アラビアのロレンス 完全版のレビュー・感想・評価
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砂漠を知らないのに、砂漠を経験しているような臨場感。圧倒的な映像美。
砂漠の様々の顔。
目も眩みそうな蜃気楼。
灼熱地獄。
その合間の泉。あんな汚い水を、それでもありがたく、命をつなぐものとして、守っているのか。
駱駝のかわいらしさ。
馬の美しさ。
響くコダマ。
移動式のテント。そのしつらえ。
語りつくされるシーンの数々。圧巻。
この映画に浸るだけで、死生観さえ、変わってしまいそうな…。
そんな大地を背景に描かれる人間模様。
王子が、騎乗して飛行機に立ち向かおうと、周りを鼓舞する姿に、竹槍で戦おうとした日本人を見て、悲しく空しく…。
そして…。
今のパレスチナ・イスラエル問題の種を巻いた頃の話と聞く。
アラビアは、多くの部族が存在していて、それぞれ、相いれずにいたと聞く。
この土地の利権を巡って、様々な欧米諸国が絡んできたとも聞く。
付け焼刃では理解が追い付かないくらい混とんとしている時代(今もだが)。
だが、映画は、トルコの背後にいるドイツを叩きたいイギリスがアラビアと接触してと、単純に描く。フランスも、交渉相手として名前が出てくるくらい。
アラビア側も、最初の案内人の部族は名だけで、王子と、ハリト族のアリと、ハウェイタット族のアウダ・アブ・タイくらいしか、活躍する人物としては出てこない。
しかも、アラビア史を描くのではなく、ロレンスの伝記として、ロレンスの行動を追っているので、イギリス側や、王子たちの政治的駆け引きは、あとで”実は”と知らされるくらい。
おかげで、この時期の欧米やアラビアの歴史にとんと疎い私でも、映画についていける。
当時の欧米人の、欧米以外の国への見方としては当然なのだろうが、コーランを諳んじ、アラビア人に同化したいロレンスでさえ、「だからアラビアはダメなんだ」という意識はぬぐえない。上官の指導どころか、アリの助言も受け入れない。
砂漠の恐ろしさを知らないが故の奇策で功を奏すが、あの灼熱地獄の渡り方を知っているアリがいなかったら、成しえなかった奇策。
ハウェイタット族を味方に引き入れるのも、ほとんど詐欺のような…。アラビアの部族をまとめてとは程遠い。
ロレンスは英雄?確かに、一種の英雄ではあるのだろう。
”長”となるべく育てられ、自分がまとめるべき民の利益をまず考え、感情を抑え、動く王子、アリ、アウダ・アブ・タイ。
だから、アリはガシムを助けに行かない。命を懸けた使命が達せなくなるから。命すら危ない使命に一緒についてきてくれた大勢の部下達を率いることが優先。
アウダ・アブ・タイは、自分についてくる人々の実入りをまず考える。
王子は、あちらを立て、こちらを立てながら、目的を達する方法を探す。
それに対して、大局を見ているにも関わらず、一時の感情で動いてしまうロレンス。
リスクは考えない英雄的行動を、何の根拠もなく、遂行する。
予言者モーゼに自分をなぞらえ、無謀な行動をし、従者を死なす。
身近な人の死に耐えられず、砂漠に戻ることを拒否するのに、祭り上げられて、コロッと変更。
周りが自分と同じ理想を持たないと空回りした挙句、心配するアリの言葉を無視して、”透明人間”と、敵地にわざわざ赴くロレンス。誰も自分の命令を聞かないことに失意して”透明人間”と自虐しているのか、もう一人の従者も死んで自暴自棄になっているのか、それとも”神”に愛でられ”透明になるマント”でも持っている気になっているのか?
だが、透明人間であるわけがない。その時の傷つきが導いた”大量虐殺”?
人気者で、アリや従者をはじめ、アラビアの人々から慕われいているロレンス。だが、ロレンスにとって大事なのは彼らの心ではなく、ロレンスの理想であり、自分自身の気持ち。そのためには、簡単にアリをはじめとする人々の気持ちを裏切る。
部族連合でダマスカスを制したにも関わらず、相変わらずの勢力争いに、ロレンスは失意を覚えてという解説書もあるが、あのくらいの会議の混迷は、今の国会でも繰り広げられているシーンでもあり、第2次大戦の戦後処理だって、昔から今にかけての国連だって、似たようなものではないかと、今一つ、この映画では私にとっては腑に落ちない。
それよりも、王子の元への案内人を簡単に殺したアリにあんなに怒りを見せていたロレンスが、己の変わりように、失望しているように見える。
ガジムのこと以来、ロレンスを信頼して、一番の協力者であったアリ。敵地にも一緒に付き添ったアリ。そのアリが、だんだんと、ロレンスと距離を置き始め、ダマスカスの会議でも別れでは、他人行儀な挨拶をしていたのが、とても悲しい。
トリックスターとしての役割を果たしたロレンス。その無軌道ぶり、自滅ぶりに対して、理路整然と、自分が大切に思う相手へ信義を尽くせるアリやアウダ・アブ・タイ、王子の方が品格が上に見えてしまう。
なので、鑑賞後感が多少、もやもやしてしまう。
★ ★ ★
映像の迫力を開口一番に称えたいが、役者もすごい。
舞台俳優として活躍していたオトゥール氏。エジプトでは有名だったシャリフ氏。でも、映画界ではまだ無名だったので、有名人気俳優のクイン氏を起用したとか。
理想に空回りするロレンスを、繊細かつ大胆に演じたオトゥール氏。
そのロレンスに振り回されるアリを、凛とした格好良い友人として演じたシャリフ氏。
アウダ・アブ・タイを、豪放磊落、コメディパートを醸して演じたクイン氏。
王子を、思慮深く、老獪でありながら、父と民のためには誠実な人物として演じたギネス氏。
彼らが演じていなければ、また違う味わいになっていただろう。
☆ ☆ ☆
砂漠の地。灼熱・乾燥・砂嵐・流砂。
この映画を観ていると、その衣装、家の作り、コーランの教えでさえ、この地に叶ったものであることを実感する。
頭を覆う布。最近の夏の酷暑で、頭をこんな感じで覆う人が増えた。風通しがよく、それでいて重ね着もできるから、気温が下がった夜にも対応できる服装。女性が駱駝に乗っていた時は、ミニ箱をかぶっていたが、日差し除けには最適。でも見通しが効かず動きに制限があるから、動く役目の男性には不適であろう。休む時のミニテントは真似したい。
家。あれだけ砂嵐が飛ぶなら、固定の家など建てたら、すぐに砂に埋まってしまいそうだ。移動式に限るのだろう。
そして、「アッラーの思し召し」。「運命」。あれだけ、死のフラグが立ちやすいのなら、そうでも思わなかったら、心が折れてしまうのかもしれない。
かつ、強力なリーダーシップ。力を合わせなければやっていけない環境ゆえか。
今までの死生観が覆されたような気分になった。
アリさんがサリーちゃんのパパにしか見えない…
🍄2024年の野望🍄
《アカデミー賞作品賞》受賞作品制覇✨ 全95作品中記念すべき4作目✨✨
1963年作品賞受賞
『めちゃくちゃ長いよ〜しかもずっと砂漠の映像😂』となんだか観る気を無くさせる評判ばかり周りから聞いていたのでこれまで挑戦しなかった本作品。それでもアカデミー賞作品賞コンプを目指すなら避けては通れない道……ということでWOWOWさんの放送を録画してお家でゆっくり〜と思っていたら新文芸坐さんがまたしても超絶タイムリーに上映してくれるとな✨✨これはお家で観るより劇場のやつだろー!と観て参りました📽
まず冒頭から驚きの暗転、有名なテーマソングのオケ音楽のみ4分半の演奏。事前の場内アナウンスで聞いてなかったら“あれ?映像無いの??”と映写機の故障を疑ってたよ、絶対😂
基本的にこの映画ってこの超有名曲をいろんなテンポ、曲調、楽器使用で何度も繰り返し使用するから最初に刷り込んでおくつもりでこの4分半使ってるのかな??確かに効果覿面だったー。
英国軍の中では変わり者として知られるロレンス氏だったけど、砂漠の民たちの心を掴むのが上手かった。距離の詰め方、信頼を勝ち取る方法、その辺りをナチュラルにやってのける。途中、『VIVANTで観たヤツやーん!』となる場面も多いけど、砂漠のシーンが素晴らしい🌟
砂漠って砂砂砂の印象だったけど、いろんな表情を持つと知ってあたしもロレンス同様砂漠に魅せられてしまった(´∀`艸)♡♡
“There are only two kinds of creatures who find fun in the desert, bedouins and gods, and you are neither. ”と言われてたけど、あたしもロレンスも楽しめるタイプかとww
いや〜他にも書こうと思ったら次々と出てきてしまって収拾つかないからこの辺で。
歴史上の出来事、実在の人物、そして1962年に発表された作品でありながら壮大なスケール、今でいうブロマンス(やBL含む)なんかも織り交ぜられてて盛りだくさん。『2001年宇宙の旅』以来となる久々にインターバルのある作品観たけど、こっちは長さをあまり感じさせられることなく(イビキかいて寝てるオヂサンは結構居たけどw)もう一度でももう二度でも観たい作品。
大好き💕そして『イングリッシュ・ペイシェント』が観たくなったー🍀
大画面で観るべき映画‼️
まずこの作品の一番の見所は、砂漠という大自然の圧倒的魅力を70ミリの大画面に描いたところです‼️といっても、今時70ミリの上映方式を採用している映画館なんてありませんから、普通の映画館の大画面で観れば充分だと思いますが、常に映画館で上映しているわけではありませんので、なるべく大きなインチのテレビの大画面で観ましょう‼️ちなみに今地球上で最大のテレビサイズは370インチです‼️30年以上前に初見した際、四角テレビのブラウン管で鑑賞、後にワイドサイズで鑑賞した際、その画面の構図設計の緻密さに驚愕したものです‼️砂漠の向こうに、まるで蜃気楼のように一つの影が浮かび、それがだんだんと人の姿だとわかってくるロングショットにまず引き込まれます‼️このシーンは砂漠というものはどういうものかを我々に教えてくれる名シーンです‼️そしてラスト近く、ロレンスがオマー・シャリフ、アンソニー・クインとラクダの大部隊を従え "ダマスカスへ!"と進撃するシーンの高揚感はホント素晴らしい‼️そしてロレンスを演じるピーター・オトゥール‼️ロレンスというアウトサイダー的な人間が、理想と現実のギャップに突き当たって人間性がどんどん変化していくその過程が、この作品の一番のテーマだと思います‼️そして大画面にふさわしい迫力のあるモーリス・ジャールの音楽‼️ほんとに素晴らしいですね‼️
美しく恐ろしい砂漠の風景
午前十時の映画祭で鑑賞しました。この有名な映画、タイトルだけは知っていたものの見るのは初めてでしたが、こういうストーリだったのね。強く印象に残ったのは、前半部分の美しい砂漠の風景でした。美しくそして恐ろしい砂漠の風景は、冷房の効いた映画館のなかではあっても、夏に鑑賞すると砂漠に水を持たずにいることの恐ろしさが、なにやらうっすらと感じられます。
最初は、なにやら軽くてフワフワした印象のロレンスですが、段々と戦士の顔になってくるところは興味深かったですね。実在のロレンスの評価はさまざまだったようですが、映画をみた感想も同じような感じです。彼も苦悩していたのでしょうな。それにしても、砂漠の民は苛烈な環境で文化を育んでいただけに、その価値観や正義感も現代の日本に住む私には、到底理解できるものではありませんでした。
映画館での拘束が4時間近い大作でしたが、長さは感じませんでした。名作と言われる映画を鑑賞出来て幸せと思える時間でした。
雄大な砂漠と細か過ぎる人間模様
名作としての存在のみ認識している状態で午前十時の映画祭にて鑑賞。午前十時の映画祭には感謝です。
感想はタイトルの通りです。文句なしに名作でした。
ブリティッシュとベドウィン、ターキーの民族の違い、部族、民族の中での立場の違い、文化の違いと砂漠とのコントラストで表現したのかな、と感じました。そこに、ロレンスの虚無感、と自分には映る、にはまり込んでいく姿にやるせ無い気持ちになりました。
しかしなんだ?UKの二枚舌に翻弄されたのはアラブだけではなかったんですね。
これぞ!
映画館では初鑑賞。
この素晴らしい映像を映画館で味わえて良かった!
マッチ棒から砂漠に切り替わるシーン、遠くからアリが現れる井戸のシーン、大好きなシーンがいっぱい有ります。
インターミッションから先は、政治やロレンスの苦悩の話しが多くなるのは残念ですが。
それも含めて映画史に輝く傑作だと思います。
クソ長い映画
午前十時の映画祭で観た。
ジョジョ3部のジョセフのセリフ「わしゃ あのクソ長い映画「アラビアのロレンス」を3回も観たんじゃぞッ!」っていうのが大好きで、いつか観たいと思ってた。
長いってどんだけ長いのかと思ったら、227分だって。確かに長い。最もこれは完全版で、オリジナル版は207分。ジョセフが観たのはオリジナル版だろうなあ。
でもちゃんとインターミッションがあって、ちゃんとトイレ休憩できたのは良かった。ディズニーの「ファンタジア」はインターミッションがあるのに休む時間が無かったからなあ…。
あと、この映画1962年に公開!? こんな昔にこんなすごいスケールの映画がつくられてたなんて…。今観ても全然面白い。
広大な砂漠、英雄とされた人間の悲劇、人間の愚かさ、戦争や殺し合いの悲惨さなどを味わうように鑑賞した。現代の映画と違って演出やカメラワークが素朴なのが妙に生々しい。
歴史とか政治とかよく分からないので正直ストーリーがはっきりしないところがいろいろあって、観たあとにwikiで調べて、あー、そういう話だったのね、といろいろ気づいたりした。
ロレンスがアラブ独立に貢献したっていう単純な成功話なのではなく、どちらかというとうまくいかなかった失敗話、悲劇の話といえる。結局、この時代にうまくいかなかったことが種になり、ずっとアラブは近代化がうまくいかなくて、現代に至るまでずっと中東は政治的に不安定なまま。ロレンスがいなかったらもっと悲惨な状況だったのかもしれないが…。
一歩間違えれば、日本もアラブのようになっていたのかもしれない。幕末から明治にかけて、様々な人間の無私の功績があって、現代の安定した国家が存在しえているのかもしれない。欧米列強はたしかに脅威だけど、それ以上に平和や安定の障害になるのは「無知・無学」「短期的思考」「家意識・部族意識」だということがよく分かった。
史実のロレンスがどんな人物だったかは知らないけど、少なくともこの映画におけるロレンスは高い理想、広い視野を持ち、それゆえにその高い理想を理解できない周囲の人間に絶望する。
日本には日本国全体のことを考えられる人間が多くいたから、近代化に成功したのではないかと思う。現代の平和に感謝したい。
風とライオン
「驚いただろう?君たちはアラブを野蛮で残酷だと罵る。だがこれを見ろ、本当に残酷なのはどちらだね?」
午前十時の映画祭で鑑賞。
我が歴代映画ランキング第6位を20年間守り続けている本作。
完全版のDVDを買い与えられたのは13歳のときだった。以来お気に入りの1作で、それこそ嘗めるように観てきたものだ。高校では世界史を選択したが、最も試験の点が良かったのはイスラーム史だった。当然、背景にはこの作品がある。
では何故観たって?劇場で見たことがなかったからだ。音を楽しみに行ったと言うべきか。モーリス・ジャールのスコアが聴きたかったから行った。
これは…もし映画が好きならば好き嫌いに関わらず観ないといけない作品だと改めて実感した。しかも劇場で。太陽を、熱砂を、TVで目にして理解したつもりになっていたのが何とも情けなかった。こんな作品、二度と人類には製作出来まい。
サウンド以上の収穫は歳をとったからこその「見方の変化」に利息として現れた。初めて観たとき、僕にとってロレンス(演:ピーター・オトゥール)は「理想に燃えた悲劇のヒーロー」として映った。だが今回は真逆。(ナチス・ドイツを除けば)世界史上類を見ない最低最悪の偽善国家である大英帝国の魂胆を知りながら看過し、大言壮語でアラブを焚き付けたロレンスは「己を過信したペテン師」として映った。恐らく大英帝国の中でも1,2を争う悪行である「三枚舌外交」の片棒を担いだのだから、その罪は重く、「僕は知りませんでした」では到底済まされない。唯一の救いは終盤に彼自身がそのことに気付く点にあるが、時既に遅し、個人の力ではもはやどうにもならない局面まで事態は悪化していた。
キャストで見てみると、この作品は典型的なまでの「フットボール型」。もちろんロレンスはピーター・オトゥール以外考えられないくらいのハマり役なのだが、不滅の1作たらしめたのはアリ首長(演:オマー・シャリフ)とアウダ・アブ・タイ(演:アンソニー・クイン)の2人によるところが大きい。最後に点を決めるのはロレンスだが、この両翼がサイドを駆け上がるからボールは運ばれ、ロレンスのゴールへと結び付く。
このフォーメーションをチェスの如く組み上げたデヴィッド・リーン監督に改めて脱帽し、心からの敬意を表する。
4Kのデジタルリマスターの映像は映画館で見るべし
午前10時の映画祭 デジタルで蘇る永遠の名作。
このシリーズで見た。大画面、大音響、そして4Kの映像は素晴らしい。3時間47分。そんなに長くは感じなかった。1962年の作品。
NHKのドキュメンタリーでもロレンスの放送があったが、アラブを裏切ったことや反乱軍の指導者フェイサル王子とイギリスの通訳をしたことなどはこの映画には直接描かれてはいない。
多くのシーンは灼熱の広大な砂漠の中を延々とラクダとともに行進する過酷なシーン。そして、いくつかの激しい戦いのシーン。数多くのラクダや馬が入り交じる映像は、「実写」であり迫力がある。現代のような多方面のカメラアングルによるコマ割動画の連続やスローモーション、グロテスクなまでの殺され方などの演出効果はないが。
あまり歴史的な流れや地図上の位置関係を具体的に説明してくれないので、今どこで何が起こっているのかがつかみにくい。事前によく調べておくとより楽しめるのではと思った。
後半からはアラブとトルコの戦いなど、様々な動きが入り交じるので面白くはなるのだが、ロレンスも人間が変わったようになり、どうもスッキリしない。
もっと史実に忠実だったらと思うが。1962年公開の時点では限界?
イギリスの思惑でアラブとトルコを戦わせ、アラブには独立を匂わせるがそのつもりはなく、イギリスの石油資源確保のための利用に過ぎなかった。
映画館で見るべき作品
素晴らしい、余りにも素晴らしく偉大な作品。機会があれば、劇場にて鑑賞して欲しい。一人の稀有な人間の生涯を見事に演じたピーター・オトゥール、個性の強い優れた役者陣の素晴らしい演技、演出、舞台美術、脚本、映像の美しさ等々。映画の真髄を全てパッケージにしたこれこそが映画であると言っても過言ではないだろう。特に砂漠の美しさに息を呑んでしまう感覚を堪能してもらいたい。
リマスターされ続ける名画中の名画
あるイギリス軍人の栄光と挫折。砂漠と荒地が果てしなく広がる異世界を冒険した男の物語。セリフが示唆に富んでいて何度観ても面白い。結構パーソナルな映画ではあるが、やはりイギリス、アラブ諸国、トルコの関係など、現在の政情と比べると大変に面白い。
当たり前だが、これがCGあと処理なしのロケ撮影だと思うと感心してしまう。幾つかのシーンは誰の目にも焼きつく名画中の名画。VHS、DVD、ブルーレイ、4k版とこれからもリマスターされ続けるのだろう。
【”アラブ人にアラブの誇りを取り戻させるために。”若きピーター・オトゥール演じる”エル・オレンス”の姿を、故伊丹十三氏のエッセイを絡めて記す。】
■1916年。イギリス陸軍少尉・ロレンス(ピーター・オトゥール)は、オスマントルコ帝国からの独立を目指すアラブ民族の情勢を確かめるため現地へ向かう。
反乱軍の現状を目の当たりにした彼は、アラブの種族をまとめ上げてゲリラ戦を展開。
拠点をめぐる激戦に勝利するまでになるが…。
◆感想
・ご存じの通り、今作はオリジナル版(207分)と、1995年に公開された227分の完全版がある。私が学生時代に名画座で観たのは、年代的にもオリジナル版である。
ー インター・ミッションて何々??と言いながら、WCに駆け込んだなあ・・。
それにしても、私がコロナ禍以降に劇場で観た「ベン・ハー」「風と共に去りぬ」などは、皆3時間を超える長尺である。
インド映画ではないが、1960年代の傑作映画は皆、インターミッションがあったのかなあ・・。更に言えば、今作同様「ベン・ハー」でも、本編がナカナカ始まらない・・。
“放置プレイか!と思ってしまったぞ!”-
・ロレンスを演じた当時30歳のピーター・オトゥールの金髪、碧眼の美しさには、今でも惹かれる。
ー 因みに、ピーター・オトゥール氏はアイルランド人である。この辺りも、是非、伊丹十三氏のエッセイで、お楽しみ願いたいところである。-
・冒頭のロレンスが、バイク事故するシーンはピーター・オトゥールの友人であった、伊丹十三氏のエッセイをそのまま記す。
- ”スタンド・インなど使わなかった。””そりゃ、随分危ないじゃないか!””勿論危ないさ、だからあのシーンは撮影最後の日にやらされた・・。”-
・又、今作ではロレンスが難攻不落のアカバを内陸から攻め落とし、彼の名を高らしめるシーンがあるが、このシーンでのピーター・オトゥールの発言も興味深い。
ー 何千頭の駱駝が全速力で掛けるシーン。ピーター・オトゥールは先頭に立っていたそうであるが、落ちてしまったそうである。誰もが彼が死んだと思っていたら、駱駝はそういう場合、上に被さって守る性質を持つ生き物であるそうである。
で、ピーター・オトゥールが、ゴソゴソと駱駝の下から這い出した時に今作の監督である、デヴィッド・リーン監督が彼に掛けた言葉が、相当凄い。
”どうかね、ピーター。次のカットは取れるかね?”
ピーター・オトゥールは”こいつは、鬼だ!”と思ったそうである。
彼が、未だ大スターになる前であるが、当時の映画製作の現場の状況が見えて来るようである。ー
<勿論、今作の砂漠の彼方に沈む数々の夕日のシーンや、ロレンスの想いがアラブの部族を越えた民に認められ、彼が”エル・オレンス”と呼ばれ、慕われて行く姿や、彼の理念が大英帝国の思惑に会わずに、彼が失意の中、事故死する冒頭のシーンとの連想性も見事なる作品である。>
■オリジナル版と完全版を鑑賞。
映画史上に燦然と輝く名画中の名画!!
命をかけて自ら前線の渦中に立ちトルコと戦い中東諸国の独立に尽力したイギリスの軍人T・E・ローレンスさんの波乱の人生を描く歴史超大作
主人公のちょっと変わってるけど、学問に長け、軍規や上官への反骨精神を持ち、そして何より大きな戦果によって中東の現地人から絶大な信用を勝ち取り独立活動を成功に導く英軍人ローレンスをピーター・オトゥールさんがエネルギッシュに熱演し魅力的です
そしてなんと言っても本作の最大の見所は巨匠デビッド・リーン監督など作り手が徹底的にこだわった映像美、
・真っ白な砂漠と真っ青な空の美しいコントラスト
・砂漠に浮き沈むサンライズとサンセットの息をのむカット
・荒野に巨大な渓谷がそびえ立つ自然の彫刻美
・ラクダや馬に乗って大群衆が砂漠を疾走するのは、同時代に生まれた名画"ベン・ハー"の戦車競技シーンに勝るとも劣らぬダイナミックなド迫力映像
・列車襲撃の大爆破シーン
と、現代では簡単にCGで済ませてしまうであろう映像を全てライブで撮りきる徹底したこだわりぶり
しかも本作は、それらの見事な映像を70mmフィルム方式の作品として残すべく製作されたため、ただでさえ撮影機材が大きい上に砂漠の熱波でダメージを受ける大型フィルムを保護するために食料保存機器に保管するなど、スタッフの並々ならぬ努力で苦難を乗り越え後世まで語り継がれる歴史超大作の誕生という偉業を残しました
とにかくベン・ハー同様に人も時間も巨額な金もありったけ注ぎ込んだ映画史上に燦然と輝く金字塔的作品、1962年に製作されたとは思えない圧巻のクオリティ、227分があっという間に過ぎていき、終わった直後にまた始めから観たくなる魅力的な名画中の名画です!
植民地政策のなれの果ての悪い平和。
内容は第二次世界大戦前の1910中頃の中東を統治するオスマントルコが無くなりトルコとして🇹🇷領土を拡大しようとする最中、横槍を入れ植民地化しようとするイギリス🇬🇧とフランス🇫🇷の政治的側面と中東独立に一役買いヒーローとなったイギリス人でありアラブ人の一人の男(T.E.ロレンス)の視点から描かれる物語。好きな言葉は『私が敬愛し恐れた男は己を恐れ憎んでいる』ダマスカスを攻略しアラブ国民会議がイギリス🇬🇧やフランス🇫🇷よりも早く占拠したにも関わらず纏まりのないアラブ国民会議に挫折し、虎視眈々と中東資源を狙う欧州の政治に振り回されながら『政治は汚い!』といった主人公に対して一番の側近が積年の思いを主人公に重ねて振り絞る言葉の重みが良かった。『平和は老人の様に醜い、あるのは不信感と警戒心の渦巻く駆け引きだけだ…』最後の最後に大佐となったロレンスにアラブの国王となる人に掛けられる乾きにも似た事実と現状。その時のロレンスの力亡き顔とスッキリしない表情は外面と内面の矛盾に苦しんでいるようで非常に感慨深いものがありました。歴史的にあった事実に即した物語で結果ロレンスはイギリス人でもアラブ人でも何人でもない存在となり結局は要が済めばどちら側からも迷惑な存在と使い捨てられる所が何とも言えない。それにしても砂漠の雄大な🏜景色や登る朝日に沈む夕日ラクダの🐪大群に馬の🐴荷台など素晴らしいロケーションとカメラワークで圧倒され唖然としていまいます。この景色を映画館で観ることができなかった事を後悔しました。
マイベスト Motion Picture
壮大なスケール、示唆に富んだ数多くの名シーンそして名台詞の中から浮かび上がる1人の男の栄光と挫折。
デビッドリーンの最高傑作にして個人的にも不動のナンバーワン。リバイバル上映を劇場で観れたのは本当にラッキーでした。DVDでも部屋を暗くして序曲からインターミッション、間奏曲を挟んで終曲まで全編余すこと無く堪能し定期的にあの砂漠へ旅に出ます。
音楽、演技、演出、美術、撮影、編集、衣装全てが神がかっていて、これほどまでに格調高い映画はCGなどの技術ばかりが発達した今となっては、もう出てこないのではないでしょうか。
19歳の思い出
Netflixに入っているのを知り、何となく観始めた。
高校時代に憧れていた方と予備校1年を経て、初めて異性(母親とは別)と最初に観た映画になる。
初見は19歳、1987年。私は62年生まれなので、当然、名画座での鑑賞、場所は札幌市の北24条、「シネマ23」。
現在の札幌は札幌駅、大通り、ススキノがメインの街並みだが、当時は北24条も映画館がピンクを含めて3館あり、第二のススキノとして活気があったのだ。
観た当時は初めて異性と観た映画ということで、緊張もあったのか何も覚えていない。Intermissionがあったのが不思議と覚えており、その時にトイレに行ったことは鮮明に覚えている。
当時の映画館の売店は洒落たものはなく、清涼飲料水(まだ、お茶のペットボトルや缶はなかった)は無く、何故か「カルミン」があった事を覚えている。
その女性とは、その一回のデート(なのかな)のみで、その後は交流は無かった。
そして、改めてみた、この映画。
凄い、まずCGでは無い映像の凄さ、そしてヒーローではないロレンスの葛藤、4時間に及ぶ長尺が全く苦痛では無かった。
シネマ23は無くなったが、今、自分はその場所から歩いて1分のところに住んでいる。
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