「説明のなさがかえって、物語の余白となり、見る側の想像を掻き立てる」母なる証明 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
説明のなさがかえって、物語の余白となり、見る側の想像を掻き立てる
凄絶な女子高生殺人事件の容疑者となってしまった息子の無実を証明するために 、母親が狂気的に真犯人を探す。
登場人物それぞれの背景や生い立ちについての説明がないまま進むが、主人公は貧しい母子家庭であり、息子には少し知的に問題がありそうで、母親はどこか偏愛的であることは想像に難くなく、その説明のなさがかえって、物語の余白となり、見る側の想像を掻き立てる。
母親が無条件に子どもを守ろうとするのは女性”性”のなせる本能だが、本作の母親はそれだけではなく、息子への贖罪や自身の存在意義や、あるいは懸命な記憶の改ざんや、様々な個人的要素を内包しており、それらが渾然一体となって、常軌を逸した行動へ駆り立てる。
後半、時々挟まれてきた、よく分からない映像が全て見事に回収されながら、怒涛の展開を見せる。息子とは違う「彼」に面会し泣き崩れるシーンが秀逸。母親の息子への躾が因果応報的にきいてくるあたりは無情。
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