「役者の ボクサーとしての体作りに脱帽」ザ・ファイター DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
役者の ボクサーとしての体作りに脱帽
映画「ザ ファイター」を観た。
実在するボクサー兄弟の 実際にあったことを元にして作られたバイオグラフィー映画。
2時間。アメリカ映画。
撮影もすべて この兄弟が生まれて育ったマサチューセッツ州 ローウェルという小さな町で行われたそうだ。日本での公開は3月26日。
ゴールデングローブ賞で助演男優賞をクルスチャン べールが、母親役のメリッサ レオが助演女優賞を獲得した。アカデミー賞では、クリスチャン ベールが助演男優賞、マークの恋人役を演じたエイミー アダムスが助演女優賞に、また映画が作品賞にノミネイトされている。
監督:デヴィッド ラッセル
キャスト
アイリッシュ ミッキー ワード:マーク ウェルバーグ(弟)
デック エグランド:クリスチャン ベール (兄)
母親アリス エグランド:メリッサ レオ
マークの恋人シャリーン:エイミー アダムス
クリスチャン べールの役をブラッド ピットがやるはずだったが、ピットが断った為 クリスチャンが演じることになった。クリスチャン ベールで適役。全くもって これほどボクサーとして迫力ある演技は彼にしかできなかった。ウェルター級ボクシングのチャンピオンの話だから、もともとピットの大きな体には 役柄に無理があった。クリスチャン ベールも背が高いから体重がある。それを極限まで落としている。頬には肉がなく、頭蓋骨に皮が被っているだけの感じ。異様に落ち込んだ目で、走り、跳躍しジャブを繰り返す。それが怖いほどだ。
この役者の 役作りには定評がある。2004年「マシニスト」という不眠症の男を演じるために35キログラム体重を落とした。ドクターストップがかかったそうだが、本人は平然として 全く食べなくなると体が軽くなって頭が冴えて演技に身が入る と言っていた。2007年には カンボジアで米軍兵が捕虜となり 飢餓の中をたったひとり生還した兵士役を演じた時は 体重を20キログラム落として カメラの前で 平然と蛆を食べていた。
わたしはボブ デイランの「アイアム ノット ゼア」で ギターをもって ヒゲだらけでデイランの歌を歌ったときのクリスチャンが好きだ。声がそっくりだった。
2008年には「バットマン ダークナイト」でバットマンとして、美しい肉体美を見せてくれた。また「ターミネイター4 サルベイション」でも主役の ジョン コナーを演じて 息つくヒマもない激しいアクションを展開した。
骨と皮の痩せ役で良し、むっちり筋肉をつけた肉体派ファイターで良し などという便利な役者は そうは居ない。得がたい役者だ。役柄に徹することのできる役者魂をもった役者だ。
ストーリーは
デイック(クリスチャン ベール)はローウェル町のヒーローだ。ウェイター級のボクサーとして連戦連勝してきた。母親のアリス(メリッサ レオ)はボクシングジムを経営していて デイックのマネージャーを務めてきた。彼女はデイックを溺愛している。母は9人の子供を産んだ。そのうちの6人の娘達は成人したあとも母親の家に同居している。デイックは母親からも 姉妹たちからも チヤホヤされてきた。ボクサー引退後のデイックは 麻薬浸けで犯罪にも加担しているが、家族はそれを見て見ないふりをして黙認している。そんな家族のなかで 異父兄弟のマットは 影が薄いが、幼い時からデイックにボクシングを教わってきて、当然ボクサーになることを期待されていた。
ある公式試合で ミッキーがさんざんに負けたとき、ラスベガスから試合を見に来た興行師が、ミッキーが本気でプロのコーチについて ボクサーになりたかったら 母親と麻薬浸けのデイックから離れてラスベガスに来るように言う。ミッキーは 恋人のシャリーン(エイミー アダムス)と二人でラスベガスに行って 家族のしがらみを捨てて 自立する夢を見る。
しかし 夢はデイックが 麻薬に絡んだ犯罪で逮捕され、実刑判決を受けたことで消え去った。嘆き悲しむ家族を置いて行く事が出来ない。兄のコーチなしで 自分の場所で強くなろうと決意するミッキーは 徐々にボクサーとしての力を蓄えていく。
一方 刑務所のデイックは 受刑者の間ではヒーローだ。昔デイックが活躍したフイルムを受刑者全員が見て デイックを褒め称える。しかし受刑期間は 麻薬中毒だったデイックに 良い結果をもたらせた。
2年たち、刑期終了して帰ってきたデイックに、ミッキーは 再びコーチになってくれるように依頼する。憎み合っていた兄弟が和解し、最強のボクサーとコーチのコンビができ上がった。そしてウェルター級のチャンピオン戦にむけて、、、。
というお話。
デイックとミックの二人の体作りが徹底している。もうあきれるほどだ。
クリスチャン ベールの これ以上痩せられない顔で、走りまくり ジャンプし、フットワークも軽々とボクシングする姿もすごいが、マーク ウェルバーグもすごい。右手を警官達に叩き割られ ひどい骨折をしてボクシングができなくなった彼のおなかには、しっかり脂肪がついて みるからに重くなっていた。それが公式戦で戦うようになった時の筋肉のつきようは半端ではない。上半身、筋肉こぶが沢山出来ていた。どんなに 腹を打たれても全然平気。最後のチャンピオン戦の 激しい打ち合いには 何度も悲鳴を上げそうになる。その場に居たら 何度白タオル投げていたかわからない。スローモーション画像で一発一発の拳が入ったときの打撃の大きさに、目を背けたくなる。ボクシングは本当に激しいスポーツだ。
母親のメリッサ レオが 9人の子供を育ててビッグマザーとして家族に君臨する姿や、デイックへの溺愛する親馬鹿ぶりが 実にうまい。ゴールデングローブ賞を取ったのは 妥当だと思う。
恋人役のエイミー アダムスも 女7人の敵に囲まれて それでも負けずにミックを守ろうとする けなげさが立派だ。いつまでもママを頼る デイックの姉妹達の醜い年増女の姿も それらしくて うまい。
映画に出てくる人物すべてがよく計算されていて、よく演じていて、通行人の盲目のおじさんや、店の主人やらまでが 実に芸達者だ。すごく よくできた映画。完全完璧監督のクイント イーストウッドの作品みたいに よくできている。クリスチャン ベールを見るだけのために これを観ても良いし、完全完成品を見る目的で この映画を見ても良い。素晴らしい。