劇場公開日 2009年8月1日

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ボルト : インタビュー

2009年7月29日更新

ピクサーを立ち上げ、幾多の作品を成功させてきたジョン・ラセターが、06年にディズニー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)に就任。ピクサー/ディズニー双方のクリエイティブ面の指揮を執るようになった。「ボルト」はそんなジョン・ラセター体制のディズニー・アニメの第1弾として送り出され、今年の第81回アカデミー賞でピクサーの「ウォーリー」に並んでアカデミー長編アニメーション賞にノミネートされるという高い評価を受け、早くも実績をあげてみせた。そんなラセターに、ロサンゼルス在住の小西未来氏が話を聞いた。(取材・文:小西未来

ジョン・ラセター インタビュー
「素晴らしいアニメーションを生み出すためには、3つの大事な要素がある」

ジョン・ラセターが製作総指揮を務めたディズニーアニメ「ボルト」
ジョン・ラセターが製作総指揮を務めたディズニーアニメ「ボルト」

――06年にチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任してから、短期間でディズニーを立ち直せましたね。

ディズニーを再生させた ジョン・ラセター
ディズニーを再生させた ジョン・ラセター

「実はディズニーで仕事を始めたころは、どんなアーティストがいるのかまったく分からない状態だったんだ。なにしろ、最後にここを訪問してから、4年もの月日が経っていたからね。幸運なことに、卓越したアーティストが数多く所属していることがすぐに分かった。ストーリー部門から美術部門、テクニカル部門に至るまで、あらゆる部署に素晴らしい人材がいて。それで、ぼくらは時間をかけて、ディズニーをピクサーと同様の映画作家主導型のスタジオにしようと訴えた。ディズニーのスタッフは、ピクサーと交流があるから、その素晴らしさを知っていた。でも、彼らの信頼を勝ち取り、映画作家主導でスタジオを運営するスタイルに方向転換するまでたっぷり1年はかかったね。そして、今回の『ボルト』こそ、ディズニーの映画作家たちが主導して最初から最後まで作り上げた初めての作品なんだ。重役であるぼくが命令して作った映画ではない。ぼくはサポート役として製作チームを手助けしただけなんだ」

――「ボルト」のどこに惹かれたんですか?

「どんな物語においても、ぼくは主人公が成長できる余地に注目するんだ。主人公の成長こそが、映画のハートとなる部分だと思っているから。笑いも必要だが、それは添え物のようなものだ。なぜなら観客の記憶に刻まれるのは、その映画が与えた感動のほうだからだ。面白おかしいだけの映画は、すぐに忘れ去られてしまう。『ボルト』については、主人公の設定に可能性を感じたんだ。TV番組の撮影現場で育ち、フィクションを現実だと信じるように仕組まれた犬が、現実世界に出て、犬らしく生きることを学ぶ、という。非常に大きな将来性を感じたよ」

――製作総指揮となっていますが、具体的にはどう関与をしたんですか?

「週2日、逐一、進行状況を確認していた。ストーリー部門のミーティングから、製作のあらゆる過程において顔を出したよ。『ボルト』の2人の監督に対しては、何らかの指示を出すのではなく、感想やアドバイスを述べるに留めた。ぼくが特にこだわったのは、監督としての振るまい方についてなんだ。監督の役割は、クリエイティブなビジョンを持つことだけじゃない。たくさんのスタッフを導く優れたチームリーダーでなくてはいけないからね」

――あなたは優れた映画監督であるばかりか、映画監督が絶大な信頼を寄せるアドバイザーとして知られています。あなたにとって、素晴らしい映画の条件とはなんでしょうか?

ストーリー、キャラクター、世界観… その3つが重要な要素と語る
ストーリー、キャラクター、世界観… その3つが重要な要素と語る

「素晴らしい映画、とくに素晴らしいアニメーションを生み出すためには、3つの大事な要素があると思ってるんだ。第一に、観客が身を乗り出して夢中になるような『非常に面白いストーリー(compelling story)』。次にどんな展開が待ち受けているのかどうか、観客が気になって仕方がなくなるようなストーリーが必要だ。

次に、その物語を、記憶に焼きつくような『魅力的なキャラクター(appealing characters)』で埋め尽くすことが必要だ。『魅力的』っていうのが重要なポイントで、悪役ですら魅力的に描かなくてはならない。

そして最後に、ストーリーとキャラクターを、『真実味のある世界(believable world)』に置かなくてはいけない。これは、現実的、という意味ではない。その物語に没頭できるだけの真実味をもった舞台設定ということだ。この3つの要素が密接に絡みあってはじめて映画が成功すると思うんだ」

インタビュー2 ~ピクサーで鍛錬!クリス・ウィリアムズ&バイロン・ハワード監督に聞く

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