シャーロック・ホームズ : 映画評論・批評
2010年3月9日更新
2010年3月12日より丸の内ルーブルほかにてロードショー
名探偵の謎解き映画というより、悪の野望と闘うアクション大作という趣
名探偵の謎解き映画というより、悪の野望と闘うアクション大作という趣。シャーロック・ホームズも、従来の温厚で知的な中年紳士のイメージを一新。腕っ節自慢のやんちゃ坊主になっている。あらためて「緋色の研究」を読んだら、意外にも今回のほうがオリジナルに近かった。一方ワトソンは、ホームズの頭脳に感心するだけの助手からポジションがアップ。その才能は認めつつ、時にはホームズを手のかかる弟扱いする兄貴の雰囲気だ。実年齢とは逆に兄貴キャラのジュード・ロウと弟キャラのロバート・ダウニー・Jr.のコンビがぴったりはまった。ワトソンの結婚にホームズがスネてイタズラしたり、男の友情に女は邪魔だといわんばかりの微妙な目線も面白い。
舞台となる1890年のロンドンは、工業技術と科学が飛躍的に発達し、猥雑なエネルギーが渦を巻いている世界。その権力の上層部に君臨し、科学技術を黒魔術にみせかけて人心を掌握しようとする敵。それ以上の科学知識で陰謀を暴いていくホームズ。食肉解体工場、造船所、建設中のタワーブリッジと場所を移動して展開するアクションと、ホームズらしい推理力の披露がバランスよくブレンドされている。時間を巻き戻して謎解きプロセスを解説する手法はガイ・リッチーお得意の手法だが、今までそこに生まれていた笑いの間が今回は消えてしまっている。世紀末ロンドンを飾る大道具、小道具が多くて、画面がうるさすぎたのが禍したのかもしれない。
(森山京子)