「中国育ちだからといって敵役を粗末に扱わないで欲しいと思ってしまった」ハゲタカ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
中国育ちだからといって敵役を粗末に扱わないで欲しいと思ってしまった
大友啓史監督による2009年製作の日本映画(大友の映画初監督作)。配給:東宝。
NHK TVでの評判は聞いていたので期待して視聴も、ガッカリさせられた。
脚本(もしくは原作)が、酷いと思ってしまった。せっかく、中国残留孤児の劉一華役の玉山鉄二が良い味を出していたのに。調べたら、なりすましで劉ではなかったとの展開は良いのだが、彼の貧しい家は明かされたものの、残留邦人孤児かどうかも明確でなく、どういう人間なのかも、結局明かさず終わってしまった。挙げ句の果てに浮浪者に刺されて死ぬという、あまりに安易な結末付けに馬鹿にされたようで、不愉快な気分を覚えてしまった。
原作は読んでいないが、日産(マツダの要素も加味)をイメージさせる日本の大手自動車会社が、大きな資金力有する中国資本に買収されるとの物語構想はリアルでもあり、興味を持たせるものでもあった。社長の経営のいい加減さも実在人物が思い浮かぶし、派遣労働者の扱いの酷さは、良く描けていると思った。また、買収企業に対抗するファンドマネージャー鷲津政彦と言う存在も、モデルとされる佐山展生氏は村上ファンドのターゲット企業で交渉役を担った様で、リアリティは感じた。
しかし、重要な言わば敵役の劉一華の造形が実に適当と思えたのは残念。ただ、日本の製造企業の現場や技術には学ぶべきものがあるが、経営は酷いという中国側および劉一華名乗る人間の評価は、悲しいが的確と思ってしまった。従業員のやりがいや収入を増やす優秀な経営者であれば、日本人である必要も無い。脚本の意志とは異なり、映画の中で次期社長に選ばれた柴田恭平の情緒的考えでは、今後の生存は難しいかもとも思え、共感も殆ど持てなかった。
製作富山省吾、製作統括
岡田円治、島谷能成、入江祥雄、安永義郎、喜多埜裕明、石井博之、宮路敬久、大宮敏靖、 大月昇、宮本幸一、企画・プロデューサー訓覇圭、 遠藤学、エグゼクティブプロデューサー諏訪部章夫、市川南。
脚本林宏司、原作真山仁、撮影清久素延、美術花谷秀文、録音湯脇房雄、照明川辺隆之、編集大庭弘之、音楽佐藤直紀。
出演は、大森南朋(鷲津政彦)、玉山鉄二(劉一華)、栗山千明(三島由香)、
高良健吾(守山翔)、遠藤憲一(古谷隆史)、松田龍平(西野治)、中尾彬(飯島亮介)
柴田恭兵(芝野健夫)、嶋田久作、志賀廣太郎、小市慢太郎、グレゴリー・ペーカー、脇崎智史。