劇場公開日 2011年10月14日

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「文句なしに楽しめるレトロタッチの空想科学ヒーローもの」キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0文句なしに楽しめるレトロタッチの空想科学ヒーローもの

2011年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

第二次大戦下で、あり得ない(と思う)科学力を駆使した戦いがあったという創作が愉しい。この手の話は、なにも今に始まったわけでなく、これまでも幾度となく作られてきた。日本でも東宝の「フランケンシュタイン対地底怪獣」(日米合作1965)という映画があって、ドイツから広島にUボートで〈不死の心臓〉を運ぶという荒唐無稽でちょっぴり怖い物語にワクワクしたものだ。
今作では、肉体を強靱にする改造人間ものと、常識では防御不可能の秘密兵器ものが1本で楽しめ、空想科学もの好きとしては実に美味しい取り合わせで鼻をくすぐられる。

アメリカ陸軍がナチスから亡命した博士の超人血清による〈スーパーソルジャー計画〉を起ち上げれば、一方のドイツではカルト集団が極秘科学部門ヒドラ党が謎のパワーによって強大な破壊力を手に入れるという構図が、いかにもという設定でうなずける。アメリカは現実的なバイオテクノロジー、ドイツはヒトラーのオカルト傾倒を反映している。

視覚的には、クリス・エヴァンスが実験を受けるビフォア&アフターの体格の変貌が、今ならではの映像技術で表現可能になった。爆撃機などの重量感もまずまずで、VFXのデキは水準以上だ。

楽しいのは、最新技術を結集したプロジェクトでありながら、機材が実にアナログ的なところだ。パネルに居並ぶ丸メーターにランプとスイッチ類のレトロ感が堪らない。
秘密実験所への入り口が、U.N.C.L.E.みたいな仕掛けで、しかも合い言葉まである。店番を装ったオバさんが、緊急事態に機関銃を構える姿が甲斐甲斐しい。

キャプテン・アメリカの戦いぶりも超アナログだ。これといった武器は持たず、文字通り超人的な運動能力だけで敵をなぎ倒す。唯一の防具がレア合金の円盤型の盾。これがブーメランのような武器にもなる。ところがこの盾、絵柄が星条旗カラーで、これを背中に背負って敵陣に忍び込むのだが、目立つことこの上ない。その後ろ姿には思わず笑ってしまう。

この映画、もうひとつの見どころが1942年という時代描写だ。街並み、ファッション、行き交う車が当時の雰囲気を醸し出すが、決して古臭くないのがいい。現代的なセンスでアレンジされ、とってもお洒落だ。
ヘイリー・アトウェル演じる女性将校のペギー・カーターも魅力的だ。時代に合った顔立ちで40年代のファッションに身を包むが、今風の物言いとアクションを織り交ぜ、凛とした姿は見ていて惚れ惚れする。彼女によって、フィリップス大佐のトミー・リー・ジョーンズ、レッド・スカルのヒューゴ・ウィーヴィングも霞んでしまいそうだ。

背景に軍事大国アメリカの姿が垣間見えるが、空想科学ヒーローものとして文句なしに面白い映画だ。

マスター@だんだん