THE 4TH KIND フォース・カインド : 映画評論・批評
2009年12月15日更新
2009年12月18日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
「映画にとって“リアル”とは何か」という問いを見る者に突きつける
映画にとって“リアル”とは何か。本作はこの問いを観客に突きつけてくる。
その前に、本作はまず“疑似ドキュメンタリー”の新たなバリエーションだ。このジャンルはここ数年、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「クローバーフィールド/HAKAISHA」「パラノーマル・アクティビティ」とヒット作を輩出してきたが、本作はその手法にひとつヒネリを加えている。
今回の手法は、従来のような「記録映像」の隣に、「それに基づいて撮影された映画」を並べて提示するというもの。「記録映像」は手持ちのホームビデオによる映像で、しばしば映像が乱れて被写体が歪む。「映画」はきちんとライティングされて演出された映像が映る。この2種の映像が同じサイズで映し出されると、「映画」の完成度の高い映像が、「記録映像」をより本物らしく感じさせるのだ。
だが、この瞬間に出現するのが、冒頭の問いだ。映画にとって“リアル”とはどのような意味を持つ事柄なのか。「現実のリアル」と「映画のリアル」は別ものなはずではなかったか。こうした映画の根源に関わる問いが出現してしまうのだ。
と、同時に生じる疑問がある。今、私たちは、ホームビデオの粗いデジタル映像のほうが、フィルムのなめらかな質感よりもリアルに感じられる世界に生きているのではないか。それが「映画のリアル」を変質させようとしているのではないか。本作はそんな問いをも投げかけてくる。
(平沢薫)