「【粗にして野だが卑ではない弟と清廉な姉との繋がりを、二人を取り巻く人たちの関係性を絡めて描いた人間性肯定映画。山田洋次監督はケン・ローチ監督に影響を与えているのではないかと思った作品でもある。】」おとうと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【粗にして野だが卑ではない弟と清廉な姉との繋がりを、二人を取り巻く人たちの関係性を絡めて描いた人間性肯定映画。山田洋次監督はケン・ローチ監督に影響を与えているのではないかと思った作品でもある。】
ー 一昨日から、劇場公開作を含め、邦画を代表する山田洋次監督作を今更ながらに鑑賞している。この名匠の作品の根底に通暁しているのは、矢張り人間性肯定の視点と、社会的弱者に対する温かき視点であると改めて思う。ー
◆感想<Caution!やや内容に触れています。>
■しっかり者の姉吟子(吉永小百合)と人間性は良いのだが酒に呑まれるダメな弟、丹野鉄郎(笑福亭鶴瓶)の姉にとっては甚だ迷惑な再会と永訣の別れに涙する作品である。
東京の郊外で小さな薬局を営む吟子。
娘・小春(蒼井優)の結婚が決まるが、その結婚式に音信不通だった吟子の弟・鉄郎が現れる。
吟子の夫の十三回忌で泥酔し大暴れした鉄郎は、一滴も酒を飲まないと約束するが我慢できず、またしても結婚式を無茶苦茶にしてしまう。
・で、小春は離婚。だが、彼女は真面目な青年、長田亨(加瀬亮)に惹かれて行くのである。
ー 結婚は、相手の家柄で決めるモノではないよね。ホントに好きになった相手と結婚するのが良いよね。山田監督はその先見性(当時)をキチンと描いているのである。-
・丹野鉄郎を演じた笑福亭鶴瓶も当たり役で、悪気はないのだが酒に呑まれる気質と金にダラシナイ気質を演じている。但し、彼は女性に手を出すような男ではない。
<山田洋次監督の作品は、何故か安心して観ていられる。
物語の展開ではハラハラするシーンは多いが、根本的に人間性肯定の立場で映画を製作されているので、最終的には少し涙し、最後は”さあ、明日から頑張ろう!”と言う気持ちになるのである。
更に言えば、作品の中では常に弱者の視点で物語が展開する。
正に、日本のケン・ローチである。
山田監督自身は東大法学部出身であるが、学歴偏重主義を声高に言う事はない。が(いや、寅さんでは結構言ってるな。)暗喩的に“真なる人生の豊かさは学歴ではない。その人物の生き様である。”と映画の台詞を通して言っていると思う。
で、寅さんの”さあ、貧しき労働者諸君、今日も一日頑張り給え!”等という台詞に笑ってしまうのである。
山田監督は、矢張り邦画界の至宝であると、最近見た3作を鑑賞しても改めて思うのである。>