「【ネタバレ】必要に迫られたとき、自分ならどんな判断をするか?」グラン・トリノ YuuuuuTAさんの映画レビュー(感想・評価)
【ネタバレ】必要に迫られたとき、自分ならどんな判断をするか?
初クリント・イーストウッド作品!
俳優としてだけではなく、監督としても名高いものの
SF好きの自分としては中々手が出なかったジャンル。
Amazonプライムのおすすめ映画サイトの上位に
紹介されていたので視聴してみた。
朝鮮戦争に出兵したクリント・イーストウッド演じる
ウォルト・コワルスキーは、
妻に先立たれ老後の人生を静かに送っていた。
ある日、隣にモン族の家族が移り住んできた。
長男タオは従兄弟のチンピラから
自分たちの仲間になるよう強要される。
真面目なタオは拒否しながらも断りきれず
ウォルトの愛車グラン・トリノを
夜な夜な盗難するよう命令される。
後日タオは謝罪のためウォルトの仕事を手伝いたいと願い出る。
この交流をきっかけにタオ・姉スーとの、親子のような絆、友情が生まれていく。
その一方でチンピラからの勧誘はエスカレートし嫌がらせが脅迫へと変わっていった。
スーがチンピラたちに拉致され
目も当てられない姿で戻ってくる。
ウォルトは復讐のためチンピラたちのアジトへ向かう……。
というお話。
この映画は「生きる」「死ぬ」、命を「救う」「奪う」など
「生」と「死」の価値観をテーマに描かれていると思った。
ストーリーの前半で神父が
「死はほろ苦い。悲しみはつらいが、魂の救いは癒し」と
「生」と「死」の価値観を言い表した。
それに対してウォルトは
「生と死を朝鮮で3年間見てきた。
人を撃ち、銃剣で刺し殺し、17歳の子をシャベルで殴り殺した。
一生頭に焼き付いているおぞましい記憶。
生とは、戦争から生還して家庭を持ったこと」と
全く違う考えを示した。
さらに「上官に命令されず自分の判断でやってしまったのが恐ろしい」とも。
ウォルトはその場を解決するときに「死」を選択してきたのだ。
その価値観は老後も変わることはなかった。
黒人に絡まれたスーを助けるとき、拳銃を突き付け半ば脅していたし、
タオたちに関わるチンピラの一人を脅した時も、
殴り倒し、やはり拳銃を突き付けた。
そんなウォルトがスーの復讐をするときには
丸腰でアジトへ向かった。
これは実に興味深いことだと思う。
それだけモン族との交流を通して
心が揺れ動いたということではないだろうか。
ウォルトにとってモン族はかけがえのない存在になったのだ。
人間ってこうも変われるんだと思った。
この映画はウォルトの心の変化を丁寧に表現していた。
しかし、結果的に復讐は果たせずウォルトは殺されてしまう。
もし、心境が変化する前のウォルトなら、死なずに復讐を遂げていたように思う。
「生」と「死」。どちらを選ぶべきだったのか。
答えは明白だ。「生」だ。
しかしウォルトは死んでしまった。
この結末が見ている人たちに「生」と「死」を考えさせるのだ。
訴えかけ、考えさせる。
映画の在り方そのものだと思った。