ユキとニナのレビュー・感想・評価
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じっとり湿る東アジア
『2/デュオ』のあまりにも演劇的な即興に良くも悪くも気が滅入っていたときに本作を見た。即興部は少なからずあるんだろうけどそこまでスノッブな感じはなく、終盤に挟まれるビデオカメラのパートなどは山本政志のドキュメンタリーのような柔和さとフラットさがあった。
両親が離婚の危機に瀕している娘が超自然的なできごとを契機に大人へと脱皮していくという筋立ては相米慎二『お引越し』を否応なく想起させるし、諏訪もそのあたりはさすがに知ってのことだと思うが、単なる模倣には落ちぶれていない。別にギミックが増えたわけではないし、物語が国家を跨いでいることに政治的意図を込めた感じもない。むしろそういう小手先の技巧からは離れ、ふとした仕草や素朴な風景の美しさを捉えることに集中したのが勝因だと思う。
フランスの森の中から日本の田園へと空間がシームレスに接続される一連のシーンには思わず瞠目した。植生の決定的な差は両国間の物理的な距離を強調し、それゆえに今ユキの身に起きていることが他ならぬ神秘であることを如実に示す。それにしても日本は本当に(精神的にも物理的にも)湿度の高い国なんだなあと改めて思った。タイやフィリピンほどではないにしても、フランスのサラッと乾いた気候とモンタージュされるとその落差は歴然だ。
惜しかった点を挙げるとすれば、終盤、ユキの母が空き家の前で呟いてしまった「この近くの川で小さい頃遊んだ覚えがある」というセリフ。アドリブにしたってこれは酷い。実生活の温度に沿ったそれまでの会話の蓄積を一瞬で振り出しに戻してしまうだけの不自然さがあった。わざわざここまで説明せずともその後の川のシーンで同じようなセリフを呟くのだから尚更必然性に欠ける。ここはリテイクでよかったんじゃないかというのが正直なところだ。
少女時代
なんというか…見終わったあと言葉を失ってしまいました。
とにかく素晴らしいの一言。
少女時代の自分と重なる場面が多く、大分感情移入してしまいました。
特に、愛の妖精からの手紙のシーンでは思わず涙が…。
どちらかというと女性向けですね。
良作です。
ユキのお母さん役の方が美しかったです。
心が、ざわつく
「不完全なふたり」など、フランスを舞台にした作品を積極的に発表している諏訪敦彦監督が、フランスの名優イポリット・ジラルドと共同監督の形で作り上げた、ガーリー映画。
確固とした物語の軸を敢えて作らず、小さな場面の断片を繋ぎ合わせる中で観客の創造力から自由に描かれる世界を表現する手法で演出される本作。諏訪監督のこれまでの作品にも用いられてきた技法であり、彼の過去の作品を追いかけてきた観客ならば、十分に付いていくことが出来る物語である。
しかし・・・どうも、心が落ち着かない。ざわざわするのである。基本的なコンセプトにガーリー映画というテーマのみ設定されており、両親の離婚という避けられない課題を前に困惑しつつも、力強く前に踏み出してく一人の少女の心の旅を描き出しているのだが、本作には決定的に違和感を抱かせる場面が存在する。それが、私をざわざわさせる。
フランスというお国柄も手伝い、登場人物たちは極めて冷静に、議論を幾重にも重ねて問題に対処する姿勢を貫こうとする。それは、大人も、子供も変わらない。だが、その中にあって主人公ユキの母親がとある場面で号泣するカットが長回しで粘着に描かれている。ガーリー映画であるはずの作品に突然挟み込まれた一人の大人の、爆発。これは・・どういうことなんだろう。
後半、二人の少女が迷い込んだ森に繋がっていた日本という世界。これはそのまま、日本人として生きていたユキの母親の記憶に繋がっている。ユキが小民家で興じる遊びも、現代の子供が行うものとはどうしても思えない古風な趣を強く感じさせる。子供の荒ぶる葛藤を見つめようとしながらも、作り手が本当に捕まえようとしていたのは、異国の地で、異国の精神を持ちながら異国人と暮らしてきた母親の心ではなかったのか。
統一されない母親のフランス語と日本語のちゃんぽんも、不安定な母親の立場と揺れを容易に想像させる。極めて意図的に幼い少女の物語を前面に押し出しつつ、一人日本人というスタンスに雁字搦めになっている大人の女性を見つめている複雑な構造は、観客の物語への理解を阻害していく。だから、ひどくざわざわするのだ。
国際結婚で本当に苦しむのは、誰か。子供か。いや、違うだろう。屈折した主張で諏訪監督が描いているのは、結婚という形で母国を捨てる人間への優しい眼差しだ。だからこそ、本作は異国人と生きていこうとする大人の貴方に、観て欲しいと考える。淡い色調のなかで、道徳映画と芸術の境を器用に泳いでいく本作の魅力は、尽きない。可愛いだけでは、ない。
ステキな大人になりそうだね
「不完全なふたり」「パリ・ジュテーム」など親仏監督として知られる諏訪敦彦と、「愛のあとに」「イヴォンヌの香り」などで活躍するフランスの俳優、イポリット・ジラルドが共同監督を務める作品。珍しい組み合わせだと思うが、この2人は諏訪監督が撮った「パリ・ジュデーム」の一編で監督&俳優として出会っている。
子供が家出をするという話はよくあるけど、この映画の秀逸しているところは、子供が大人の都合よい解釈で描かれていないことだと思う。実に子供らしい子供が登場するし、実に子供のような振る舞いをする大人も登場する。でも、大人なんてそんなものだと思う。
マイク・リーのようだけど、諏訪監督は脚本に台詞を書かないそうだ。脚本の仕事を投げていると言われちゃうかもしれないけど、きちんと自分で監督してるんだからいいんじゃないかな? 素人をユキ役に抜擢したのは正解だと思う。
大人のための子どもの物語
諏訪監督の作品というと、例えば『不完全なふたり』や『2 デュオ』などどちらかというと暗く、そして男女の別れや愛憎などを描いている作品が多い。見ていると、どこか苦しくなってくることもあり、このリアリティが諏訪監督映画の魅力でもあると思う。
しかし、今作の『ユキとニナ』はそれとは一風異なる。もちろん、フランス人俳優イポリット・ジラルドと共同監督であるという点も大きく違うのだが、何よりも主人公が"子ども"なのだ。
ストーリーは、日本人とフランス人のハーフの女の子ユキが、ある日突然、両親が離婚することを知り、どうにかしてそれを止めたいと思い、自分勝手な大人達と彼女なりに奮闘し、成長していくというものだ。
テーマとしてこれまで同様、「離婚」「別れ」というものが挙げられるだろう。しかし、『ユキとニナ』は視点が異なる。あくまでも、子供から見た親の離婚であり、それに伴う親友ニナとの別れであり、大好きなフランスとの別れであり、それらが美しい映像と共に綴られる。
爽やかなフランスの森。
深刻な状況であるはずなのに、ユキとニナは持ち前の子供特有の明るさでたくましくも前に進んでいく。
重いテーマであるのに、爽やかでポップでもあり、今までの作品よりもテンポも良い。
また、今作では16ミリを使用していることもあり、全体的に少し映像がぼやけているようにも見え、これも助けてか一種絵画のような雰囲気もある。
またなんといってもユキを演じたノエ・サンピの演技がすごい。これは各メディアなどでも取り上げられていることではあるが、彼女の放つミステリアスな不思議なオーラと可愛さには本当に引きつけられてしまった。
この作品はストーリーで見てはいけない。この映画はむしろ、映像詩に近い。
特にフランスの森の中から日本の森へといつの間にか変わるシーンに鳥肌が立ってしまった。
一見すると何も変わらないようなのだが、外国人も日本に来ると不思議だとか、うるさいとかで耳に残ると言う、あの日本でしか聞けないセミ独特の鳴き声が聞こえてきた瞬間、「あぁここは日本なのだ」と五感から情報が伝わる・・・これこそ、まさに映画の醍醐味だと思う。
全編を通して、カメラワークも工夫されていて、飽きなかったし、沖縄の歌が流れて終わることにより、ひとつの物語のような印象も受けた。
個人的には諏訪監督のこれまでの作品の中で一番すばらしいと思った。二人の監督と関係者に拍手を送りたい。
この映画そのものが、なんだか妖精みたい。
とてもかわいらしい映画でした。
でもどこか不気味(と言ってしまうのはちょっとおおげさかな?)な印象も残る、
「ひっかかる」映画。
前半の「フランスのユキとニナ」の部分だけなら、
きっとなんでもない映画だったと思うのですが、
後半、気付いたら不思議な世界へと入りこまされてしまったような。
キーワードは
「森」と「おばあちゃん」かな?
フランスにいるときと、
日本にいるときで
ユキがまったく違う子に見えるのがすごいなーと
思いました。
大人は思っているよりも子供で、
子供は思っているよりも大人。
だけど子供は大人を必要としているし、
大人も子供によって大人になる。
私はいま26歳で、子供もいないのですが、
遠くない過去と、遠くない未来を行ったり来たりしているような感じがしました。
妖精だとか、非現実的なものは一切出てこないのに、
不思議で、でもなぜか心地よい感覚に陥る、そんな映画でした。
見所は、アドリブ即興演技だけかな
①2009年カンヌ国際映画祭
〈監督週間〉正式出品作品
②日仏合作
③演技は脚本で場面設定だけし、現場(アドリブ)重視
事前に知っていた情報は、この3点だけ。
映画館は、
水曜日のサービスデーではありませんでしたが、
40名弱と、思っていたよりはお客様が入っていました。これは期待できるかも(笑顔)
☆彡 ☆彡
好きな人は大好きなんだろうな・・・
星5つじゃ足りないんだろうな・・・・・・
両親の離婚があると知った予告編から、
もっと感情を露わにするシーンが多いのかと
想像していたのですが、感情を爆発させるシーンは
皆無に等しく、感動するとかしないとかそういった類の作品ではありませんでした。
一言で表してしまうと
“ユキとニナの成長記録、特にユキの成長記録”
【見所】
①アドリブ演技
現場では設定だけを伝え、基本アドリブで演じられていますので、
ユキとニナの動きはカメラを感じさせないほど自然体です。緊張感の欠片もありません。
だから、あるシーンでは、監督から伝えられた場面設定に
ユキが「わたしはそんなことしない」と反発。別の演技になった。
また、あるシーンでは、お母さん役のリアクションに
ユキが驚いてしまい、完全に素になり、どうしていいのかわからず
うろたえてしまった様子が、そのまま採用されているそうです。
②自然(森)の美しさ比べ
フランスと日本の自然の美しさ比べが見物。
個人的には、幻想的なムードを感じさせられた
フランスの森のほうが好きかな。ストーリー上、
フランスは幻想的、日本は如何にも日本の田舎的な
森を選ばざるを得なかったんですけどね。
③終盤のストーリー
ここで食いつく人と
ドッチラケになる人と、はっきり分かれると思います。
わたしは“食いつき”派でした。
そのシーンまで、両親の離婚を
受け止めるには幼すぎる年齢なのに
リアリティ性が強すぎましたから、
観客を和ませる意味でもアリじゃないでしょうか。
☆彡 ☆彡
見所はあるのですが、
ストーリーに起伏がありませんので、
左前と右後から音響の良い映画館なみに
重低音のきいたイビキが聞えてきました。
でも、こればっかりは仕方のない気がします(苦笑)
わたしも一瞬睡魔に襲われかけましたが
それなりに作品の世界を楽しめましたので、
それなりの評価で★★★☆☆とさせていただきます。
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