「ミッキー・ウォード!」ザ・ファイター kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ミッキー・ウォード!
1990年代、マサチューセッツ州のローウェル。寂れてしまってはいるが、アメリカでの産業革命発祥の地。その地を有名にしたのはミッキー・ウォード(ウォールバーグ)の父親違いの兄ディッキー・エクランド(ベイル)だ。かつては天才ボクサーとしてシュガー・レイ・レナードからダウンを奪った(勝ってはいない)として、栄光にしがみつき、今ではドラッグに溺れ身を崩している。ミッキーのトレーナーを続けてはいるが突如消えたりして、かなりいい加減なトレーナー。そして母親アリス(メリッサ・レオ)のマネージャーぶりはマッチメイクに無頓着。相手が試合に出れなくなったからといって、金のため、体重が9キロも多い相手と急きょ試合を組ませたりする。
その試合を見たベガスの興行主や新たな恋人シャーリーン(アダムス)の助言もあって、悪影響ばかりの家族から離れることを決意。そんな折、兄の詐欺行為により警官と乱闘となりこぶしを潰されてしまうという事故。兄は刑務所に入ったが、それが決定打となった・・・連勝を重ね、ついにウェルター級王座にいる相手とノンタイトルマッチが組まれることになった。
引退するまでタイトルとは無縁だったボクサーだが、不屈の闘志で逆転勝ちを収めることが魅力の試合。ウォールバーグの演技も半端なものじゃない。つい本物の試合を観ているような気分になったのだ。それくらい凄い演技。しかし、上を行くのがベイルの演技。バットマンの面影など全くなく、『マシニスト』での減量し過ぎ演技を思い出してしまうほどだ。不眠症とヤク中が似ているのかもしれない・・・それと、エンドロール時に出てくる本物のディッキーの雰囲気とそっくりだったよ。
ボクシングのハングリー精神なんかよりは家族愛を描いた映画。兄を自分の中でヒーローに仕立て上げ、「ヘッド、ボディ、ヘッド、ボディ」と兄の助言を素直に実行し勝ちを収めるのだ。テクニックより精神論といった感じだが、物語自体がそのような精神論ばかりかもしれない。容姿がよくない姉妹が9人もいて、彼女たちは仕事してるのか?と考えてもみるが、その我儘な姉妹や母親に対しても真っ向から対決するシャーリーンがいい。しかも出所した兄貴と向かい合う場面でも堂々としてたもんな。