「真夏のオリオンが導く反撃の雷撃深度十九・五」真夏のオリオン しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
真夏のオリオンが導く反撃の雷撃深度十九・五
Netflixで2回目の鑑賞。
原作(雷撃深度十九・五)は未読。
ノベライズは読了済み。
太平洋戦争終戦間近の太平洋で繰り広げられる、大日本帝国海軍潜水艦「イ‐77」と米海軍駆逐艦「パーシバル」の死闘を描く。日本映画では珍しい潜水艦アクション映画であり、前例としては「潜水艦イ‐57降伏せず」と「ローレライ」ぐらいしか知らない(「ローレライ」には本作の監修・脚色を担当した福井晴敏氏が原作として関わっている)。
本作は日本版「眼下の敵」と言っても過言では無い。相手のクセを見極め、次はどんな手を打って来るのか、自分がこう動けば相手はこう動くのではないか、など、互いの腹を探り合いながらの頭脳戦に手に汗握り、ハラハラした。酸素の問題がある限り潜水艦の方が不利な状況で、起死回生の一発勝負に出るクライマックスの反撃が素晴らしかった。
イ‐77潜の艦長を演じる玉木宏氏は、見た目が爽やか過ぎるきらいはあったものの、知略に長けた操艦能力と部下を信じる温かな心を持ち合わせている人物像を体現する演技が見事だった。搭乗員に何度希望されても、人間魚雷「回天」を使わせなかったところにも人間性の良さを感じた(回天を酸素ボンベ代わりにしたり、デコイとして使用する機知も流石だ)。堂珍嘉邦氏演じる同期との友情と別れ、北川景子氏演じるその妹との恋は、「戦争さえなければ…」と云う切なさを呼ぶ。
日本で戦争を描く映画やドラマをつくると、心情的に反戦の意味もこめて悲惨さを描かねばならないため、どうしても重苦しい作風になってしまうことが多いが、本作はハリウッド映画顔負けの戦闘描写を絡め、誰もがとっつきやすいエンターテインメントとして仕上げているところが素晴らしい。戦いの運命を左右する「真夏のオリオン」の楽譜が、敵と味方の概念を超えた人間同士の対決を彩り、人と人とが殺し合う戦争の悲惨さを考えさせる装置として機能していて、感情を揺さぶられた。