ボルト : 映画評論・批評
2009年7月28日更新
2009年8月1日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
ピクサー体制による新生ディズニーの門出
ディズニーといえば、言わずと知れたアニメスタジオの老舗だが、いまでは〈質のピクサー〉と〈量のドリームワークス〉という2大スタジオの後塵を拝している。配給契約を結ぶピクサーの成功に刺激を受けて、「チキン・リトル」(05)からCGアニメ製作に進出するも、商業的にも批評的にも成功を収めているとは言い難い。だから、自らを超能力ドッグと信じているテレビの人気犬を主人公にしたディズニー最新作「ボルト」に期待を寄せるのは、難しいことかもしれない。
しかし、「ボルト」はこちらの予想を見事に裏切ってくれる。魅力的なキャラクターとハートの詰まった物語、細部まで徹底的にこだわった熟練のストーリーテリングといった、良質な映画作品に期待する条件を「ボルト」は難なくクリアしているのだ。そのクオリティは、いまやディズニー傘下となったピクサーに匹敵するほどだ。
それもそのはず、「ボルト」はピクサー体制で生まれたディズニー作品である。ピクサーのエド・キャットマル社長とジョン・ラセター監督が06年からディズニー・アニメーション・スタジオの舵取りを行っており、「ボルト」は彼らが企画開発から携わった最初のディズニー作品だ。この映画の成功は、ピクサー流のクリエイター主導型経営術がディズニーに浸透した証拠でもある。老舗スタジオの復活を心から歓迎したい。
(小西未来)