「本論のための手段としての展開が、映画としては…」スラムドッグ$ミリオネア KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
本論のための手段としての展開が、映画としては…
この作品は2度目の鑑賞。
インド舞台のイギリス映画だが、
エンディングでしっかりと踊りのシーンが
用意されたインド映画でもあった。
結末はすっかり忘れてしまっていて、
主人公の体験に沿ったばかりの出題に、
何かカラクリがあって、
主人公のことを調べた上でのものだった
のだろうかとの想いが駆け巡ったが、
単なる偶然でしかなかったようだ。
アカデミー賞作品賞等8部門の受賞や
キネマ旬報第8位(読者第4位)選出の
この作品、
クイズ番組のシーンと
主人公の人生やインド社会を絡めて描く構成
は素晴らしいものがある。
しかし、
警察の拷問翌日が最終問題出題日との
設定の不自然さ等々、また、
あまりにも偶然過ぎる主人公の人生経験を
もっと幅広く、例えば、
主人公は米ドル紙幣の全てやインド紙幣にも
知識があった等の背景を創って、
迷いながらの綱渡りの解答の積み重ね
だったらリアリティを醸し出されたのでは
なかったかと残念だった。
別の方から、
「クイズ番組のシーンは創作で虚構」
との投稿があったが、確かに
そうとしか思えない位の都合の良過ぎだ。
しかし、創作・虚構であろうとなかろうと、
その設定は本論を描くための手段だからと
言われてしまったらそれまでだが、
総合芸術としての映画の手法としては
不充分に感じ、満足は出来なかった。
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