「「男の子」なら好きになる映画の面影が随所に見られる。」エグザイル 絆 mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
「男の子」なら好きになる映画の面影が随所に見られる。
香港フィルムノワールは、80年代ジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」が真っ先に浮かぶ。私は、この映画シリーズはまったくダメだった。なんでそんなに評価が高かったか分からなかった。あのケレン味たっぷりな思わせぶりたっぷりな演出と、やたら暑苦しい男の友情が、まったく興ざめだった(思えば、あのころからジョン・ウーが好きじゃなかった)。
この映画は、そのまったく内容を継承したような映画だが、センスにおいて、数段ジョン・ウーより上。
出だしが面白い。見るからに「ギャング」な二人二組の男たちが、立て続けに、ある男を訪ねくる。本人は不在。妻とまだ1ヶ月の赤ちゃんがいるだけ。とりあえず外で待つ男たち。ただならぬ雰囲気が漂う。そこに労働者風の男・探していた男が帰ってくる。それぞれが、銃がある腰に手を近づけながら、男を追う。そして、その男の部屋で、訳が分からないまま銃撃戦。やたら派手な銃撃戦のわりに誰も撃たれない。何で?と思って見ていると、彼らが幼なじみの親友同士だと分かる。それから一緒に撃った家具を直したり、一緒に食事をするのも面白い。
内容は、ボスを狙った男を、殺しに親友だった男たちが来る。それを阻止しようと別な親友たちが来る。それで結局、幼なじみ同士。団結してボスを狙った男を逃がそうとする。それに金塊強奪の話がからんで‥という話で、意外と薄っぺらな話。ほとんど撃ち合いシーンや見せ場作りのためのストーリー。
だから、シーンシーンがやたら凝っている。銃撃戦もやたら華麗。ケレン味たっぷり。ケレン味たっぷりな撮り方はあまり好きじゃない方だが、意外と見せる。スローモーションを多用してサム・ペキンパーの進化系のような銃撃戦を見せてくれる。そういえば、飛び散る血も、今風の血けむり(CGであと付け?)。
ラストには、サム・ペキンパーの傑作「ワイルドバンチ」を思わせる男の友情を見せる。ラストの銃撃戦は、ジョン・ウーというより、やはりサム・ペキンパーを意識している。缶が落下するスローモーションと「死の乱舞」のカットバック。
ジャン・ピエール・メルビルの作品や、マカロニウエスタンのセルジオ・レオーネの作品、それにサム・ペキンパーの作品など、「男の子」なら好きになる映画の面影が随所に見られる。
役者は、アンソニー・ウォンやフランシス・ンがいつもどおりに良かったが、それ以上にボス役のサイモン・ヤムがなかなかいい。やっぱり敵役が憎たらしいほどでないと。
それに、途中のエピソードの金塊輸送車の警官と仲間になる話もいい。まるでジャン・ピエール・メルビルの「仁義」みたい。
こういうくだらない、撃ち合いシーンばかりの、それでいてしっかり男の友情を感じさせる映画って、多分、作っている側が一番楽しんでいるんでは?と思える。
本当には死にたくないけど、映画のなかなら「男の子」なら、カッコ良く死にたいですからね。