グラン・トリノのレビュー・感想・評価
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名人芸の演出と究極の格好良さ
主役のキャラクターとしたら、有り得ないような偏屈さだ。しかし、頑迷というのとも違う。「しつこい」と毛嫌いしている筈の、何度拒絶されてもめげずに説得を続ける神父の話を、結局は真摯に耳を傾けていた酒場のシーンが証明しているだろう。
彼の偏屈さには筋が通っているのだ。ウォルトのこだわり、そのひとつひとつに私は共感を覚えた。人種差別と汚いののしりのオンパレードなのだが、だからだろうか、突き抜けた人物造型が爽快でもあった。
彼の偏屈さの最大の理由は、朝鮮戦争での罪悪感であり「自分を許せない」ことにあるのだ。自分を許せない人生は不幸だ。体調も悪く、人生の終焉が近いことを知った「生よりも死に詳しい」ウォルトが次第にタオ一家との交流を通じて心を開いていく様子は、何とも言えない優しさに満ちていて感動する。
この展開を先が読めるなんて言ってはいけない。その人物造形の確かさ、こんなに笑って良いのかと思うほどの洒落た会話の数々、心温まるエピソードの数々を堪能すべきなのだ。
そう、素直に、どれだけ笑えるか、これがこの映画を楽しめるバロメータだろう。特に床屋でタオに「男らしい会話」を教えるシーンは最高だ。
それにしてもクリント・イーストウッドは格好良い。
まるで神から最後の祝福を受けたかのような幸せを守るために、彼が最後に取った行動は、それこそ、「史上最も優しい衝撃のラスト」に相応しい。いかに今までの人生を生きてきたか、彼は見事に、それを証明してみせる。
是非、この深い余韻をたくさんの人に味わって貰いたい。
エンドロールの歌。必聴です。
2004年『ミリオンダラー・ベイビー』以来のクリント・イーストウッド出演作品。この作品では、監督・製作も兼ねています。
華が無く、家族からも疎まれ、社会の表舞台で大活躍をする事も無く老境に入った朝鮮戦争帰還兵ウォルト・コワルスキーをクリント・イーストウッドが非常に上手く演じています。そしてその演技は、渋いです。クリント・イーストウッドの映画で、明るい作品は少ないのですが(失礼!)、この作品もその法則に従っています。
この作品のもう一人の主人公は、ウォルトの隣家に引っ越してきた、アジアの少数民族モン族(と、映画では言っていますが、“ベトナム戦争で米軍に協力したため、後の共産勢力に迫害されてアメリカにやってきた”と言う説明の件からして、実際にはどうもミャオ族の様です)の家族。その一家の少年タオを演じるビー・バンですが、冴えないモン族の少年を非常に上手く演じています。ウォルトに何かと鍛えられながら(?)、徐々に自分に自信を付けて行きます。
そしてそのタオの姉スーを演じるのは、アーニー・ハー。彼女が、タオと自身を助けてくれたウォルトに何かと世話を焼く事でウォルトの心が徐々に開いて行くことが良くわかります。ああ言う強い姉さんがいると、弟はタオのように成りがちなような気がしますが、どうでしょう。
『生と死』。これが、この作品のテーマでしょうか。ウォルトが、あのような“計画”で最後を迎えた事も、タオに、自身が経験した辛い経験を味あわせたくないと言う“真の生と死”の意味を知ったウォルトだからこそ取り得た“計画”なのでしょう。
ここからはネタバレになりますが、最後にウォルトがスーツを仕立て直しているとき、「スーツ姿で、討ち入りか?」と思ったのですが、違いましたね。その間違いには、タオを地下室に監禁したところで気が付きました。それでも、最後の結末までは、予想できませんでした。
最後に。エンドロールに流れる歌は、クリント・イーストウッドが歌っています。何とも渋くて、いい味わいです。
ウォルトの人生講座
人を寄せ付けない性格で,
皮肉屋の頑固オヤジ,ウォルト・コワルスキーが,
ある日,隣人を助けたことで,
少しづつ温和な表情に変わってゆく。
最後にとった行動は,賢い復讐で感心。
「争いはもう沢山だ」の集大成。
グラン・トリノとともに生き続けるラストが美しい。
前向きな可能性を秘めている「出会い」の輝きと,
「思い」と「痛み」に置き換えられる「生と死」のドラマを,
余韻深くストレートに伝えてくれた。
いぶし銀の存在感を見せたクリント・イーストウッドが素晴らしい。
イーストウッドのツンデレ演技がみもの
イーストウッド作品というとシリアスという先入観を持って見ると、前半の笑えるパートの多さに驚く。最初はいかにもな頑固じじいとして登場する。やがてアジア系移民の少年タオと親しくなると彼にアメリカ流の行き方を伝授する。ここは教育のパートとなるわけだが、「お前が認めているわけじゃないんだぞ」というイーストウッドの不器用な愛情表現が良い。
もちろん終盤には修羅場が待っているわけだが、結末は予想できないとは言わないがやや意外な方へ行く。最近のイーストウッド作品はどちらかというと組織論、末端を気遣わない上層部という構造を描くのがうまかったが、ここでは個人を描いている。その行動は見事といえるものだが、本人もそれが時代遅れだと知っているからか、やはり寂しさも漂うものになっている。
スコアに関しては何点を付けたらいいかわからないので、とりあえずB+。
クリント・イーストウッドにしては一寸がっかり
クリント・イーストウッドは監督としても、素晴らしい人です。硫黄島からの手紙は最高。日本人がこの映画をつくれなかったのが残念。 それで、この映画もかなり期待して行った。良い映画ではあったが、彼のベストではない。 彼の良さは、どの映画も 愛があること、作り物でなく 血の通った登場人物 ストーリーということ、反権力、巨大な体制 又は 巨大な悪に対する反抗心があること。 ヒューマニズムを感じさせるところ。許されざる者 という西部劇で 銃弾に当たった痛みを感じさせた描写は とても伝統的な西部劇映画にはなかった驚きが感じられた。 彼には日本人に通ずるハートを感じる この映画の結末も 日本的 或いは サムライ精神的なものであった。 かなりの年だが、まだまだ頑張って良い映画を作って欲しい!
余韻が残る映画でした
人種問題は、アメリカっぽいなぁと思いながらみていましたが、どんどん映画の中に引き込まれて時間を感じない映画でした。試写会で見ましたが、会場でポロポロと泣き、自宅に戻ってもジーンとして様々なことを考える時間をくれる映画でした。クリント・イーストウッドは、やっぱりカッコよかったです。
しなやかに。
試写会に行ってきました。
イーストウッド作品でUS最高興収はダテじゃありませんでした。
単純にイイ映画でした。
最期の…今際の際がなんともかっこよく、泣けます。
イーストウッドの背中に涙です。
心がほっこりして、温かい気持ちになれます。
終り方としてはバッドエンドかもしれないけれど、後味は爽やかです。
哀しい涙ではなく、希望の涙が流れます。とてもいい映画でした。
しかし、映画タイトルとポスターが微妙ですね。
この映画のよさを伝え切れていない気がします。そこが勿体ない!
とにかく最高!
私のつたない言葉で、この映画の素晴らしさを表現するのは、難しい!そんな作品です。
人の人生は、関わる人によって、大きく左右される。
少年にとっても、イーストウッド演じる老人にとっても、お互いとの出会いが、最高のものだったんだなぁって、この映画を見て感じました。
もういちどみたいです。
寂しく、悲しく、美しいお話
ヒーローのいないヒーロー物です。
爽快感はないけれど、地に足をつけた生き方とは何かの問いへ、冷静に応えてくれたお話だと感じました。
年をとってもなおダンディさを失わないクリント・イーストウッドには脱帽するばかり。
どの年代の方でも楽しめる傑作です。
クリント・イーストウッドにはまだまだたくさんの映画を作っていただきたい!
素晴らしい!批評通りの傑作です!
一昨日の試写会で観ましたが、もうこんなに素晴らしい映画に出会えるなんて 今年は幸先がいいですなあ!
「ベンジャミン・バトン」とともに 早くも今年のベスト5に入るような作品を観ることが出来て 幸せです!
映画作家としてのクリント・イーストウッドが「硫黄島からの手紙」に続けて 日本人の立場からしても関心を持たざるを得ないこのような作品を作り続けている時代に自分も映画ファンとして立ち会えることか出来て本当に良かったと思わざるを得ません!
クリント・イーストウッドの優しい眼差しがセリフひとつひとつに宿っているようで あの人はもう天才ですね。
全米では今年早々の公開でNO.1の興行成績ですが 今もってこんなに地味な題材で しかもアジア系移民のネタで多くのアメリカ人を集めてしまうなんて やっぱりアメリカの良心は生きているって証なのでしょうか?オバマの影響が少なからずあるのでしょうか?!
銀落としというらしいですが、現像の段階でわざと全編をシリアスなまでにくすんだ色調に押さえ込んでいるのですが、舞台である自動車メーカーの本拠地という設定にぴったり。
現代のアメリカを象徴しているような住宅街で起こる ある悲劇を描いています。全米の批評のとおり これは「ダーティハリー」のキャラハン刑事の後日談のようなストーリー展開にあの時代を知る映画ファンは必ず納得するはず。
無名俳優たちが多いようですが、キャスティングもうまい!
とにかく 昔で言えば「卒業」のように登場する人たちの性格やら 顔立ちまでもが わかり易く誰にでも素直にこの街の住人になって 入り込んでしまえますね。
主人公は長年フォードに勤めていたにもかかわらず 溝が出来ている息子は日本車のセールスマンをしているという設定なので 主人公の愛妻を亡くしての葬儀のシーンから始まって映画のいたるところに「イエローモンキー」を代表とするような人種差別語のオンパレード!
これが自動車の街の現実の姿なのでしょうが これでもかと白人至上主義の塊のような頑固一徹な親父の性格が披露されていきます。
隣に引っ越してきていても それが大嫌いなアジア人であるという理由から一切の関わりを持とうとしない主人公が ある事件からこの隣家の青年と心を通わせていくわけですが そのプロセスのなんとも面白いこと。セリフひとつひとつが実に大切な映画でもあります。
それは 理解のない味気ない身内より あれだけ大嫌いだったアジア人の一家に安らぎと自分に生きる証を見つけていく主人公の心の変化が そのセリフひとつひとつの変化とともに わかりやすくこちらに伝わってくるからです。
ですから 後から思いだせば この映画で使われる差別用語のなんと多いこと! コメディタッチに ここまでポンポン使われると いい加減観る側も麻痺してしまうぐらいです。だが、しかしそれだからこそ衝撃
のラストでの印象が更に深まるようにしくんであるわけで・・・
でも決してそれもわざとらしくはありません。
邦画ならついつい お涙頂戴的になる展開ではありますが 爽やかな涙で目頭が熱くなってしまうこと請け合いです。
さすがイーストウッドらしく アジア人差別といっても 日本車などストーリー展開上日本をあて付けにするセリフは出しながらも「頭のいいアジア人」というセリフなど そのあたりは興行的にも日本など特定のアジアの国を選んではおらず、隣家のアジア人自体にモン族という少数民族を持ってきている点で アジア各国からの批判も出ないように配慮していますね。
テーマでもある「グラン・トリノ」という名クラシックカーの登場のさせかたも 観ている最中は物足りなさを感じてちょっと疑問を感じる部分はあるのですが、緻密に計算されている脚本だから盛り上がるようにしっかり計算されていて結局はそれが成功しているわけです。
とにかく 俳優人生の最終章にさしかかったイーストウッドが そのシナリオを読んで 納得共感して 監督・主演を即座に決めたというこの才能ある新人脚本家にも注目です。
題材的にも日本でも大ヒットして欲しい作品です!
必見です!
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