劇場公開日 2009年4月25日

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「次世代へのメッセージ」グラン・トリノ xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0次世代へのメッセージ

2009年4月27日
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

知的

「グラン・トリノ」
それはひと昔前のアメリカ・フォード社の大型車である。
ある意味、大量生産・大量消費・大量廃棄の時代の遺物ともいえる。
でも、主人公はこの車をつくることに愛情を込めていた。

一方、主人公の息子はトヨタのディーラーである。
時代にあっているんだろうが、彼は車そのものよりも売ることに余念がない、
経済合理主義だ。
そんな親子の関係は破綻している。

そんなとき、隣に引っ越していたモン族の家族。
そこには、忘れかけていたコミュニティがあった。
特に、そこの姉には、至極真っ当な主張とプライドがある。
その弟は人生に迷っているが、誠実さを感じることができる。
主人公と、少数民族の家族たちとの交流が楽しい。

遠くの親戚よりも近くの他人。
同じアメリカ人よりも、マイノリティとされる人たちに、
シンパシーを感じる。それは人間愛に近いものだと思う。

クリント・イーストウッドの視点には、いつもいつも、
共感してしまう。

「硫黄島からの手紙」の日本人へのまなざしにしても、
「チャンジリング」の母親・女性へのまなざしにしても、
今回の「グラン・トリノ」のモン族へのまなざしにしても、
その視点はひとつの民族を超えて、人間そのもの、いや、
生きとし生けるものへの限りないやさしさを
を感じずにはいられない。

この映画のクライマックスは、イーストウッド映画のファン
謎解きを提出しているように見える。
「荒野の用心棒」や「ダーティ・ハリー」の頃とは解決手段が
変わったけれど、それはひとつの時代のおわりであるとともに、
次世代へのメッセージのようにも思えるのだ。

「チャンジリング」に続いて、間髪をいれず、こんなに
すばらしい映画を見ることができたことに感謝したいと思う。

xtc4241