その木戸を通ってのレビュー・感想・評価
全1件を表示
謎は深まるばかり・・
クリックして本文を読む
市川崑監督がBSハイビジョン用に撮った幻の作品ということで鑑賞。ハイビジョンカメラも初期のものだったので焦点深度や照明で随分苦労したらしい、それでも妥協しない陰影表現や構図の上手さはさすが巨匠。
記憶喪失で新旧の人生が綾なす悲恋劇では昔の名作映画「心の旅路」が代表格だろう、近年では「潮風のいたずら」というコメディも面白かった、気が揉めるがハッピーエンドなので何とも言えないカタルシスがあったのだが山本周五郎の世界は儚さで成り立っているので曖昧なまま突き放される。
江戸の遊んだ女なら覚えている筈、住まいと名を知っているなら昔の奉公人の妹か娘が訳ありで頼ってきたが途中で襲われたのか、脳の病とか考えると混乱する、最後に訪ねた家の女は人違いと言うが当人だろう、幸せそうなのであきらめがついたということか、元のさやに納まったのか、それともまた拾ってもらっただけなのか、謎は深まるばかり・・。
謎が解けないミステリーと読んではいけないのだろう、昔話の世界観、人生には「木戸」に象徴される運命の境界があるのだろうとシュールな悲哀に打ち拉がれるしかない。
俳優としては二人とも演技派というよりは個性が強い、浅野さんは謎めいた役なので素の魅力が活かされたが貴一さんは好青年のイメージが裏目に出て陰のある芝居には不向きだったかもしれない。味わいと言う点ではちょっと物足りなかった。
コメントする (0件)
共感した! (0件)
全1件を表示