「俳優陣の好演に裏打ちされた熱い人間ドラマ」ジェネラル・ルージュの凱旋 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優陣の好演に裏打ちされた熱い人間ドラマ
稚拙自ブログより抜粋で。
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前作『チーム・バチスタの栄光』はコメディ風味の医療サスペンスという相反する要素にいまいち折り合いがついていなくてアンバランスな印象だったのだが、続編となる今作は田口&白鳥の凸凹コンビも安定感が増し、二人のやりとりによる笑いどころも素直に笑えた。
しかしこの秀作の真価は、謎解きサスペンスとしてではなく、ましてやおとぼけコメディでもなく、医療現場の現実をあぶり出した熱い人間ドラマにこそある。
この映画は一応分類上はサスペンス映画とされるだろうが、謎が謎を呼びというたぐいの映画ではない。
謎解きサスペンスの皮を被りながらその実、言葉巧みに今の医療現場の問題点を次々と指摘していく。
センター長・速水に対する疑惑や物語の発端となる告発文を書いた人物、その真意など、すべての謎は終盤でもちろん決着がつく。
しかし多くの観客がそこで感じるのは事件解決のカタルシスではなく、今の医療システムの現実に対する問題意識のはず。
さらにこの映画はこれで終わらない。事件解決のあとに用意された真のクライマックス。
それは予告編でも流れている大惨事における医療現場の実際だ。
この段に至ると映画の流れは一変し、さながら医療ドキュメンタリーの様相をなす。
大病院といえども助けられる命には限界がある。理屈ではわかってても、いざそれを自分のこと、身内のこととして突きつけられたとき、人はそれを受け入れられるのか。
またそれは医師たち自身にも降りかかる難問。自分の判断ひとつで患者の生死が決まってしまうとき、感情に流されずに適切な判断を下さなければならない。
ついさっきまで言い争っていても、いざ一大事となると一丸となって治療にあたるプロの医師たち。
名も無き看護師も、未熟な研修医も、皆できることをまっとうする。ひとつでも多くの命を救うという病院本来の目的のために。
それまでに張り巡らせた伏線をクライマックスで一気に回収していく中村監督の巧みな演出が、最小限の台詞で最大限に感情を高ぶらせる。
キャスト陣がまた特筆したいほど素晴らしい。
まずはともあれ今回の主役といえるひと癖もふた癖もあるセンター長・速水を演じきった堺雅人が男惚れするほど格好いい。
また『チーム・バチスタの栄光』では嫌な奴という印象が濃かった阿部寛演じる白鳥が、今作は堺速水に負けず劣らず格好いい。まさにキレモノという言葉がふさわしい活躍を見せて好感度大幅アップ。
前作ではあくが強すぎると感じた阿部寛だが、今回はやはりあくの強い堺雅人との対決ということで絶妙の塩梅となった。
そして竹内結子の演じる本来の主役・田口がこれまた前作ではあまり感じられなかった秘めた強さを垣間見せる。
冒頭の会議シーンではおどおどしてろくに発言できなかった彼女が後半、目を真っ赤にしながら静かに訴え、さらにある人物を睨みつける表情が印象深い。
ほかにも速水にこき使われて反発する部下の“佐藤ちゃん”を演じた山本太郎、速水を支える看護師長・花房を演じた羽田美智子、彼女へのライバル心を秘める看護師・如月役の貫地谷しほり、速水に敵対心を抱く精神科部長・沼田の高嶋政伸、金食い虫の救命救急を快く思わない三船事務長・尾美としのりなどなど、誰も彼もが何か裏のありそうな曲者チャラたちを皆いい味を醸しつつ演じていて、派手さこそ乏しいがなかなかいいキャスティングだ。