「そして彼は、“英雄”になった。」チェ 39歳 別れの手紙 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
そして彼は、“英雄”になった。
『2009年は、「チェ」と「チェ」で始まる…』という予告編でもお馴染み、“2つのチェ”の2つ目、前作「チェ 28歳の革命」に続く2部作の終章。39歳で、その生涯を閉じたチェ・ゲバラの最期の戦いを、克明に重厚に描き出しています。
1年余りに及ぶボリビアでの“チェ・最期の戦いの日々”を、スティーヴン・ソダーバーグ 監督は、派手な演出もせず淡々とドキュメンタリー・タッチで撮り上げています。『膨大なリサーチから集めたエピソード…』『本作は、すべて、事実に基づいて作られている…』プレスに書かれている監督の言葉どおり、映画の最初から最後まで、それは徹底しています。前作(「28歳の革命」)では、革命での戦いのシーンに、国連での演説シーンが挿入されたりしておりましたので、まだ幾らかメリハリが感じられたのですが、本作ではそういった演出はなく、本当に淡々と…ラストでチェが死に至るまでを時系列で追っておりますので、おのずと重い作風に仕上がっています。これからご覧になる方には、出来れば前・後編は、別の日に分けてご覧になることをお薦めします。実は吾輩は、試写で続けて見させていただいたのですが、正直とてもシンドい2時間3分(2本合わせると4時間25分!)でした。いえ、決して映画の出来が悪かったと言うのではなく、ただただ吾輩の頭と身体がついていけなかった…って、感じです。
「28歳…」が“革命家ゲバラ”の誕生という、1人の男の“生”を描いた映画であるならば、本作「39歳…」は、“革命家ゲバラ”の生き様と、その最期という所謂“死”を描いた映画だと言えるでしょう。その“死”はしかし、ただの“死”ではなく、死後41年が経過した今も、世界中の人々から熱狂的な支持を受け続けるチェという“伝説”の誕生をも描いているのです。自らの主義、信念を最後まで貫き、自国も他国も関係なく、己の信じたモノと共鳴したならば、その為には命を懸けて戦う。そんなチェのひた向きで、それでいて愛に満ち溢れた“職業革命家”としての生き方が、今日に生きる我々をも惹きつけてしまうのだと思います。こんな男、なかなかいませんよ!この寒い時代に…。
ベニチオ・デル・トロは、チェを演じることが昔からの念願だったそうで、今回何と25Kgも減量して、撮影に臨んだそうです。その甲斐あって、見事スクリーンにチェを甦らせています。“役者魂”入魂の演技ですね。但し、先日キャンペーンで来日した際の写真なんかを見ますと、もうすっかり“リバウンド”されてたみたいですね(^^;。