劇場公開日 2009年10月9日

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「命、体って誰のもの? 愛であれば何でも許されるのか?」私の中のあなた とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0命、体って誰のもの? 愛であれば何でも許されるのか?

2018年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

号泣を通り越して爆泣。とにかく泣ける。でも、心のどこかで泣ければいいのかと警鐘がなる。
 そんな複雑な感情を醸し出す映画。
 お涙頂戴でいいのか?

家族愛を描いた映画。
 温かさに包まれながらも、心に棘が刺さったよう。

知人を思い出した。
 自分が産まれる前に亡くなった姉の生まれ変わりだと言われて育った。「姉が亡くなったからお前を産んだのよ、お前は姉の生まれ変わりよ」と、知人の母は愛情込めて繰り返しささやき、知人を細心の注意をもって大切に育てたらしい。
 「私は誰?死んだ姉?それとも…。姉が生きていたらこの世に存在しなかったの?」と自分の存在を感じられないで苦しんでいた。

確かにそこに命を救う手だてがあるのならこうじたい。それが子どもの命ならなおさら。それは理解できる。きっと私も縋りつきそうになるだろう。
 けどね。
妹の行動。実は裏で糸引いていたのは…。
 そこには、確実に”愛”があるけれど、一歩間違えば、妹は非難の対象だ。しかも「姉を見捨てた、姉殺し」。ちょっと間違えれば、この家族の関係は地獄となる。

 裁判の力を借りなければ言えない本音。家族ならではの思いやり?
 保護者の期待に添おうと、自分を押し殺して自分の本当の気持ちを誤魔化し、ついには自分自身の心に嘘ついて、かん黙になる人々、自分の本音がわからなくなり、鬱になる人々を思い出してしまった。
 「あなたの為」「家族の為」その思いこみが、守りたかった人を追いつめる。

そんなきわどいテーマ。そこを家族愛の物語に変えてしまう演出。
 映画を観てラストの展開にほっこりしつつ、このテーマをこんな風に料理していいのかと、上記の知人達を思い出しながら思う。
 甘味料に包まれた毒素。

鬼子母神のような母の想いに労をねぎらうことが中心テーマだったのだろうか。
短いけれど精一杯生きた娘の生を賛美したかったのだろうか。

 だったらドナーベイビーを安直に使わず、別の描き方をしてほしかった。
 センセーショナルな部分で人をひきつけることだけを狙ったプロット?
 もっとドナーベイビ―というテーマに真摯に取り組んで欲しかった。
 (原作は違う展開になるらしい。未読ではあるが、”ドナー”ということを考えさせる展開らしい)

改めて、私は私で存在したいし、誰かからも「私」という人間を認めてもらいたい。そう思った。
 判事と弁護士の振る舞いがせめてもの救いだ。

とみいじょん