「昔ならばアレン自身が演じるところなのに」それでも恋するバルセロナ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
昔ならばアレン自身が演じるところなのに
いきなりナレーションによる解説が入り、映画はサクサクと進んで行く。
まるで往年の映画は90分程度が一番集中して見られるのを計算しているかの様に…。
確かに前半はナレーションの効果も在って軽快に進む。
恋愛には慎重なレベッカ・ホールと、身を焦がす恋に飛び込むタイプのスカーレット・ヨハンソンの仲良し2人。
この2人に言い寄るハビエル・バルデム。しかし、彼の元妻ペネロペ・クルスが…。
ハビエル・バルデムの役は昔ならばウディ・アレン自身が演じたのだろうが、流石に今この役を演じたら単なるピエロになってしまう。
初めは警戒していたレベッカ・ホールの心が、段々と彼に惹きつけられて行く辺りには割と説得力が在る。この辺りまではとても面白かった。
その後も、婚約者がいる彼女との関係を離れてスカーレット・ヨハンソンとの仲を深めて行くに従い、やきもきするレベッカ・ホールの気持ちに感情移入する作りになっており面白い。
しかし…。
ここで、元妻ペネロペ・クルスが登場。
これが往年のアレン映画だったならば、主役を演じるアレン自身がああじゃない、こうじゃない…と、大仰な身振り手振りを用いては、身の潔白をお馴染みの早口でまくし立てては笑いを誘う場面なのですが…。
残念ながら、仲良しの2人がドロドロの関係になるでも無く、元妻が表れてもなかなか泥沼の修羅場が在るでも無く…。
それぞれが極めて冷静に対処する為に映画は弾いてはくれない。
やっと最後の最後に元妻ペネロペ・クルスが半狂乱となって、映画自体は動き出すが時すでに遅し。
ウディ・アレンお得意の設定ながら、演じる役者が違うとこれほどまでに変わってしまうのですね。
やっぱりこの手の内容ならば、男の側が右往左往しなければなかなか笑いには繋がらない気がしますね。
あれだけ女性に対して冷静に対処しては、面白い話も盛り上がらなくなるのも宜なるかな…ってものでしょう。
(2009年7月2日丸ノ内ピカデリー3)