「 「伊勢海老でしょ?フライにしたらデカすぎるって」→「俺達、気持ちはもう完全にエビフライだからね」→「こりゃやっぱり刺身だったな…」シュールなコントを見ているような、大変楽しい映画でした。」南極料理人 野球十兵衛、さんの映画レビュー(感想・評価)
「伊勢海老でしょ?フライにしたらデカすぎるって」→「俺達、気持ちはもう完全にエビフライだからね」→「こりゃやっぱり刺身だったな…」シュールなコントを見ているような、大変楽しい映画でした。
良い意味で完全に予想を裏切られた映画でした。
バナナで釘が打てる(歳バレ)極寒の地で苦闘する観測隊員たちのシリアスなお話だとばかり思っていたんですよね。
そんな過酷な舞台なのに、悲壮感なんてこれっぽちも感じさせない、クスクス笑えるお話が大変面白かったです。
特に劇的なことが起こるわけでもなく。淡々とした日常の中にある、ふとした笑い。
よくできたシュールなコントを立て続けに見ているような感じ。そんな作品でした。
そして同時に、登場する料理の美味しそうなこと、美味しそうなこと。
伊勢海老のお頭付き丸ごとエビフライとか。あまりのでかさに「なんか遠近感狂うなぁ…」ってw
そんな伊勢海老もそうだけれど、一番食べてみたいと思ったのは、棒にぶっ刺して直に油ぶっかけて豪快に焼いたローストビーフ。「西村くん…コレ本当に美味しくなるだろうか…?」→「多分…」
そんな料理人を、堺雅人が飄々とした役どころを好演でした。「倍返しだ!」の険しい表情よりも、むしろ堺さんの素に近いと思ってしまう優し気な雰囲気に癒されました。
「えっ?(。´・ω・)?」となったのは南極観測隊員って志願制なの?それとも召集制なの???という疑問。
調べてみると、どうやら厳しい基準に合格した、各分野のエキスパートから選抜されるとのことなので、エリート中のエリートの志願制のようですね。まるで宇宙飛行士の如きです。
劇中で、夢が叶って任に就くことが決まった人(宇梶剛士)が大喜びをするシーンがありましたし。
「20年越しの夢がようやく叶いました(涙声)」でしたからね。
あんなに過酷な地でのお仕事をされるわけですから、てっきイヤイヤの召集制だとばかり思っていました。
ぬくぬくと温室暮らしを決め込んでいる私には、到底理解できない世界です。
映画も観に行けないし、何より女装遊びができないし。←このネタ、もう止めるとか言ってたくせに…
とは言え、本作の主人公・西村(堺雅人)は、決して望んで行ったわけではなく、仕方のない代役(宇梶さんの)だったようです。
再び「えっ?」となったのは、基地から本国への国際電話代が1分で740円の張り紙があったこと。
これについても余計なことを調べてみたんですが。
2004年には衛星通信設備が整って、基地主要部屋内でのインターネット常時接続が可能となったとあるんですよ。この作品2009年の映画なんですよね。あれぇ?と思って再度調査です。どうやら原作は2001年にあったそうなので、それ以前の時点での設定だったのでしょうか。
調べていて、三度「えっ?」となったのはWi-Fi環境。現在は基地内だと、しっかりと使えるそうです。
何はともあれ、デジタルネイティブの方が不便を被らなくてよかったです。
でも、ソシャゲなんてやってるヒマななんてなさそうなんですが。任務が任務だけに規律も厳しそうだし。
映画では、そのあたり(規律が)かなりゆる~く描かれていたんですが。
ゆる~いと言えば、そんな電話交換手思いを寄せてしまった隊員・川村(高良健吾)の「いつも聞いていて、あなたの声。結婚してください」(笑)→「ガチャン、ツーツーツーツー…」これ、なんかわかるなぁ。容姿も知らぬペンフレンドに強い恋心抱いちゃうみたいな。
今どきのデジタルネイティブの皆さんには、わからない感情だろうなぁ。
そんな彼の帰着の空港で想いが報われた(?)シーンで、とても温かな気持ちになれました。
これ以外のいくつかの伏線も見事に回収されていて、つい胸がほっこりとしました。
エンディングテーマソングに手厳しい私ですが、ユニコーンの手による「サラウンド」は、本作のユーモラスな魅力にピッタリとハマる脱力系の幸せな歌で、大変似合っていたと思いました。
いつも余計なことばかり調べているので、今回は普通に、監督についても調べてみました。
なんと!大変面白かった『さかなのこ』でもメガホンをとられた沖田修一の初監督作品だったのですね。すっとぼけた雰囲気の作風が重なって見えたと思った、大変面白かった作品でした。