路上のソリストのレビュー・感想・評価
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作者からのメッセージが伝わってこない
米ロサンゼルスを舞台に巧みな構図で魅せる、ただ一点を除いて・・・。
ナサニエルがオーケストラの旋律に聞き入るシーンだが、まるでメディア・プレーヤーの視覚エフェクトさながらの描写は芸がない。しかも長い。
ヘタに泣かせようとせず、淡々とふたりの交流を描いていく点には好感が持てる。ロバート・ダウニー・Jr. とジェイミー・フォックスの演技力が光る。
それでも物足りなさを感じるのは、事実に捕われすぎて映画作者本人の解釈が伝わってこないからだ。弦の震えを感じない。
神の祝福を得た天才は、俗界の雑音に畏れおののき、信じられるものは美しい旋律とそれを生んだ偉大な音楽家たちだけ。そんなありふれた解釈で見られる作品でよかったのか?
事実を踏まえた上で、ひとつの作品として映画ならではの視点でもっと掘り下げてほしかった。
路上のコラムニスト。
名画座にて。
公開時にもけっこう話題になっていて、
さらに賛否が分かれていたような気がする作品。
まぁ、、好き嫌いはあるにせよ、これはリアル。
実話ならではの甘さも感動も感じさせない^^;作り。
それをどう感じるかで評価が分かれると思う。
個人的にはあまり後味のいい話ではないな、と
思いながら、いきなりラストで寝返った?ような、
締めくくり。うーん…結末はないと思うけどねぇ。
いつだったか、御本人たちが来日?して、
本物がTVに映っているのを観た。似てなかった^^;
私は音楽に精通していないうえ、チェロについても
(ジェロなら知ってるけどv)あまり聴き覚えがない。。
それでも冒頭で流れる音楽や、劇中で流れる曲は
心地良いとは思う。。思うんだけど、その心地良さ
がメインではない話なんだよなぁ…これは。
統合失調症という精神疾患が天才音楽家にもたらす
悲劇…というか、そちらの描写が色濃く、おそらく
原作者が彼をネタとして抜擢し利用したのも明らか。
(まぁ、記者とはそういう仕事ですから^^;)
彼が偽善者とか、慈善家とか、色々な見方はあるが、
純粋にコラムの題材として彼を選んだだけだと思う。
その後の交流で、彼への復活の期待も芽生えてくる。
それをすることが彼の為になるのか。を問われても、
「ハイ、そうです」と、簡単に答えられる問題でもない。
苦い描写が一転、温かい手のぬくもりへ変わるラスト。
映画の締めくくりとしては「そうだよねぇ」なのだけれど、
そこまでの展開が苛立ちと残酷さに満ちているので
私的にはスッキリできなかった。主演の二人は巧い。
(日本も路上音楽家が多いですねぇ。騒音とハモる?)
ロバートダウニージュニアは働きすぎですね
中盤ダレるのと、音楽の表現(なんか鮮やかなのがちらちらしたりする演出)がどうかな、と思ったけど、現在進行形の実話で、コラムが原作なんだと思うと、すごいな、と思った。
なんとなく、観た後の満足感が足りない気がするのは、これが実話であって、
作られた物語ではないからなんだろうと、自分を納得させる必要がある。
しかし、ロバートダウニージュニアは最近働きすぎな気がする。
さすがに音楽面での演出はパーフェクト!でも、ジョー・ライト作品には、いつも何かが足りないという、あと一歩感がぬぐえませんね。
ジョー・ライト作品の特徴は、音楽の使い方が素晴らしいこと。背景に流れる音楽だけで登場人物の不安な心理とか、溢れる愛情を余すところなく伝えきってしまう音楽の魔法使いのような監督です。「つぐない」でアカデミー賞音楽賞を取ったのも納得しました。 そんな監督が、ホームレスの音楽家を描くとあって、音楽面を期待して本作を見に出かけた次第です。
さすがに音楽面での演出はパーフェクトでした。
記者のロペスが寄付されたチェロを手渡して、ナサニエルが久々にチェロを演奏するところでは、ナサニエルが音楽に陶酔する心境を、渡り鳥が大空に羽ばたく映像で表現していました。まるで『のだめカンタービレ』の演奏シーンのように、音楽の喜びをイメージで伝えていたのです。
また、ロペスがナサニエルを誘って、オーケストラの練習会場に連れて行くところでは、ベートーベンの交響曲第三番『英雄』の冒頭に響く2音で、精神を患っているナサニエルが一気に芸術的に覚醒する表情を、印象的に捉えていました。
さらに、ホームレスが渦巻くLAのダウンタウンでは、不協和音を効果的に使って、ホームレス達の出口のない不安感や街に渦巻く狂気をうまく表していたと思います。
ジョー・ライト作品のもう一つの評価として、人間ドラマでは、いつもあと一歩感動が足りないと感じてしまうことです。
本作でも巧妙な仕掛けがしてあり、9万人もいるといわれるロスアンジェルスのホームレスの生活の実態を描く社会派ドラマのようで、実は深い人間ドラマになっているのです。
一番興味深いのは、ラストでナサニエルを救おうとしたロペスが、逆にナサニエルの純粋に触れることで自分が救われていたことに気づくことです。
ロペスは、チェロを与えたり、コンサートに連れて行ってあげたり、ホームレスの支援センターを紹介したり、果ては部屋を提供し、精神病院に強制入院させて社会復帰まで世話しようとしました。
それらの親切が、誰が見たって記者として、コラムのネタになると踏んでのもの。ナサニエルを飯の種にして、ついには書いた記事が賞までとってしまいます。
さらにロスアンジェルス市長をも動かしてホームレス支援の施策を発表されるなど、徹底的にその善意は自分の仕事に活用していたのでした。
心は病んでいても純真なナサニエルは、下心たっぷりのロペスを神とまで崇めて、彼の親切を受け入れていたのでした。しかし、統合失調症の人にとって、自分が統合失調症扱いされることは我慢ならかったようです。
精神病院への入院には、人が変わったように敵意をむき出しにして抵抗したナサニエルに、ロペスは反省するわけです。何も救ったことにならないと。
失踪したナサニエルに追い打ちをかけるようにロスアンジェルス市は、支援とは名ばかりにホームレスの排除に乗り出します。これもロペスがまいた種の結果でした。
ナサニエルを必死で捜す中で、見つけたとき彼は穏やかにチェロを演奏していました。そこでロペスは悟るのです。病んでいたのは自分の方だと。
ここで残念なのは、ロペスの別れた妻との間にあった心の葛藤が全く描かれていないことです。いつの間にかロペス夫妻は関係を修復しています。『レスラー』のように、ロペスの孤独を描いて、ナサニエルによって救われていく心情を描いたら、もっと感動できる作品になっていたことでしょう。
ジョー・ライト作品には、いつも何かが足りないという、あと一歩感がぬぐえませんね。
追伸
ホームレスのナサニエルというのは凄く難しい役柄だっだことでしょう。天才的な芸術感性の持ち主として美に陶酔している表情。しかしそれは同時にナイーブさ故に病的に自分の世界に立てこもって、社会を拒絶している面も見せつける必要がありました。狂っているようで、それがとても天才的に見えてくる姿をジェイミー・フォックスは演じきっていて、素晴らしいと思いました。
単館上映はもったいないです
ホームレスの天才チェリストにジェイミー・フォックス、
それを取材する記者にロバート・ダウニー・Jr.
この映画はもうこの二人につきます。
新聞のコラムに感動した読者から
プレゼントされたチェロに目を輝かせて
すぐにも弾いてみたくて
車がひっきりなしにとおりすぎるトンネルで
30年ぶりにチェロに触れるナサニエル。
ふたりきりのコンサートのシーンが印象的でした。
Rayで盲目のピアニスト、レイ・チャールズを演じたときの
ジェイミー・フォックスもすごかったですが、
ナサニエルを演じられるのは彼以外にない!
とだれもが確信するような、鬼気迫る演技でした。
そもそも二人の出会いは、
弦が2本しかないバイオリンを弾いているホームレスが
「名門ジュリアード出身」ということを偶然知ったロペスが
「このギャップはコラムのネタになる」と興味をもったことから
始まるのですが、ナサニエルと深くかかわるうちに
彼をこのまま「掃きだめ」に捨てておいてよいものか悩み、
仕事上のかかわりを越えて、あれこれ奔走して尽くします。
でも良かれと思ってしたことで、
逆にナサニエルに敵意をもたれてしまい、
ロペスは傷つき、苦しみます。
というのも、ナサニエルには「統合失調症」があり、
自分をおさえきれなくなったり突然凶暴になったり・・
ジュリアードを辞めた原因もそれでした。
ナサニエル自身もまた苦しみのなかにいるのです。
ロスにいる9万人もの路上生活者の実態。
ランプコミュニティなどの支援施設での
ボランティアたちの活動。
ドラッグが蔓延し、治安も衛生状態も劣悪な
彼らの生活空間・・・・
そういったアメリカのかかえる問題も
描きつつ・・・なので、
この映画、決して気分爽快になれるような
娯楽映画にはなっていません。
Rayでも、ドラッグ依存から立ち直るための
苦悩が描かれていましたが、
それ以上にいろんな苦しみに胸がつぶれそうになります。
ロペス自身の妻との関係、94年のノースリッジ地震で失ったもの・・
まで登場して、もう、苦しみのオンパレードです。
だから、カンドーして、気持ちよく泣いて、すっきりして帰りたい、
たとえば「奇跡のシンフォニー」とかがお好みの方には
この映画お勧めできないです。
苦しいこと、見たくないこと、報われないこと・・・
イヤなことは数あれど、音楽に陶酔しているときの
ナサニエルに「神の愛」を感じ、
ともに神の恩寵を喜べるのだったら、
日々のイヤなことなんて、その瞬間は吹き飛んでしまいます
もしこれが「ドキュメンタリー」だったら、
ロスの路上生活者や精神を病んだ人達の実態や政策の問題点など、
問題を提起しながら、ある程度結論をだすのでしょうが、
そうでないところが、「私は」好きなので満点です。
現在も掲載されているLAタイムズのコラムが気になります!
ジェイミー・フォックスとロバート・ダウニーJr.の二人の俳優の演技にのめり込めなければ、少々疲れてしまう映画でした。天才チェロリストと期待される才能が、病の為に路上生活の中に埋もれてしまうのを、コラムニストが救おうと彼に接していく過程に感動しました。名門ロサンゼルス・フィルハーモニックの演奏が聞けたのも良かったです。
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