「でも駅あんじゃん 河川敷あんじゃん」SR サイタマノラッパー 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
でも駅あんじゃん 河川敷あんじゃん
ラスト7分の魂のぶつけ合いと唐突な終幕はかなりグッときた。あと市民会館で曲を披露してる時のカメラワーク。カメラはIKKUたちのやぶれかぶれの勇姿を遠巻きに映し出すが、そこには市のお偉方の後頭部も映り込む。しかし顔は見えない。俺たちの声は届くんだろうか、というIKKUたちの不安がカメラワークを通じてうまく表現されていたと思う。
しかしこんなことを言うのもアレなんだけど、埼玉県深谷市をまるで文明社会の末端かのように描くのはどうなんだと思う。私自身が『楢山節考』のごとき山中の寒村生まれなので、登場人物たちがしきりに開陳する「でも埼玉だし…」的なシニシズムにいまいち寄り添えなかった。いや、言うて駅あんじゃん、河川敷あんじゃん、みたいな。
と、このように「(物理的であれ精神的であれ)俺は世界で一番不幸だ!」という地点に登場人物を追い込むことで物語に緩急をつけようとすると、画面の外側にいるそれより「ひどい」人々がワーワーと文句をつけてくる。私だってできればつけたくないけど。だからやるやらもっと徹底的にやる(あるいは登場人物の自我そのものに強力な磁力を纏わせる)必要がある。「埼玉県深谷市」という土地はやっぱりちょっと徹底性に欠けるんじゃないかなというのが正直なところ。
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