劇場公開日 2008年11月29日

  • 予告編を見る

「嫌いはイジメのサナギ」青い鳥 あっさり醤油ラーメンが好きさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5嫌いはイジメのサナギ

2023年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

難しい

「嫌いはイジメになりますか?」

素朴ですが鋭い問いです。さすが重松清。

本作でどう答えていたかは別として、私はイジメになる前のサナギみたいなものかと思います。嫌いだったり気に食わないからいじめるんでしょうし。

そういえば、脳科学者の先生が人間はイジメをやめられないと言っていたのを聞いた時には「またまた~、本が売れるようにと注意を惹くようなことを言っちゃって」と取り合いませんでしたが、嫌いがイジメのサナギと考えるとなるほど腑に落ちます。

しかし、人間はイジメをやめられないのかもしれないけれど、必ずしも強くはない存在を助けようとするのは人間だけです。虎狼の輩は実に合理的に弱っている獲物を狙いますが、人間が彼らを圧倒して繁栄していることを考えると、このような一見して合理性を欠く行動も、実のところそう不合理ではないのかもしれません。

イジメが痛ましい結果をもたらしてしまうのは制度の問題ではないでしょうか。イジメがあったというだけで学校や教師の失点にしては、高潔な教育者ではない(つまり、あまり尊敬に値しない)人たちはそれを隠そうとするでしょう。その結果イジメに対処するノウハウがいつまで経っても蓄積されないという悪循環に陥っているように見えてなりません。脳科学者の先生がイジメは当たり前と言っているのだから、イジメがあったかどうかではなく、イジメにどう対処したかを評価すべきでしょう。

ちなみに本作でこの問い(嫌いはイジメになりますか?)を聞いた時に、以前「分断と多様性の違い」が何か考えたことを思い出しました。その時には「分断は他を否定するが多様性は否定しない」と結論付けましたが、どうもしっくりきません。

あっさり醤油ラーメンが好き