劇場公開日 2020年2月22日

「「シェルブールの雨傘」は実験的な映画!」ロシュフォールの恋人たち 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 「シェルブールの雨傘」は実験的な映画!

2025年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「シェルブールの雨傘」で出会った脚本・監督のジャック・ドゥミと、音楽のミシェル・ルグラン、女優カトリーヌ・ドヌーブが「ロシュフォールの恋人たち」では、本格的なミュージカル映画に挑んでいる。そのためには、アメリカの資本を入れ、ダンスの抜群な「パリのアメリカ人」「雨に唄えば」のジーン・ケリー、「ウエストサイド・ストーリー」のジョージ・チャキリスを呼んでくる必要があった。彼らもセリフはフランス語で通していたが、カトリーヌ・ドヌーブと実のお姉さん、フランソワーズ・ドルレアックのダンスのレッスンもさぞかし大変であっただろうと想像がつく。
それでは、フランスで作ったこの映画は、ハリウッドの従来からのミュージカル映画とどう違うのだろう。一つは、ロシュフォールという大西洋岸の港町にロケして作られたこと。例えば「パリのアメリカ人」は、そのほとんどがセットで撮影されている。衣装も、撮影に使われたコルベール広場も極めてフランスらしいパステルカラーに満ちている。塗装を塗り替えた街の協力もあったようだ。行進する水兵たちの格好が記憶に残る、軍服にブルーのシャツ、黒くて細いネクタイ、なんという色の組み合わせか。確かにストーリーは他愛もない。ドルレアックとドヌーブの双子の姉妹、それからダニエル・ダリューの扮するシングル・マザーと、それぞれのお相手から成る3組のカップルが、お相手とのすれ違いを繰り返すだけ。
何と言っても、ミシェル・ルグランの音楽が素晴らしい。彼は、この映画で、68年アカデミー賞のミュージカル映画音楽賞にノミネートされている。この映画の中でも、クラシックのモーツァルト、ストラヴィンスキー、ジャズのルイ・アームストロング、カウント・ベイシー、ライオネル・ハンプトンの名前が出て、その後、ミシェル・ルグランは、と言わせている。そうなのだ。彼は、映画の世界で、クラシックとジャズの間の架け橋となった作曲家だ。しかも、メロディーを生み出す才能に恵まれていて、「思い出の夏」など、3回もアカデミー賞の作曲賞などに輝いている。この映画では、ダニエル・ダリューを除いて、歌唱はプロの歌手たちの吹き替えだったことは、ちょっと残念。
フランス映画には珍しい多幸感に満ちた映画だったが、この映画では一番輝いていたフランソワーズ・ドルレアックが早く亡くなってしまったことを知り、心から驚かされた。

詠み人知らず
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