、 舞台も見てみたい。
覗き・・・
後に、モナコ公妃となられた
「クール・ビューティー」
グレース・ケリーがヒロイン
美しいです。
『裏窓』(Rear Window)
(1954年)
この作品も
ジェームズ・ステュアート
の登場です。
主人公が足を骨折して、車椅子生活している
部屋の窓から見える
アパート住人の生活風景を
覗き見るという
いけない感じの設定。
そこから、
ある夫婦喧嘩を目撃し
その妻が姿を消すのですが
よからぬ事になっているのではないかと
推理して、
その証拠を得る行動に出るという
サスペンス。
ヒッチコック監督といえば
自分の作品に
カメオ出演するのが好きで
それを、発見する
お楽しみもありますね。
(´▽`)
あちこちで
バレていますが
ここでは、
作曲家の部屋に登場して
ピアノの横で
時計のネジを巻いている男。
振り返るシーンも面白いですよ。
どの作品も
芸術性と娯楽性ある作品
細かいカットの積み重ねの
心理的効果で
観客を驚かせてくれるのでした。
グレース・ケリーを愛でるヒッチコックと、覗きを罪なく楽しむ観客を代行する良識人スチュアート
アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画の粋を代表する傑作。監督お気に入りの女優グレース・ケリーが「ダイヤルMを廻せ!」に引き続き出演し、そのエレガントで清楚な女性美を極めた唯一無二の女優として映像に遺されている。正にレジェンド女優のレガシー名画。ヒッチコック監督のサスペンス演出は、何時にも増して観客を楽しませる名匠の技を終始弛みなく披露している。その上で、この映画はまた、グレース・ケリーをヒッチコック監督個人が愛でるために作られた映画でもあるだろう。ジェームズ・スチュアート演じるカメラマンL・B・ジェフリーズは、仕事中の事故で左足複雑骨折の重傷を負い7週間のギプスを余儀なくされている。この車椅子生活の主人公のアパートには、彼を熱烈に愛し結婚を迫るリザ・フリーモントというファッション関係の仕事に就く美女が毎日訪れ、三日連続で熱いキスを交わすのだ。何と羨ましい男性の設定であろう。演技指導を終えた撮影中の映画監督は、ほぼディレクターチェアに座っている。ヒッチコック監督が主人公に感情移入しやすい設定ではないだろうか。それに加えスチュアートへの演技指導もそこそこに、衣装チェックから部屋の移動までの細かい指示に集中してグレース・ケリーに関わられる。映画監督の職業を最大限に利用したヒッチコック流映画作りの楽しみ方を想像すると、更にこの傑作が面白く感じられるのではないだろうか。最初の水曜夜の白と黒のドレス、木曜のシックな紺のドレス、金曜の淡いグリーンのツーピース姿と薄いピンク色のナイトウエア、そして事件解決土曜日の花柄のワンピースにラストカットの赤いブラウスと、日替わりファッション。真珠のネックレスやイヤリングがまた似合う高貴な佇まい。こんなに美しい装いのグレース・ケリーを映画の間だけでも独り占めで満喫できるのは、偏にヒッチコック監督のグレース・ケリー愛があってこそである。
しかし、そんな個人的趣味に終わらずに、娯楽としてのサスペンス映画を完成させたヒッチコック監督の演出力は見事につきます。本編のサスペンス演出で大きな特徴は、映画が撮影カメラを通した覗きであることを改めて認識させることにある。主人公が中庭を挟んで覗くアパートの窓の其々が一つのスクリーンとなって、そこに生活する人たちの日常を見せてくれる。主人公のカメラマンの設定から望遠レンズが活躍するところがミソ。舞台がマンハッタンのグリニッジヴィレッジで芸術家が多く、売れない作曲家、暑さのためベランダで寝る愛犬夫婦、ミスグラマーのバレリーナ、仲の悪そうな夫婦、熱々の新婚さん、独身婦人のミス・ロンリーハート、そして空腹をデザインする前衛芸術家の婦人と三者三様の人間模様。他人には知られたくない秘密をみんな持っている。あらゆる映画の面白さの基本が、この他人の秘密を知る興味や関心の高さに起因する。映画は刑法上唯一許された覗きといってもいい。劇中では当然のようにリザが、近所を眺めるだけでなく双眼鏡まで持ち出し妄想するジェフリーズを一度咎めるシーンがある。しかし観客はスチュアート演じるジェフリーズの視点と同化して覗きにはまり、人間を観察し殺人事件を疑い推理し、見事に事件を解決するが、襲われる恐怖も同時体験するのだ。
サスペンス演出で冴えた技が一際光るのが、犯人の部屋に忍び込んだリザを心配しながら下に住むミス・ロンリーハートの自殺未遂を危ぶむジェフリーズと看護師ステラの場面です。この一寸した油断の間が、次に来るリザの危機をより緊張感溢れたものにしている。孤独なミス・ロンリーハートと人の心を癒す音楽家の隣人の設定が生かされた脚本の構成力も凄い。リザが隠れたと同時に犯人がドアを開けて入って来るのを、開放された窓のガラスに反射させて見せる演出の巧みさも流石だ。この脚本と演出が同レベルでストーリーを語り、最後のクライマックスの後のオチ迄完璧である。それは先ず、リザが犯人の玄関ドアの下に手紙を忍ばせてジェフリーズのアパートに興奮気味に戻った時の彼の嬉しそうな顔のアップショットを入れていること。それまで報道カメラマンの妻として世界中を連れて行くことに負い目を感じ、彼女に相応しい紳士との結婚を望んでいたジェフリーズが、ここで漸くリズの行動力と度胸を見直す。彼女なら大丈夫かも知れないと思い始めた分岐点になっている。ラスト、そのリザと真摯に向き合わず、他人のプライバシーを覗くのに夢中になった罰として、右足も骨折してしまったジェフリーズ。今度の7週間は、あなたの目の前にいるリザ・フリーモントを良く覗きなさいと言っている。脚本家ジョン・マイケル・ヘイズの洒落た恋愛映画の側面もユーモアに溢れている。
主演のジェームズ・スチュアートは動きが制限された窮屈な車椅子の演技だが、彼独自の善良さが主人公の覗き趣味の嫌らしさを打ち消している。その意味で、このジェフリーズ役はスチュアートが最適だったと思う。名優の為せる技を味わえる。「ダイヤルMを廻せ!」も美しさが別格だったグレース・ケリーは25歳。クール・ビューティーに女性の色気を上品に加えて、これ以上の眼福はない。それだけに、キスを迫るアップショットの登場シーンはヒッチコック演出の斬新にして大胆なもの。日本文化を愛したケリーが1982年に来日した折、一般の人たちの歓迎を受けているところをテレビで観て大変驚いた記憶がある。それは日本のご婦人方のどよめきが尋常ではなかったからだ。この時52歳、変わらぬ美しさに自分も後を追ってため息を付いた。惜しくもこの年に交通事故で亡くなってしまったが、最期まで美しかった。
助演のレイモンド・バーは先日の「陽の当たる場所」で再認識したばかりだが、この作品に出演していたことは初見で見逃していた。実年齢より老けたメーキャップの所為もあるだろうと思う。看護師ステラのセルマ・リッターも「三十四丁目の奇蹟」「三人の妻への手紙」「イブの総て」と観ているが覚えていない。現代のように録画で確認したり、携帯で調べたり出来るのは本当に恵まれている。
アパートの一室に限定されたカメラ位置の単調さを払拭したスタジオセット撮影が何より素晴らしい。個々の建物の作りや、窓枠の形、ブラインドの効果的な使用、それに加えてスクリーン左奥に見える道路とカフェの様子が空間の広がり想像させている。それらすべてが丁寧に物語の中に組み込まれているのが、この傑作の所以である。
そして、最後どうしても気になるのは、熱々の新婚さんカップル。窓辺に来て一服する夫に部屋の奥から甘えた声を聴かせる妻のカットが二度程あった。ラスト、仕事を辞めると言い出した夫に一寸切れ気味だった妻だが。この二人、あれから熱々振りはどうなったのか。
これが覗きの弊害という事です。
グレース・ケリー
ジェームズ・ステュアートとおばちゃん出てたのは覚えてたけど、こんな美女出てた⁈って思うぐらいグレース・ケリーが美しい。 内容もうろ覚えで久々に鑑賞。 やっぱりヒッチコック作品は良い。オープニング曲からワクワクさせてくれる。
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