「解らないという人の為にネタを割って解説っぽい事をします。」ウォッチメン samurai_kung_fuさんの映画レビュー(感想・評価)
解らないという人の為にネタを割って解説っぽい事をします。
「ウォッチメン」は“正義”についての考え方の映画です。簡単な例を出すと、北朝鮮にとっての「正義」は日本やアメリカにとっては「悪」になります。この映画は絶対的な正義という物に対する欺瞞をテーマにしています。
ウォッチメンの世界。超人Dr.マンハッタンのおかげでアメリカはベトナム戦争に勝利。ニクソンはウォーターゲート事件が発覚しなかったので、大統領を続けている。80年代、アメリカとソ連は一触即発の冷戦時代。お互いがお互いに核を突きつけ合い、動くに動けない不健全な世界という設定です。
“犯人”オジマンディアスは超人であるDr.マンハッタンをアメリカ/ソ連、双方の共通の敵に仕立て上げて二国を和解させ冷戦を終結させようと考えました。しかし、その計画を知ったコメディアンは、作りあげられるだろう世界に絶望します。コメディアンは世界各国それぞれの“正義”の矛盾から生まれる“戦争”の中に自分の居場所を見つけてしまった男だからです。昔のライバルにメソメソと愚痴を言うコメディアンに計画の漏洩危機を感じたオジマンディアスは彼を殺します。
ロールシャッハはコメディアンの死を追求するために捜査を開始します。ロールシャッハは自分の“正義”の為なら殺人という“悪事”も出来るのが面白い所です。つまり、ロールシャッハとオジマンディアスは立場や目指す所こそ違えど、その本質は同じなのです。
ロールシャッハの捜査に気付いたオジマンディアスは自分自身の暗殺をさせるなどして捜査をかく乱します。
そして、Dr.マンハッタンに罪をかぶせる為に元恋人や同僚をガンに冒させ、孤立させる事に成功すると、各地に送ったフリーエネルギー装置を爆破し何万人もの死者を出す災害を起こします。
計画は成功しました。Dr.マンハッタンは自分が“悪者”になる事で世界が平和になるのならと、大量殺戮者の汚名をかぶり、その真相をバラすと言うロールシャッハも殺します。
何万人もの犠牲の上に成り立った“平和”を作った行為は、正義でしょうか?と問いかけて映画は終わります。
そんなテーマを『正義のヒーロー』であるアメコミヒーローに託し語っているのです。奥の深い、非常に優れた物語です。