グラン・トリノのレビュー・感想・評価
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イーストウッド 天才!
この映画、公式ホームページに有るコピーの
今、大人が迷う世の中。でも、この男がいる。
そのまんまだと予想して見に行くと
『全然違うじゃん!』
ってな感じになります。
“腕っ節が強い、古き良き時代のアメリカの男が復活する話し”
では有りません。(私はそう思って見ていました)
もっとしっとりした、感慨のあるストーリーで、
じっくりと見たい映画です。
派手なアクションやお金のかかったセットはまるで無し。
情緒が有り、ウイットに富んでいて、リアルで
アメリカよりヨーロッパの香りがします。
製作に ワーナーブラザーズ が挙がっていますが
もし俳優・監督がクリント・イーストウッドじゃなかったら
お金出さなかったんじゃないかなって位
地味な内容です。
多分この作品については沢山の方がコメントを書くと思うので
私は印象に残った大切だと思える事だけを書きます。
冒頭シーン、主人公の妻の葬式に孫が出席します。
私はその孫達の、
色は黒いけどへそを出した服やおざなりな態度、
それを見て笑っている親や周りの人達を
『日本とは違うし、こんなもんだろうね。』
と違和感を覚えずに見ていました。
そしてラストでも葬式が出てきます。
そこではそんなアメリカ人(この場合白人)とは対極に
(多分)第一礼装をした少数派民族の人が出てきます。
そこに有る
“敬意”
の部分をクリント・イーストウッドは描きたかったんじゃないかなって
思いました。
それは生きている事への敬意であり、
死に行く人への敬意です。
とてもシンプルな映画だと感じました。
これは自分を大人だと自覚する男性には絶対お勧めできます。
特に
独りになりたい、だとか、独りを楽しみたい
そんな時。
あとは子供のいる夫婦。
家族のあり方を考えさせてくれます。
あっ、念のため。
歳の若いカップルや、甘いカップル向けではないと思います。
次世代へのメッセージ
「グラン・トリノ」
それはひと昔前のアメリカ・フォード社の大型車である。
ある意味、大量生産・大量消費・大量廃棄の時代の遺物ともいえる。
でも、主人公はこの車をつくることに愛情を込めていた。
一方、主人公の息子はトヨタのディーラーである。
時代にあっているんだろうが、彼は車そのものよりも売ることに余念がない、
経済合理主義だ。
そんな親子の関係は破綻している。
そんなとき、隣に引っ越していたモン族の家族。
そこには、忘れかけていたコミュニティがあった。
特に、そこの姉には、至極真っ当な主張とプライドがある。
その弟は人生に迷っているが、誠実さを感じることができる。
主人公と、少数民族の家族たちとの交流が楽しい。
遠くの親戚よりも近くの他人。
同じアメリカ人よりも、マイノリティとされる人たちに、
シンパシーを感じる。それは人間愛に近いものだと思う。
クリント・イーストウッドの視点には、いつもいつも、
共感してしまう。
「硫黄島からの手紙」の日本人へのまなざしにしても、
「チャンジリング」の母親・女性へのまなざしにしても、
今回の「グラン・トリノ」のモン族へのまなざしにしても、
その視点はひとつの民族を超えて、人間そのもの、いや、
生きとし生けるものへの限りないやさしさを
を感じずにはいられない。
この映画のクライマックスは、イーストウッド映画のファン
謎解きを提出しているように見える。
「荒野の用心棒」や「ダーティ・ハリー」の頃とは解決手段が
変わったけれど、それはひとつの時代のおわりであるとともに、
次世代へのメッセージのようにも思えるのだ。
「チャンジリング」に続いて、間髪をいれず、こんなに
すばらしい映画を見ることができたことに感謝したいと思う。
クリント・イーストウッドの回答
前2作は戦争映画、しかも米国、敵国日本の両視点からの映画。
もう、この辺で彼のメッセージはバリバリ、外部に発せられているわけですが、次は暴力と人種に絞り込んできました。これは、世界にというよりもアメリカに対する映画なんだと思います。アメリカのIMDbで極めて高得点(現時点で8.4)というのも何となくわかります。
途中のスーの魅力あふれる演技、タオの成長、とにかくアジア俳優が魅力的なんですが、主演のクリント・イーストウッドの前半の悪い人物像のこと・・・。
しかし、全ては最終的に彼の最終選択に集約します。これが、彼のメッセージなんです。これが、最終的に彼の考える平和の道なのかもしれません。
昨日見たスラムドッグ・・・には及びませんが、じんわり「あー、やっぱ映画っていいな・・・。」と思わせてくれる映画です。クリントと同年代のアラ還(またはオーバー還)のお父さん方、是非おすすめです。
名人芸の演出と究極の格好良さ
主役のキャラクターとしたら、有り得ないような偏屈さだ。しかし、頑迷というのとも違う。「しつこい」と毛嫌いしている筈の、何度拒絶されてもめげずに説得を続ける神父の話を、結局は真摯に耳を傾けていた酒場のシーンが証明しているだろう。
彼の偏屈さには筋が通っているのだ。ウォルトのこだわり、そのひとつひとつに私は共感を覚えた。人種差別と汚いののしりのオンパレードなのだが、だからだろうか、突き抜けた人物造型が爽快でもあった。
彼の偏屈さの最大の理由は、朝鮮戦争での罪悪感であり「自分を許せない」ことにあるのだ。自分を許せない人生は不幸だ。体調も悪く、人生の終焉が近いことを知った「生よりも死に詳しい」ウォルトが次第にタオ一家との交流を通じて心を開いていく様子は、何とも言えない優しさに満ちていて感動する。
この展開を先が読めるなんて言ってはいけない。その人物造形の確かさ、こんなに笑って良いのかと思うほどの洒落た会話の数々、心温まるエピソードの数々を堪能すべきなのだ。
そう、素直に、どれだけ笑えるか、これがこの映画を楽しめるバロメータだろう。特に床屋でタオに「男らしい会話」を教えるシーンは最高だ。
それにしてもクリント・イーストウッドは格好良い。
まるで神から最後の祝福を受けたかのような幸せを守るために、彼が最後に取った行動は、それこそ、「史上最も優しい衝撃のラスト」に相応しい。いかに今までの人生を生きてきたか、彼は見事に、それを証明してみせる。
是非、この深い余韻をたくさんの人に味わって貰いたい。
エンドロールの歌。必聴です。
2004年『ミリオンダラー・ベイビー』以来のクリント・イーストウッド出演作品。この作品では、監督・製作も兼ねています。
華が無く、家族からも疎まれ、社会の表舞台で大活躍をする事も無く老境に入った朝鮮戦争帰還兵ウォルト・コワルスキーをクリント・イーストウッドが非常に上手く演じています。そしてその演技は、渋いです。クリント・イーストウッドの映画で、明るい作品は少ないのですが(失礼!)、この作品もその法則に従っています。
この作品のもう一人の主人公は、ウォルトの隣家に引っ越してきた、アジアの少数民族モン族(と、映画では言っていますが、“ベトナム戦争で米軍に協力したため、後の共産勢力に迫害されてアメリカにやってきた”と言う説明の件からして、実際にはどうもミャオ族の様です)の家族。その一家の少年タオを演じるビー・バンですが、冴えないモン族の少年を非常に上手く演じています。ウォルトに何かと鍛えられながら(?)、徐々に自分に自信を付けて行きます。
そしてそのタオの姉スーを演じるのは、アーニー・ハー。彼女が、タオと自身を助けてくれたウォルトに何かと世話を焼く事でウォルトの心が徐々に開いて行くことが良くわかります。ああ言う強い姉さんがいると、弟はタオのように成りがちなような気がしますが、どうでしょう。
『生と死』。これが、この作品のテーマでしょうか。ウォルトが、あのような“計画”で最後を迎えた事も、タオに、自身が経験した辛い経験を味あわせたくないと言う“真の生と死”の意味を知ったウォルトだからこそ取り得た“計画”なのでしょう。
ここからはネタバレになりますが、最後にウォルトがスーツを仕立て直しているとき、「スーツ姿で、討ち入りか?」と思ったのですが、違いましたね。その間違いには、タオを地下室に監禁したところで気が付きました。それでも、最後の結末までは、予想できませんでした。
最後に。エンドロールに流れる歌は、クリント・イーストウッドが歌っています。何とも渋くて、いい味わいです。
ウォルトの人生講座
イーストウッドのツンデレ演技がみもの
イーストウッド作品というとシリアスという先入観を持って見ると、前半の笑えるパートの多さに驚く。最初はいかにもな頑固じじいとして登場する。やがてアジア系移民の少年タオと親しくなると彼にアメリカ流の行き方を伝授する。ここは教育のパートとなるわけだが、「お前が認めているわけじゃないんだぞ」というイーストウッドの不器用な愛情表現が良い。
もちろん終盤には修羅場が待っているわけだが、結末は予想できないとは言わないがやや意外な方へ行く。最近のイーストウッド作品はどちらかというと組織論、末端を気遣わない上層部という構造を描くのがうまかったが、ここでは個人を描いている。その行動は見事といえるものだが、本人もそれが時代遅れだと知っているからか、やはり寂しさも漂うものになっている。
スコアに関しては何点を付けたらいいかわからないので、とりあえずB+。
クリント・イーストウッドにしては一寸がっかり
クリント・イーストウッドは監督としても、素晴らしい人です。硫黄島からの手紙は最高。日本人がこの映画をつくれなかったのが残念。 それで、この映画もかなり期待して行った。良い映画ではあったが、彼のベストではない。 彼の良さは、どの映画も 愛があること、作り物でなく 血の通った登場人物 ストーリーということ、反権力、巨大な体制 又は 巨大な悪に対する反抗心があること。 ヒューマニズムを感じさせるところ。許されざる者 という西部劇で 銃弾に当たった痛みを感じさせた描写は とても伝統的な西部劇映画にはなかった驚きが感じられた。 彼には日本人に通ずるハートを感じる この映画の結末も 日本的 或いは サムライ精神的なものであった。 かなりの年だが、まだまだ頑張って良い映画を作って欲しい!
余韻が残る映画でした
しなやかに。
とにかく最高!
寂しく、悲しく、美しいお話
素晴らしい!批評通りの傑作です!
一昨日の試写会で観ましたが、もうこんなに素晴らしい映画に出会えるなんて 今年は幸先がいいですなあ!
「ベンジャミン・バトン」とともに 早くも今年のベスト5に入るような作品を観ることが出来て 幸せです!
映画作家としてのクリント・イーストウッドが「硫黄島からの手紙」に続けて 日本人の立場からしても関心を持たざるを得ないこのような作品を作り続けている時代に自分も映画ファンとして立ち会えることか出来て本当に良かったと思わざるを得ません!
クリント・イーストウッドの優しい眼差しがセリフひとつひとつに宿っているようで あの人はもう天才ですね。
全米では今年早々の公開でNO.1の興行成績ですが 今もってこんなに地味な題材で しかもアジア系移民のネタで多くのアメリカ人を集めてしまうなんて やっぱりアメリカの良心は生きているって証なのでしょうか?オバマの影響が少なからずあるのでしょうか?!
銀落としというらしいですが、現像の段階でわざと全編をシリアスなまでにくすんだ色調に押さえ込んでいるのですが、舞台である自動車メーカーの本拠地という設定にぴったり。
現代のアメリカを象徴しているような住宅街で起こる ある悲劇を描いています。全米の批評のとおり これは「ダーティハリー」のキャラハン刑事の後日談のようなストーリー展開にあの時代を知る映画ファンは必ず納得するはず。
無名俳優たちが多いようですが、キャスティングもうまい!
とにかく 昔で言えば「卒業」のように登場する人たちの性格やら 顔立ちまでもが わかり易く誰にでも素直にこの街の住人になって 入り込んでしまえますね。
主人公は長年フォードに勤めていたにもかかわらず 溝が出来ている息子は日本車のセールスマンをしているという設定なので 主人公の愛妻を亡くしての葬儀のシーンから始まって映画のいたるところに「イエローモンキー」を代表とするような人種差別語のオンパレード!
これが自動車の街の現実の姿なのでしょうが これでもかと白人至上主義の塊のような頑固一徹な親父の性格が披露されていきます。
隣に引っ越してきていても それが大嫌いなアジア人であるという理由から一切の関わりを持とうとしない主人公が ある事件からこの隣家の青年と心を通わせていくわけですが そのプロセスのなんとも面白いこと。セリフひとつひとつが実に大切な映画でもあります。
それは 理解のない味気ない身内より あれだけ大嫌いだったアジア人の一家に安らぎと自分に生きる証を見つけていく主人公の心の変化が そのセリフひとつひとつの変化とともに わかりやすくこちらに伝わってくるからです。
ですから 後から思いだせば この映画で使われる差別用語のなんと多いこと! コメディタッチに ここまでポンポン使われると いい加減観る側も麻痺してしまうぐらいです。だが、しかしそれだからこそ衝撃
のラストでの印象が更に深まるようにしくんであるわけで・・・
でも決してそれもわざとらしくはありません。
邦画ならついつい お涙頂戴的になる展開ではありますが 爽やかな涙で目頭が熱くなってしまうこと請け合いです。
さすがイーストウッドらしく アジア人差別といっても 日本車などストーリー展開上日本をあて付けにするセリフは出しながらも「頭のいいアジア人」というセリフなど そのあたりは興行的にも日本など特定のアジアの国を選んではおらず、隣家のアジア人自体にモン族という少数民族を持ってきている点で アジア各国からの批判も出ないように配慮していますね。
テーマでもある「グラン・トリノ」という名クラシックカーの登場のさせかたも 観ている最中は物足りなさを感じてちょっと疑問を感じる部分はあるのですが、緻密に計算されている脚本だから盛り上がるようにしっかり計算されていて結局はそれが成功しているわけです。
とにかく 俳優人生の最終章にさしかかったイーストウッドが そのシナリオを読んで 納得共感して 監督・主演を即座に決めたというこの才能ある新人脚本家にも注目です。
題材的にも日本でも大ヒットして欲しい作品です!
必見です!
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