「言葉にできない。」引き出しの中のラブレター ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉にできない。
この作品の、とくに前半における居心地の悪さは、
タイトルがある意味、代弁してくれている。
引き出しの中(つまり長い間そのまま)のラブレター。
出すなら出す。また、読むなら早く読めばいいのに!
いつまでも決心がつかない。まさにその感覚なのだ。
でもふと考えてみると、人間ってそんなもんかもな。
と思えてくるから不思議だ。
中盤以降、話にグッと深みが増し始めるのは、
誰もが思うようにスラスラと気持ちを語れはしない。
そんな不器用な生き方もいいんじゃないか。と
(この感覚は人それぞれ)認められるようになるからだ。
…ここで描かれる父と娘の関係。
これがまた我が家の状態とピタリとはまって参った^^;
父はまだ健在だ。(爆)たまに会話も、あるにはある。
だが、小さい頃からほとんど口を利いたことがない。
思うに父は、愛情を示すのがものすごく下手な人で、
子供の扱いも上手くない(爆)なのでなつか(け)ない。。
うんと褒めてもらったことも、頭をなでられたことすら
ほとんどないのに、叱り飛ばす時だけは威勢がいい。
今作に出てきた父親同様、心ない言葉を娘に浴びせ、
こちらの心軸を見事に折り曲げてくれるわけだ…(T_T)
どうして私と父は、他の家庭みたいになれないのかと
父娘仲の良い友人を見て、いつも羨ましかったものだ。
人間には相性があるが、それは親子でも存在する。
決して人間的に悪いわけではないが、合わないヒト。
誰よりも大切に想っているのに、素直に言えないヒト。
そういう不器用な人間達が右往左往している世の中
だから、こういう企画があってもいいのかもしれない。
先日の海賊ラジオとは違う感性で(いやまったく^^;)
人々の心を代弁しているのがラジオ・パーソナリティ。
自分の好きなDJの声を聞くだけで、よく元気になれた。
群像劇のような今作の内容は確かにややベタ気味で、
彼らの演技も演出もなんだか学芸会みたいに見える。
でも、もしもこのヒトから、この一言が聞けたなら…と
期待してしまう人間の愚かさこそが人情だと思いたい。
素直になれない自分にとっては、まさにバイブルのよう。
こうしてグダグダと感想(ともいえないが)らしき文章で
映画に対する想いを打ち明けている私も、同様なのだ。
(大切な人が元気なうちに引き出しから出しておこうね)