「「時をかける少女」「サマー・ウォーズ」に次ぐ傑作アニメ!」マイマイ新子と千年の魔法 タカリコさんの映画レビュー(感想・評価)
「時をかける少女」「サマー・ウォーズ」に次ぐ傑作アニメ!
直木賞作家・高樹のぶ子さんの自伝的小説をアニメ化した作品。
山口県防府市に住む小学生・新子は、明るく元気でとても空想好きな女の子。
生え際につむじ(マイマイ)があり、前髪がピンッと跳ね上がっているのが悩み。
新子には元教師だった祖父がおり、祖父から昔話を聞いては、空想をして遊んでいる。
ある日、新子が通う小学校に転校生・貴井子がやってくる。
全く笑顔を見せない貴井子を新子は何とか笑わせようとする。
「青い麦の海」に貴井子を連れ出す新子、それをきっかけに次第に打ち解けていく二人。
学校の先生から聞いた、千年前にこの辺りに住んでいたという「諾子」(後の清少納言)というお姫様に思いを馳せる二人。
同じ年ぐらいの友達が居ない諾子の寂しさと、新子と貴井子の思いが呼び合うようにリンクしていくエピソードがとても良かったです。
クラスメイトと一緒に川をせき止めて作った池にある日金魚が紛れ込む。
「ひづる」と名づけ、皆で可愛がるが、あるきっかけで死んでしまう・・・。
また笑顔を見せなくなる貴井子・・・。
「明日も笑顔で遊ぼうね」という約束を交わした晩に起こったクラスメイトの少年の父親の自殺というショッキングな出来事、シビアな大人の事情に巻き込まれていく新子達。
新子と少年が父親が自殺したきっかけを作った「金髪の女」に会いに、歓楽街に向かうエピソード辺りから私はずっと泣きっぱなしでした。
ポスターを見る限り、子供向けな印象でしたが、どちらかと言えば大人の方がグッと来る内容かもしれません。
とにかく登場するキャラクターがとても生き生きとしていて、とても魅力的でした。
子供ならではの純粋さが瑞々しく描かれていて、感動しました。
新子の声を担当した福田麻由子ちゃんを初め、どのキャラクターの配役もぴったりハマっていて、とても良かったです。
コトリンゴが歌う主題歌も映画にとても合っていて、映画と共に心に残りました。
片淵監督自ら山口県防府市に出向き、当時の地図を手に入れ徹底的にロケハンをしたそうで、それがとても映画の中に生かされていました。
長閑で美しい防府市の風景に惹き込まれました。
映画に出てくる「青い麦の海」は、残念ながら現在では住宅地になっていて見れなかったそうで、その部分はあくまでも監督の想像だそうです。
試写会を開く度に「良い映画だと思うけど、一体どうやって宣伝していくの?」と言われると、上映後のトークショーで片淵監督も話されていましたが、派手さは無く、どちらかと言えば地味な作品で「サマーウォーズ」のように日テレがバックに付いている訳でもないので、ヒットは難しいのかもしれませんが、一人でも多くの人に観て欲しい傑作アニメです。
この映画の素晴らしさを文字で書くのはとても難しいです。
とにかく観て欲しいです!
懐かしくて切なくて暖かい、何とも言えない余韻が残る映画です。
それにしても「時をかける少女」といい「サマーウォーズ」といい、そして今回のこの作品といい、マッドハウスが作るアニメはとてもクオリティが高いですね。