ハゲタカのレビュー・感想・評価
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硬派の上質経済ドラマ。
予告編で見た玉山鉄二さんの、≪あ~、そ~≫(私の自分勝手な想像の言葉)という、あの冷たぁ~いお目々を見たくて、見に行きました。
期待通りの素晴らしい演技で、感服しました。
野心、冷徹さ、傲慢さ、研ぎ澄まされた鋭利さ、そして心の弱さ。
どれも、素晴らしかった。
「手紙」で見せた弱さ、あるいは大河ドラマで見せた反骨精神、ただのイケメンではなくなりましたね。
何となく、ニコラス・ツェーに似ていて、劉一華という名前にも、違和感は感じませんでした。
何度も脚本を書き変えたというだけあって、ストーリーも良かった。
ライブドアVSフジテレビで、企業買収も身近に感じられるようになっていた(エンドロールに、ニッポン放送の文字を見つけ、苦笑)し、ホワイトナイトという言葉も覚えていたので、ストーリーに入り込み易かった。
リーマンブラザーズの破綻で、「100年に1度」の世界不況に陥り、最近ではGMの破綻。
派遣切りや、物作りより資産運用に必死になる経営者。
そのリアルさは、作品の命ともなった。
単なる金儲けでもなく、会社の対立だけでもない。
今、目の前にある現実を必死になって変えようとする人間たちの強い意志を感じる。
生き抜く力を感じる。
素晴らしい経済もの作品でした。
中途半端
TVシリーズより、リアリティに欠ける。良いテーマだけに残念。
NHKの人気テレビドラマ「ハゲタカ」の映画化。TVシリーズの4年後と言う設定。2008年9月のリーマン・ショックの要素もストーリーに取り入れるため、当初予定の2009年5月公開よりも遅れての公開となった。アカマ自動車はホンダ、スタンリー・ブラザースはリーマン・ブラザースと言う設定と思われます。
今回の映画化に辺り、TVシリーズ時のレギュラー陣が再結集しましたが、うーん、どうなんでしょうか。TVシリーズの時は、物凄くシリアスでリアリティに富んでいましたが、今回は、映画と言う事もある為か、すこしドラマ要素を盛り込み過ぎでは無いかと思います。この「ハゲタカ」の良い所は、シリアスなリアリティなんですけどねぇ。
まず、大森南朋が演じる鷲津。鷲津は、TVシリーズの時は、過去の苦悩を裏に秘めながらも、利益の追求に徹する冷徹なファンドマネージャーですが、今回の映画では冷徹に利益のみを追求する部分は影を潜め、実は熱い人間だと言う事が見え隠れしています。TVシリーズ終盤でその伏線はありましたし、これは、玉山鉄二が演じた劉一華との対比上仕方ないキャラ付けなのかもしれませんが・・・。あんまり冷徹すぎるのも、どうかと言う話もあると思うので、こう言うキャラ付けは仕方ないのかもしれませんね。って言うか、劉一華も、実は熱い人間だと言うオチまで付いていたりしたりします。
それと、「ハゲタカ」のもう一人の主人公である、柴田恭兵が演じる芝野。彼が今回、あまり生きないんですよねぇ。元祖ハゲタカと赤いハゲタカの対決と言う物語の構図上、芝野の役割が脇役的位置になるのは仕方ないのかもしれませんが、この「ハゲタカ」の本来のバックボーンを損ねた気がしてなりません。この柴田恭兵が、「あぶ刑事」で、あの軽~いキャラを演じていたのかと思うと、何とも不思議な気がしました。
TVシリーズのレギュラー陣再結集と言うことなので、松田龍平も今回出演しているんですが、今回の彼の役回りは、ちょっと残念ですねぇ。って言うか、必然性が無いですよね? 全然、彼が生きていませんでした。
と、基本的にかなり辛口基調の映画評となってしまいましたが、TVシリーズの印象が強かっただけに、仕方ないですかねぇ。リーマン・ショックとか、派遣切りとか、今の時代をリアルに反映していただけに、深堀が無くて残念です。
お金お金と言うけれど人間関係だね。
緻密な経済リサーチにスタイリッシュな映像に満喫しつつも、所々説明不足気味なところが残念です。
経済小説が原作だけに専門用語も飛び交う本格的な金融映画。少々難しいかもしれないけれど、登場人物の際だったキャラといき詰まるTOB、公開買い付けバトルの展開がてきぱきと整理されていて、金融に弱い人でも楽しめる内容となっています。
特にドラマ版から引き継いだ厚みと深みのあるスタイリッシュな映像は、本作ならではのものでしょう。
ドラマ『ハゲタカ』は、バブル崩壊後の日本が舞台でした。劇場版の舞台は、現代。刻々と変化する金融情勢に併せて、書き換えられていった台本(役者は大変だが)は、今という時代をタイムリーに捕らえていました。特にサプライムローンからのリーマンショックの舞台裏については、現実に起ったこととを彷彿させる出来事が続き、丁寧にリサーチしていることを伺わせます。
特に、中国が国家をあげて日本企業に買収をかけた場合、日本経済を占領しえる可能性があることを示して、戦慄を覚えました。
専門性にこだわった分、専門用語が多すぎて、NG14連発もした出演者がいるくらい、台詞回しは難しかったようです。
本作で魅力的なのは、かつてハゲタカと呼ばれた鷲津ファンド代表の鷲津政彦。鷲津の描き方にに共感してしまうところは、アカマ自動車の救済にあたる鷲津を正義の味方に描いていないことです。
本人にも、資本主義の亡霊のように語らせてます。特にかつて買収に絡んだ先のトップを自殺に追い込んだことを、十字架のように背負わせ、自分は何者であるのか自問自答させていたのです。
鷲津の口癖のように迫る「お前は、何者だ」との言葉は、おそらく自分への問いかけだったでしょう。彼を演じる大森南朋がいぶし銀の魅力を放っていました。
その反面鷲頭に挑む劉一華については、彼が隠し持っていたハゲタカにふさわしくないアカマ自動車再生への熱意という持ち味が出ていなくて残念。玉山鉄二もがんばって演じているのですが、演出の方の、力不足でしょうか?
映像表現としては、経済戦争をエンターティメントのバトルとして斬新に表現しているけれど、人間の再生ドラマとしては、いまいち描けていなかったですね。細かいところでは、突っ込みどころ満載です。あえて指摘するなら、アカマ自動車の再生の方向性をもっと明確にしてほしかったです。 アカマ自動車の古屋社長が行ってきた、派遣切りなど人件費圧縮に対して、本作品は非人道的であると批判的に描きます。ただそれに対する反論して、日本人の勤勉さに確証のない希望を持つことしかないと主張させるのでは、あまりに浪花節です。混迷と不安に満ちた現代に放つ提言的な作品を目指すなら、具体的にこうすれば日はまた昇るのだ、日本は捨てたもんではないのだということが示されたことでしょう。せっかく緻密な経済ドラマであったのに、資本主義への批判ばかりに制作陣がとらわれて、再生への展望が弱くなっていると思います。
そしてラストに劉一華の故郷を鷲津が訪れるところでも、あまりにシンボリック過ぎて、何を意味するのか不明でした。おそらくライバルとなった劉一華の本質を見ることで、鷲津の心の中に、救いが生まれたのではなかったかと思います。
その点では、もう少し劉一華の素性を描いてほしかったですね。
冒頭に登場する、中国の農道に赤い車が疾走するところと、その同じ道をラストで感慨深く鷲津が佇むところがとても印象的でした。
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