劇場公開日 2009年7月18日

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湖のほとりで : 映画評論・批評

2009年7月7日更新

2009年7月18日より銀座テアトルシネマにてロードショー

才気あふれる演出と円熟の芝居のブレンドを味わう、静かなる名編

イタリアのアカデミー賞ともいうべきダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞、監督賞をはじめ史上最多の10部門を受賞という派手な冠から想像される“イタリア映画の名作”というイメージとはかなり違う、驚くほど地味でストイックな作品である。

北イタリアの山間の小さな村。男の車に乗せられた幼い少女が行方不明となり、湖のほとりでは別の美少女の全裸死体が発見される。「ツイン・ピークス」を想わせるスリリングなオープニングは、類型的な犯罪ミステリーや猟奇殺人を描くサイコ・スリラーを予感させるが、映画が進むに連れ、事件に漂っていた異常性や凶悪さは影を潜め、やがて犯人探しの謎解きからは、愛情と思いやりに満ちたいくつもの切なくも哀しい人間ドラマが浮かびあがってくる。

ナンニ・モレッティ監督作の助監督としてキャリアを積んだアンドレア・モライヨーリの演出には、長編劇映画第1作とは思えない落ち着きと安定感がある。繊細で奥行きのある人物描写にはモレッティの影響も顕著だが、群像劇を俯瞰から捉える視線はよりワイドでスケールを感じさせる。主役の一見“コロンボ”タイプだが、実はごく平凡な悩み多き中年刑事を演じるのは、本作をはじめ「ゴモラ」「イル・ディーヴォ」など、主演作が軒並み映画賞を総なめにし、ここ数年のイタリア映画の復興を支える味のある名優トニ・セルビッロ。彼の口数は少ないが、人生の悲哀を見る者の胸に共鳴させる雄弁な眼差しが素晴らしい。才気あふれるフレッシュな演出と円熟の芝居の絶妙なブレンドを味わう、静かなる名編である。

江戸木純

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