マイマイ新子と千年の魔法のレビュー・感想・評価
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【”千年の土地”に住む子供達が経験する、新しい友達との出会い、様々な遊び、美しい自然、哀しい出来事、大人の世界の事情などを子供目線で優しく描いたファンタジックな作品。】
■昭和中期の山口県防府市が舞台。
快活な小学生の少女で、髪のマイマイが額の上にある新子は、クラスに馴染めずにいた転校生・キヨコを気にかけ、ウイスキーボンボンを一緒に食べて酔っ払ったりしながら、徐々に打ち解けていく。
だが、大切にしていた金魚の「ひづる」がキヨコが付けていた香水のせいで死んでしまった事で、二人は死と言うモノを考える。
◆感想
・片淵須直監督ならではの、優しく親しみやすい絵柄で、子供達の表情がとても活き活きと描かれている。
・新子はお転婆で、空想好きだが、正義感も有り優しい女の子である。故に、誰からも好かれている。
・物語としては、男の子たちが一目置くタツヨシの警察官の父が、キャバレーで借金をしてしまい首を吊ってしまったり、大好きなチヅル先生が結婚のために東京に行ってしまったり、子供にとってはショックな出来事が描かれる。
・だが、新子はタツヨシとキャバレーに乗り込んで行くし、そこにいるキャバレーに関係する男女も、悪い人間としては描かれない。
但し、物語としては子供が経験する”死”が金魚も含めてキチンと描かれているし、”別れ”もキチンと描かれている。
<今作は、”千年の土地”に住む子供達が経験する、新しい友達との出会い、様々な遊び、美しい自然、哀しい出来事、大人の世界の事情などを子供目線で片淵須直監督ならではの優しい絵柄で描いたファンタジックな作品である。>
期待
再上映にて、初見。
活き活きとした日常描写はさすがの一言。
新子と貴伊子の日々は、風や日差しすら感じられる気がするほど。特に貴伊子が新子に影響されてどんどん活発になってゆく様子など本当に素晴らしいし、後の「この世界の片隅に」のすずさんの描写にも通じる。
一方で、千年前の清少納言ことなぎ子との関連はいまひとつピンとこなかった。関係性が相似形なんだとしても、薄過ぎではないだろうか…?
そのあたりが片渕須直監督の次作「つるばみ色のなぎ子たち」で描かれるなら嬉しいな、と期待…
昭和30年の子どもたちとの地続き
初めて鑑賞したのはだいぶ前だったが、ピカデリーでの上映で感想を書いてなかったのを思い出した。
昭和30年と約1000年前、平安の防府を、想像の中で行きつ戻りつ。でも派手な物語はない。
ダム遊び、想像しあう遊び、自分の子どもの頃の時代とも全然違う時代の子どもたちの遊びがなにか沁みる。
観るたびに少し温かい。
子ども向けでもファンタジーでもなかった
良い噂は聞いていたし「この世界の片隅に」がとても良い作品なので、片渕須直監督の本作も興味はあった。
しかし、子ども向けそうなこと、ファンタジー色が強そうなことなどでなかなか観ずにいた。
蓋を開けてみれば、思ったほどファンタジーではないどころか、全くファンタジーなどではなく、時代のこともあって「ALWAYS三丁目の夕日」の、地方版、子ども中心版といった感じだ。
そして、噂の通り良い映画だったと強く感じた。
多くの映画監督には独自のカラーというものがある。雰囲気であったり、多用する技法であったり、脚本も自ら出掛ける場合、内容にも特色がある。
アニメーションの場合でも主に「映画」を主戦場にしているならば映画監督だ。
片渕監督にもやはりカラーはある。
「この世界の片隅に」で、すずさんの描く絵が実際に見えるものと重なるシーンなどが実にアーティスティックだが、本作においても同じような表現をしている。
二つの場面、本作では作中の現在と千年前をシームレスに移行させることで、あたかも同一の場面かのように表現する。観ていて場面切り替えによる引っ掛かりがなくなるのはある種の爽快感がある。
そして、主人公が妄想する過去として、その場に千年前を登場させてしまうのも印象的。
ほとんど関わりのない千年前が「今」かのように、千年前のお姫様が今の誰かのように錯覚できるのは素晴らしい。
この「続いている」感覚は、本作のテーマとも合致する。誰かが覚えていれば、誰かが思いを馳せれば、その人はまだ存在している。
改めて素晴らしい作品
久しぶりに観てみました。
まず美術ですね。田舎街が、その田畑がすごいきれい。
それと音楽が素晴らしい。
そういえばガス式冷蔵庫を知ったのもこの作品だった。
今思えば何もない田舎町。
そんな中で、自然や空想や友達と共に成長していく物語。
どこか懐かしく、どこか古めかしい。だけど何だか暖かい。
また、エンドロールのコトリンゴがすっごいぴったりなんですよね。
改めて素晴らしい作品です。
青い麦の海
2022年5月31日
映画 #マイマイ新子と千年の魔法 (2009年)鑑賞
昭和30年代の山口県防府市を舞台に、お転婆で空想好きな少女の新子と、東京から来た転校生の貴伊子との友情を描く
#片渕須直 監督作品だけに、#この世界の片隅に を彷彿させる感じですね
夢みる少女
想像力豊かで夢みる少女は「赤毛のアン」を思い出させる。住んでいるところが平安時代の国衙だったから、想像の世界は豊かに広がる。この展開に最初はどぎまぎするが、引き込まれる。子供が主役だが、大人が見てもキチンとしている。また見てみたい。
昭和30年代の地方はまだこんな感じだったんだ。道は舗装されていなくて、緑も川も自然のまま、かけっこや川遊びの放課後。まだテレビもなさそうだし。時代考証は間違っていないとすると、子供たちの自然さ・純朴さは東京などの都会とは5~10年違う印象。
防府の風背景が素晴らしい
ただ写実するでなく、昭和30年代と古代の風背景を現代の街並みと交差させ描く。
少年少女の想い、複雑多岐に絡み合う出来事に拠る成長譚。
短絡的で一本線な昨今のアニメ作品と一線を画すアニメーション作品。
タツヨシがかっこいい!
心が温まる映画。アニメーションとはかくあるべし!
昭和30年代の山口県を舞台に、空想好きな女の子、新子と内気な転校生、貴伊子の日常を描いたアニメーション。
『この世界の片隅に』を鑑賞した結果、片渕須直という監督の才能に惚れ込んでしまいました。なので、片渕須直監督の前作である『マイマイ新子』も鑑賞してみることに。
本作を観て、片渕須直は素晴らしいアニメ監督であると再認識。
粗雑濫造が横行するアニメ界において、このような大人から子供まで楽しめ、感動できる作品を作ってくれる監督が正当に評価されていることは、いちアニメファンとして大変嬉しく思います!
本作は『この世界の片隅に』よりも前の作品です。しかし、昭和20年頃が舞台だった『この世界の〜』に対し、本作は昭和30年代が舞台となっているため、むしろこの作品を後に見たことによって「あの戦争の時代からわずか10年程で、こんな平和な時代になったんだなぁ」としみじみ思い、本作に愛着が湧きました。
絵の感じは完全にジブリ風です。
元々高畑・宮崎コンビに従事していた方なので、ある意味では正当な絵柄と言えるかと思います。
全体の雰囲気も『となりのトトロ』風。田舎に引越してくる少女、迷子になる妹など、どこかで見たことがあるシーンだなと思わざるを得ません。
竹を割ったような性格の新子は見ていて楽しいし、新子と貴伊子が交流を深めていく過程はほのぼのしますが、正直前半は退屈。特に事件が起こるわけでもなく、田舎サイコー!的な描写が続きます。
しかし、後半になるにつれて、物語は思いもしていなかった展開に発展していきます。
少年・少女のやり切れない思いの爆発。1000年の時を隔て、不思議な交わりをする少女の記憶。非情な現実に面しても、心の思うままに世界を創造することこそがそれを乗り越える武器になるというメッセージ。
渦巻くエモーショナルな展開の連続に、知らずと涙が頬を伝っていました。
暗闇の中で新子が貴伊子に伝える本当にささやかな告白が、作品をビシッと締めてくれます。
牧歌的でありながら、残酷な現実がたしかに存在する世界。子供時代が有限であることを伝え、その中で育まれるイマジネーションこそ、現実世界の荒波を渡っていく船となり得ることを教えてくれる美しい作品です。
子供向けな雰囲気ながら、文学的な作品構造も有しており、かなり歯ごたえのある映画でした。
小3の夏。少女たちの成長に泣かされる
小学校3年生の夏、ちょっぴり成長した子供たちにホロっとしつつ、心が温まる作品だった
舞台は昭和30年代の山口県の田舎町
主人公の新子は、東京から引っ越してきた転校生の貴伊子と仲良しになり、夏休みになると、彼女たちは、近所の畑や川で遊ぶようになる
そんな彼女たちを見ていると、ゲームやスマホがなくても、外で走り回って遊んでいた自分の子供時代を思い出した
それだけで、ノスタルジーを感じて切なくなる
しかし、新子は、他の子たちとはちょっと違う
その町に、千年前にあったという都に想いを馳せ、その当時に生きていた同世代の姫と思いをリンクさせるのだ
それは、新子が大好きなおじいちゃんから話を聞いて想像した世界
千年前は、どんな生活をしていたのか、姫はどんな風に遊んでいたのか、想像するだけで、新子は楽しくなって、「千年前ごっこ」をしちゃうような子供だった
この物語は、原作者 #高樹のぶ子 の自伝的小説が元になっているらしい
ということは、高樹のぶ子さんも、子供時代には、千年前の都に想いを馳せていたということなのだろう
友達の貴伊子も言っていたけど
新子の想像力はすごいなぁ
と思った
千年前にここに何があって、どんな生活をしていたかなんて、私は考えたこともない
新子がそれほど想像力豊かだったのは、きっと、一緒に暮らしているおじいちゃんの影響なんだろうなぁと思った
そこは、現代の核家族が失ってしまったところだ
そこは、おじいちゃんやおばあちゃんたちと一緒に暮らす生活が、子供たちに良い影響を与えるんだなぁと感じさせたところだった
とはいえ、彼女たちの夏休みは、楽しいことばかりではない
出会いがあれば、別れもあり、死を身近に感じることも起きてしまう
そういう経験を通して、彼らは大人の世界を垣間見て、ちょっぴり成長するのだ
私は、そんな彼女たちの成長に泣かされてしまった
楽しいこともあれば、悲しいこともある
子供だから理解できないこともある
その中で登場する金魚のひずるは、未来への希望だ
どんなに辛いこと、悲しいことがあっても、信じて願い続ければ、神さまは、彼女たちの願いを聞いてくれるのだ
だから、きっと大丈夫
夢は大きく持とう!
昭和時代を懐かしみつつ、彼らの成長にホロっとし、最後は心が温かくなる作品だった
ほんわかした作品を観たい時におススメの作品
想像と空想の宝に自然と涙溢れる
・子供が大人の世界に触れるとき、またひとつ成長する
・戦後10年の山口の田舎の新子が土中のショウケースにグリコのおまけをしまう行為と、1000年前のお姫様がひとりで遊ぶ人形のリンク
・都会からの転校生の貴伊子が香水をつけて後悔してから、方言を話し新子より早く走るまで馴染む過程が細やか
・秘密のダム作りと金魚の飼育と死の立ち会い
・極端に目線を落としたショットが特徴的
・エンドロール後のラストカットは2匹の蝶々がとまるタンポポの花が揺れている画
新子の声が好きでした
当然の流れのように、『この世界の片隅に』にいたく感動して、こちらを観ることになったのでした。
しかし、私的には、ちょっと惹き込まれなかったかな、と。
なんでしょう、『この世界の』と同じく主人公の声は抜群だったんですよね。芯があるような声に、新子の伸びやかさを感じちゃいました。
でも、でも、『この世界の』で感じたものには、ちょっと届かなかったかなぁ。やっぱり子どもの世界の伸びやかさと、現実の世界の悲しさとのコントラストが、もう一歩だったのかな、とも思うんですよね。そのコントラストは明瞭にひとつの主題でもあるんでしょうけど、そこが十分に感じられなかったかなぁ、と。
ある意味、伸びやかすぎなのかな、と感じましたですね、はい・・・すいません・・・。
「絵」は世界一。ジブリを遥かに凌ぐ。
「この世界の片隅に」を観てからこの映画を観た
多分、「この世界の片隅に」を好きになった人は、「マイマイ新子と千年の魔法」も好きになると思います。世界観がとても似てる。
まず何と言っても、この映画は映像(正確には映像というか絵なんですが)が凄い。
地平線の彼方まで一面敷き詰められた麦畑が風になびき、雲ひとつない青空に太陽、その中を子供が走ってる。合わせて曲が流れる。
それだけでこんなに凄い絵になるとは・・・。子供がただ遊んでるだけ。ただそれだけ。
この映画は最大の見せ場がそれである。面倒臭い説明は一切なし。もう引き込まれてる。日本のアニメは本当に凄い。
この映画、さらに一線を画するというか次元が違うというか、「絵」という点ではジブリ、押井守等を遥かに凌いでる。
ジブリ映画は、大人が観た子供の世界「子供の世界ってこんな感じでしょどうせ?(笑)」みたいな感じ。だから観てる側も、潜在的に内心こんなのあるわけねぇ(笑)って思っている。だからジブリ映画の絵は、どこか子供っぽくダサい。注)別に批判してるわけじゃなくて、この「マイマイ新子と千年の魔法」と比べたら子供っぽくダサいというだけです。私はジブリ大好きです。はい(笑)。
「マイマイ新子と千年の魔法」は、子供が観た子供の世界。とてもリアル。だからこそスタイリッシュ。「絵」はド田舎なのに、超カッコ良い(笑)。否、カッコ良いという表現は適切ではないか。生きてる。生々しい。本当にそこにあるみたい。畏敬の念すら抱く。言い過ぎか・・・。子供の映画なのに、子供っぽさが全然ない。こんなにスタイリッシュな「アニメ」を、私は今まで観たことがない。
押井守の「攻殻機動隊」みたいなハードボイルドアニメは、確かに「リアル」っぽく見えるけど、実際、あれは「リアル」っぽいだけで、「これが俺の考えたカッコイイ未来だぜ。カッコイイだろ。どう?」みたいな感じで、キザ、なところがダサく見える(笑)。注)攻殻機動隊みたいなハードボイルドアニメも私は好きです。
物語はオーソドックス。
普通に暮らしていた主人公が、汚く暗い大人の世界へ旅立ち戦い、ちょっと成長して帰ってくるという、良い話。
主人公は妄想好きの女の子。おじいさんから1000年前の昔話を聞かされ、いつも想像している。1000年前の人たちはどんなだったんだろう?
この映画も、昔の人を「想像する」ということから、まずは始まっている。想像力の尊さを教えられた。
(近年のARやVRは確かに凄いですが、人間の想像力が劣ってしまわないか不安だ)
じゃんけんもってすっちゃんほい
EDこどものせかいが超名曲。歌詞がリンクしてるだけじゃなくて、曲調で映画の中の美しい情景がゆっくりと思い出されてる。コトリンゴのセンスの真骨頂だなと思います。
笑って遊ぶ子供の世界のすぐ隣に大人の世界があって、ひづる先生が妻子持ちと恋愛してて幻滅したり、タツヨシの父が自殺したりと子供から見える世界はなんだか酷い。
大人の世界に新子とタツヨシの2人だけで足を踏み入れるところは良かった。ガス冷蔵庫なるものがあることをこの映画で初めて知りました。
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